HIMAGINE電影房

《ワクワク感》が冒険の合図だ!
非ハリウッド娯楽映画を中心に、個人的に興味があるモノを紹介っ!

『スーパーホン・ギルトン』を観る

2010年03月30日 | 韓国映画

 その面白さにハマってなかなか抜け出せない韓国児童映画の世界。今回は《ヨング》シリーズでその筋の方々に知られるシム・ヒョンネ大哥の主演作『スーパーホン・ギルトン』(88)をご紹介。

              

 良家の御曹司であるギルトンは勉強もせずに厳しい親の目を盗んで遊んでばかりいたが、ついに父親の逆鱗に触れ家を追い出されてしまう。あてもなく旅をするギルトンは途中、白雲導師なる武芸の達人に出会い、彼の元、厳しい修行を行い、ついに距離や時間を超える技を会得し免許皆伝となる。超人的な武芸を身に付けたギルトンは途中出会った仲間たちと共に、村を荒らしまわる山賊一味や高麗の地図や美女たちを奪わんとする中国人武芸家たちと対決する…

              

 韓国アニメ映画のパイオニア、キム・チョンギ監督(『ロボットテッコンV』他)と、《ヨング》シリーズで有名なシム・ヒョンネが『宇宙から来たウレメ』シリーズに続いて製作した実写映画である。実はヒョンネ大哥、この時点では自らの当たり役である《ヨング》シリーズをまだ開始していないのだが(第一作『ヨングとテンチリ』は89年作)、既に年平均3本も主演する売れっ子であった。この映画が公開された年だけでも以前紹介した『スパークマン』や『ウレメ』シリーズ第5弾の2本が劇場で流されている事を思うと、ヒョンネ大哥の韓国での人気(子供限定)の高さにビックリである。

 近年のTVドラマ版『快刀ホンギルドン』や、マニア御用達の北朝鮮版『洪吉童』を例に持ち出さなくとも、ホンギルトン映画の売りは何といっても武芸アクションである。
 この作品も例外でなく、アニメ合成を駆使した幻術シーンと共に拳脚や刀・槍を用いた格闘シーンが多数用意されており、特に中国人武芸集団との戦いではクンフー映画でおなじみの扇子やヌンチャク、そして民俗音楽で使用するシンバルまでもが登場し、チープなワイヤー・ワークと相まってまるで武侠映画の様である。ヒョンネ大哥も、本格的なテコンドー・アクションはダブルの方に任せ、「笑いが本職」とばかりに蘇化子じーさんの扮装をして酔拳の真似事をして楽しませてくれる。

              
              

 児童映画という、観客が限定されたこのジャンルは暴力表現や性描写などが厳しく制限され、予算もギリギリという見方によっては八方塞のような状況だが、その一方何を扱ってもいいというフレキシブルな面も持ち合わせており、大監督を志す若手監督の登竜門的存在となっている。明日をめざし未来の大監督や俳優たちは、予算が無い代わりに肉体と頭脳をフルに駆使し、面白い作品(=次回も仕事がもらえるような結果を出す作品)作りに励んでいたのだ。
 ヒョンネ大哥もそんな児童映画の厳しい環境に揉まれながら、次第に自分の作品の製作や監督を兼任するようになり、遂には自らの映画制作会社《ヨングアート》を設立し、海外セールスまでされた超大作怪獣映画『D-WARS』を生み出すまでになったのだ。一般観客にバカにされ、興行的失敗を繰り返しながらも己の道(ヨング道?)を邁進するこの姿、すごいよヒョンネ大哥!

              


『EL INCREIBLE PROFESOR ZOVEK 』を観る

2010年03月18日 | 非ハリウッド娯楽映画
 今回は、メヒコの伝説的エスケープ・アーティストであるゾベック主演作『EL INCREIBLE PROFESOR ZOVEK 』(71)を紹介。

               
●彼がゾベック。残念なことに72年にヘリコプター事故で急逝してしまった

 著名な科学者3名を乗せた飛行機が爆発炎上する事件が起きた。警察署長と懇意であるゾベックは事件の調査に協力する。得意の催眠術で当日担当したキャビンアテンダントから真相を聞きだすと、3人の科学者の一人・ドルーソ教授だけが途中で飛行機を降りていたことが判明する。
 彼が怪しいと睨んだ警察署長は合同葬儀の際に出席していた怪しい男を追跡、古城を利用したアジトを発見するがドルーソ教授の手下に捕らえられてしまい、またゾベックも彼の恋人と共に教授の元へ連行されてしまう。ドルーソ教授は人体を改造して食人鬼を作り出し、世界征服に利用しようと考えていたのだった。ゾベックは果たして悪魔のドルーソ教授と食人鬼軍団にどう立ち向かうのか、そして警察署長と恋人の運命は如何に…?

               
               
●悪役ドルーソ教授と彼が作り出した食人鬼。地下牢のセットなんかはさすが、と思わせる

 エスケープ・アーティスト(奇術師とも違うので、そう表記する)が主演するアクション映画なので、普段のメキシコ製アクション映画(ルチャ映画)と違うのかな?と思っていたら、まんま同じでした(笑)。試合シーンがそのままエスケープ芸の場面に転化されているだけで、マッドサイエンティストやあまり役に立たない手下、それにコメディリリーフにお色気担当(過剰な期待は禁物だぞ)の恋人までキャラクター配置もぜ~んぶ一緒!ファミリーで楽しめるエンターテインメントがラテン文化の基本なので、しよょうがないといえばそれまでなのだが。

               
●人体改造途中のおねえさん。こういうチープなエフェクトって大好きです

               
●果たして彼女の運命は…?セーター越しの乳が何ともイヤラしい

 ざっと観の感想としては『仮面ライダー』ですね、これは。ドルーソ教授と食人鬼軍団はそのままショッカーと怪人軍団でゾベックがもちろん仮面ライダー(本郷猛)。分かりやすいほどの勧善懲悪で細かい事はわからなくても十分に未字幕でも楽しめました。アクション映画だから、じゃなきゃ困るでしょ?
 ただ、ひとつイケてないものがありまして…それはゾベックの格闘シーンだ!実にモッサリしてるんですな、これが。東洋の秘術を身に付けた、らしいのですが、スピード感のないチョップやキックが哀愁を誘います。でも組み技で使用されるルチャ・テクニック(吊り天井固めとか)は結構サマになっているので、さすがメヒコ!(何が?)と思っちゃいました。

               
●ゾベックのタパティア。他にもアンヘリート(リバース・ロメロスペシャル)やベアハッグとかも使用。

               
●ゾベック対食人鬼のタイマン勝負、勝つのはどっちだ…?!

『ターミネーターと刑事コムベンイ』を観る

2010年03月17日 | 韓国映画
 今回は、再び韓国児童映画の奇妙な世界を紹介しようと思い、あの世界的キャラクターが何の躊躇も無しに登場する『ターミネーターと刑事コムベンイ』(92)を選んでみました。これがまたどうしようもないんだなぁ…


  科学者のコン博士は、彼のその天才的な頭脳を、悪事に利用しようと考えているギャング団との追跡中に、偶然巻き添えをくって殺されてしまった青年を哀れに思い研究中であった人造人間《ターミネーター》として蘇らせようとする。だが、最終調整を目前に博士は自宅に乗り込んできたギャング団によって拉致されてしまう。
 拉致直前に博士に取材を申し込んでいた女性雑誌記者は自宅から博士が消えてしまったのを不審に思い警察に連絡、そして派遣された警察署イチのダメ刑事とで捜査を開始する。その頃街中を黒ずくめの恰好をした男が徘徊していた。《ターミネーター》が動き出したのだ…!果たしてコン博士は無事に見つかるのか?そして《ターミネーター》の動向は如何に?!

              
●あらゆる問題の張本人・コン博士。韓国では珍しい、家庭用ゲーム機のユーザーである

              
●これが《ターミネーター》。別名・黒い舘ひろし

 92年っていうと、本家・キャメロン監督『ターミネーター2』の後か?どうりで《ターミネーター》の雰囲気がそれっぽかったわけだ。それにしてもキャラクターをまんまパクるとはたいした度胸である。同時期の香港・台湾系のアクション映画や子供向け映画などにもターミネーターもどきは出現しているが、ここまで露骨なのは見たことがない。この時期の韓国には知的所有権という概念は存在したのだろうか?観客がハナッから少ない(上映期間も)児童映画だからやれたんでしょうね、きっと。

 この映画の登場人物は、キーマンである《ターミネーター》や美人雑誌記者を除いてどういうわけか《バカ》ばかりである。コン博士や、事件を追うダメ刑事はもちろんの事、ギャング団の幹部までもが揃いも揃ってコレなのだ。言語障害寸前の台詞回しや幼稚園児なみの低脳ギャグが次から次へと繰り出され、観てるこっちはブチ切れ寸前である。

「いい大人なんだからさぁ、ちゃんとやれよ!」

と文句のひとつでも言いたくはなりますわな、そりゃ。当時の韓国の子供たちはこれを観てどういう感想だったのかを聞いてみたい気分だ。

              
●事件を追うダメ刑事。普段のバカさ加減と、銃撃シーンの容赦なさは驚くぞ~、きっと

 ただ、アクションはハンパじゃない(この前もそういったが)。一見バカのダメ刑事だが銃撃シーンになると何の躊躇もなくギャングを撃ち殺しまくるし、ギャング団も《ターミネーター》相手にバズーカや爆弾などでボンスカ火の玉打ち上げるはで子供向け映画とは思えないほどハードである。なんかこの製作者、硬軟の使い所を間違えてるんじゃないか?


 バカな登場人物が繰り広げるゆる~いドラマと、明らかにやりすぎなアクションが混在する《韓国児童映画》、今後も要チェック!なのである。

              
●ユルユルの低脳ギャグの合間に訪れる、ハードなアクションシーンは衝撃的である

『一石二鳥』を観る

2010年03月16日 | 中華圏映画
 今回は《台湾娯楽映画の巨匠》チュー・イェンピン(朱延平)2005年の作品『一石二鳥』を紹介。
 このタイトル、検索すると日本の諺の方ばっかりがヒットして、なかなか映画にたどり着きません。こんなタイトル付けるなよ~(涙)


 話は結構複雑で、中国語が分からないので詳しくは理解できなかったが、要は『血闘竜門の宿』のような客桟戯を中心に、時折コメディ俳優(ン・マンタエリック・ツァン他)によるギャグが挿入されるという構成となっている。砂漠の真ん中に立つ客桟を舞台に、都へ護送する要人と、それに引き付けられるかのように集う武林の侠客たち。果たして要人の命を狙っているのは誰か?そして伝説の侠客とは一体誰か?謎が謎を呼ぶサスペンスフル(かつコメディ)な作品である。

              

 コメディではあるが大筋は武侠映画であるこの作品、巨匠キン・フーに挑戦したわけでもないのだろうが、前記の『血闘竜門の宿』や『迎春閣之風波』のように客桟を舞台とし、ほんの1~2シーンを除いてほとんどが客桟内でドラマが展開していくのだ。それゆえ息が詰まるような窮屈な感じが表現されていて、クライマックスに向けての高揚感の持っていき方は並大抵ではない。そしてそんな息苦しいサスペンスの合間にガス抜きのようにどーしようもないギャグが挿入され、観客はホッと一息つくことができる。

              

 イェンピン監督はベテランなのでそういう細かい芸当が可能なのであろう。もし、これがぽっと出の新人監督であったらサスペンス限定にするか、または上手く調合できなくてメチャクチャなものになるかのどちらかだろう。《娯楽映画》と人は軽々しく言うけれども、実は結構な技術が必要なのだよ。

              

『三重星』を観る

2010年03月15日 | 韓国映画

 今回は久々の韓国映画でまだまだ謎の多い未開拓ジャンルである「児童映画」の一本『三重星』(91)を紹介。ちなみに読みは、「さむじゅんそん」である。

 この児童映画というジャンルは最近では韓国本国でもDVDリリースされて再評価の兆しがみられるが、まだまだ鑑賞できる作品数は少なく、過去にビデオでリリースされたものを(もちろん韓国での話)探して観るしかないのが現状である。こういう時って同ジャンルのファンによる横の繋がりが身に染みてありがたく感じるものだ。


 さて本編の内容はというと、学校行事で山にキャンプに来ていた女の子プラス男の子二人の仲良しトリオが、洞窟内で悪い宇宙人ジョアンナ一味に追われている善良な宇宙人・コンペイと出会い、ある事件で瀕死状態となった女の子に自らの持つスーパーパワーを注入、すると仲良しトリオが気持ちを合わせるとスーパーヒーローに変身できる能力を身に付ける。そしてコンペイの持つスーパーパワーを狙い(与えちゃって無いけど)次々と襲い掛かるジョアンナ一味と対決するというもの。

              
●これが仲良しトリオ。中央の女の子、結構カワイイと思いませんか?

              
●下山する仲良しトリオと宇宙人コンペイ。低脳キャラなのは韓国児童映画ではおなじみの設定だ

 感想は?というと素直に面白かった。グダグダなギャグ部分や見てて恥ずかしくなる(と思えるのはやっぱり年取ったからか?)女の子と男の子二人との3P…じゃなかった爽やかな友情シーンを乗り越えるといよいよ待ちに待ってたスーパーヒーローの活躍である。…が、しか~し!これが全然イケてないのだ。ローマ騎士のようなコスチュームに黄金(スパンコール)の顔出しマスク(兜?)という、「有りものでこさえました」という感じのデザインなのだ。
 「もう止めようかな…?」と思ったのもつかの間、コイツが動き出したら凄いのなんのって!テコンドー仕込みの鋭いキックは放つは、ワイヤーでグルグル回されるわ、やられ役のスタントマンは香港スピンで吹っ飛ぶはで無駄に凄いのだ。格闘アクション映画好きならここで飯三杯はイケルね。

              
●悪の宇宙人ジョアンナ。これだけ見ても安っぽいが、マントの下は輪を掛けて安~い感じだぞ

              
●極悪宇宙人にハイキック!キックの鋭さはハンパないです

 確かにこの映画、特撮ヒーロー映画では不可欠なミニチュアや光学合成(オプチカル合成)といったいわゆる《特殊技術》は使われていない、というか予算の都合上使えなかったと言ったほうが正しいだろう。しかし市販の花火を使った変身処理やコマ落しや逆回転などの編集技術などを駆使し、低予算なりの努力は画面からも十分に感じられ、一概に駄作とは呼べないのだ。作品の面白さとは必ずしも予算とは比例しないものなのである(でも一般の人が観たらやっぱり駄作と呼ばれちゃうんだろうな…きっと)。

              
●さぁ、変身だ!…これを許せるか否かでスーパーヒーロー好きの資質が問われるぞ

              
●子供達の付き添いのお父さんの為のサービスショットか、これは?


清洲城リニューアル…だ、そうで

2010年03月14日 | 雑記
 愛知県・清須市にある町のシンボルともいうべき清洲城が、約一月の改修工事を終え、三月二十日よりリニューアルオープンする。
 それに先駆け、本日清須市民を対象に城内を無料開放していて、先ほどダメ市民ことワタクシも拝見してきました。


 1989年に清洲城がオープンしたとき以来約20年ぶりに中を見せてもらったのですが、オープン当初に比べて展示物も格段に増え、清須の歴史を一目で分かるように工夫が凝らしてあるのには好感が持てた。最初の頃はホント「城」だけだったもんなぁ。
 あとは清洲だけじゃ心もとないのか、尾張の三英傑の紹介(織田信長・豊臣秀吉・徳川家康。だが清洲城というのでもっぱら信長にウエイトは置かれているが)や、大河ドラマの衣装(これまた信長つながり)等が展示、それに以前には見られなかった映像展示物も数点あって、清須市がこの施設にどれほど力が入れているかがよ~く分かる。清須市が他県にアピールできる唯一のスポットがこの清洲城なのである。


              
●清須の縄文・弥生時代からの出土物も展示されている

              
●もちろん城下町跡からの出土品も

              
●こうして当時の清須城下町の様子(想像)を映像で展示している

              
              
●歴史好きにも十分楽しんでもらえる(ハズだ)甲冑や鉄砲などの展示品も

              
●人形で当時の武士の様子なんかも再現。子供は怖くて泣いちゃうかも?

              
●お~い、おっさん。何しているの?

              
●「石落とし」ですか…これは失礼しました


 特に今年は名古屋開府400年記念に乗っかって清須市も清須越400年記念ということで(名古屋開府の際、清須が城を含め町ごと移動)町全体が盛り上がっているので、どうぞ皆様一度清洲城に足を運んでみてくださいマシ。…ガラにもなく書いちまったぜ。



『超級学校覇王』を観る

2010年03月02日 | 中華圏映画
 今回は、昨日に引き続きバリー・ウォン監督の大傑作『超級学校覇王』(93)を紹介。香港映画の世界に足を踏み入れる者なら避けては通れない“踏み絵”のような一作で、香港影星の懐の広さと、当時の香港映画が持っていた闇鍋的面白さが(もちろんダークな面も)イッペンで味わえ、「これこそが香港映画!」と呼べる香港映画ファン歴ウン十年の某氏が太鼓判を押す作品である。


 物語は2043年の未来から極悪犯罪者《将軍》を死刑にした裁判官・余鉄雄の青年時代にタイムワープして彼を殺害しようと企む部下たちの計画を知って、未来警察の精鋭部隊《飛龍特警》のメンバー3人は1993年に渡り彼を探し出し《将軍》の陰謀を阻止するというものだが、また例によって話がいろいろ飛びまくり、なかなか本筋へと進行しないのだ(笑)

              

 まず驚くのは「彼らだけで主演映画が撮れる」ほどの豪華出演陣。列記するとアンディ・ラウ、ジャッキー・チョン、サイモン・ヤム、アーロン・クォックなどなど。ねっ、すごいでしょ?物語のキーマンとなる余鉄雄の若かりし人物には当時《第二のチャウ・シンチー》として数多くの作品に主演していたディッキー・チョン、彼の妹役でチンミー・ヤウ、本編中最大の悪役《将軍》にはロー・ワイコン、彼の手下にはビリー・チョウやまだ新人だったイーキン・チェンなどが顔を出している。そんな面々がギャグやアクションを披露するのだから面白くないわけがない!視覚ギャグや有名映画のパロディが一杯で、私はというと冒頭のアンディ+ジャッキー+サイモンのコンビ芸で思わず笑ってしまいました。日本語字幕がなくて躊躇してる方、全然無問題だ。

              

 この映画、一般的にカプコンの格闘ゲーム『ストリートファイターⅡ』のキャラを無断拝借したということだけで有名であるが、それだけで語られるのはちょっと残念な感じがする。もちろん『ストⅡ』を意識した(っていうか武侠映画では当たり前の)アクションシーンはあるが、映画の中心は学園ラブコメディで、グデグデの青春ドラマの合間に急に思い出したようにハードなSFっぽいアクションが挿入されるという具合だ。

              

 そのアクションシーンだが、ゲームキャラクターを思わせるようなコスチュームを着た出演者が、ゲームそのまんまのスピード感あふれるアクションを見せてくれるのだ(ワイヤーと早回し等の編集技術と光学合成)。とにかく速いはやい。波動拳やソニック・ブームが死ぬほど出てくるので驚くより先に笑いがこみ上げてくるぞ!あたかも「現実」ではないことを画面を通して言っているようなもんだ、あれは。そんなナイスなアクション演出を担当したのが、またもやチン・シウトン先生(武術指導はディオン・ラム&馬玉成)。やっぱり先生には敵いませんね…

              

 古装片ブーム等が起きたこの1991~1994年は個人的には「香港」映画最後の黄金時代と位置づけている。香港映画が「香港映画」らしくあったこの時代、まだ映像を所持できなかった私は書籍や雑誌などで入ってくる情報を横目にうらやましく思っていたものだった。この映画を観てふとそんな懐かしい過去を思い出してしまった…

『武侠七公主』を観る

2010年03月01日 | 中華圏映画
 今回は古装片ブーム真っ只中に製作された香港娯楽映画の巨匠、バリー・ウォン監督(共同監督・陳國新)の『武侠七公主』(93)を紹介。
 実はこの映画、一年ほど前に動画共有サイトからダウンロード→DVD作成したまま長い事ほったらかしにしてあったもの。予備知識で大体はどんな映画かは知っていたのだが、いざ実物を観てみると…大傑作でした!


 物語は中国武林界を守るため傷ついた剣侠・天極の代わりに妻である独狐貞と旅で知り合った6人の女性が奥義「玄天玉女剣」を会得し、日本の豊臣秀吉の命を受け来襲した柳生と対決するというもの。

              

 こう書いちゃうと普通の(というのもなんだが)武侠片のように感じるが、現物はというと、これがくっだらないギャグ満載のコメディ武侠映画なのだ。一応記した物語に向かって各々がバカやりながら進んでいくといった感じ。ギャグパート要員としてディッキー・チョンン・マンタという面々がいるが、主演クラスの女優陣もちゃんと笑いを取るシーンがキチンと作られていて、特に普段こんなことはすまいと思われるミシェール・ヨーなんかがバカ演技をやってくれるので、不意打ち気味で笑える。

              

 あと武侠映画でおなじみの武器や名称を使ったギャグ(血滴子とか食ったら白骨化してしまうという「白骨陰陽飯」)なんかも出てくるので、武侠片を知っている人ならばクスリとさせられるだろう。残念ながら日本では(かなり入ってきてるとはいえ)それほど武侠映画に関するトリビアに馴染みがないので、香港人ほど笑えないのが悔しい。題名自体もかつてチャン・ポージュ(陳寶珠)ジョセフィーン・シャオ(蕭芳芳)ファン・ポーポー(馮寶寶)他当時のアイドル女優が揃って出演した武侠片『七公主』からの拝借だし、やっぱりハードルが高いかな?

              

 武侠片の肝である剣戟シーンは、チン・シウトンが担当(武術指導:ディオン・ラム(林迪安)、馬玉成)。冒頭から彼のデビュー作である『妖刀斬首剣』を思わせるような日本剣士(でも衣装は中華風)VS中国剣侠の軽功を駆使した空中戦で度肝を抜き、最終決戦では悪魔的な強さを持つ柳生に対し、《七公主》は集団で飛ぶ・斬り付ける・そしてロボットアニメよろしく“合体”するというこれ以上ないハイパーバトルを繰り広げるのだ!ワイヤー&早回しによりこの剣戟シーンは実写映画というよりはむしろアニメに近い感覚。シウトン監督、アンタ凄すぎるよ…


 古装片ブームの一番熱かった1993年だからこそ作りえたこのエンターティンメント大作、もし観る機会があれば是非お試しあれ。あまりの凄さ(とアホらしさ)に呆気に取られること必至ですよ。