HIMAGINE電影房

《ワクワク感》が冒険の合図だ!
非ハリウッド娯楽映画を中心に、個人的に興味があるモノを紹介っ!

銀の仮面の伝説 ~エル・サントについて~

2006年03月21日 | ルチャリブレ
 ここのところ、私はメキシコのルチャ映画をまとめて鑑賞する機会に恵まれて、今まで名前だけは知っていても観たことの無い作品を毎日2本づつ観賞している。まぁ、大体スジは同じなので観賞ポイントはどれだけ荒唐無稽か、知っているルチャドールが出ているかになっちゃうのだが。これを私は《ルチャ映画千本ノック》と呼んでいる。(ちょっと分からない人のために。ルチャとはルチャ・リブレ…つまりメキシコにおけるプロレスの呼称で、ルチャドールはその競技者=プロレスラーのことである)
そのルチャ映画におけるシンボルというのが、今回紹介する人物であるエル・サントである。この名前、私たちのような非ハリウッド娯楽映画愛好家にとっては必須科目のようなものであるが、一般映画ファンにとっては耳に馴染みの無い名前かもしれない。ルチャドールとしても十分に偉大な存在なのだが、メキシコ娯楽映画界にとっても決して忘れることのできない名キャラクターなので、これを読んだ方、しっかりと覚えておくように。

 エル・サントとはスペイン語で聖者の意味で(メキシコはスペイン語圏ってこと知らない人はいないでしょうな?)、厳格なカソリック教徒が多いメキシコ人にとっては(中味がどうであれ)敬愛の対象であるキャラクターなのだ。彼の本名(ていうか正体)はロドルフォ・グスマン・ウエルタという人物で、1917年に生まれた。彼は34年にルディ・グスマンとしてルチャ・リブレ界にデビュー、以後エル・エンマスカラド、オンブレ・ロホ、ムルシェラーゴⅡ、デモニオ・ネグロと名前を変え、42年にエル・サントとして定着すると爆発的な人気を巻き起こした。最初はルード(悪役)だったサントだが、その圧倒的な強さに自然とリンピオ(善玉)へと移行、58年に最初の出演作品『Cerebro Del Mal』を成功させると映画界においても絶対的な地位を確立。数々の名勝負、傑作によりサントの名は中南米において知れ渡ることとなる。現役生活は40年以上に及び、82年、66歳の時にルチャドール生活を引退する。しばらくの間エンタテイメント業界で活躍したが、84年2月5日、心臓マヒにより68歳でこの世を去る…

 どうです?こんな大人物がいたなんて事、あなたはご存知でしたか?彼の経歴はかなり端折って書いたので、ちょっと分かりづらいと思いますが、「こういう人がいたんだよ」って事を知っていただければ幸いです。もしもっと詳しく知りたいのであれば海外のサイトで調べてみてください。英語やスペイン語で書かれているので根気が必要ですが、日本ではほとんど紹介されてないので、海外モノに頼らざるを得ないのが現状です。彼の作品紹介はまたの機会にしますので、しばしお待ちを…
        
●サントの活躍ばかりを集めたコンピレーション・ビデオ『VIVA SANTO AND PALS』

邪悪・壮絶!インドネシア娯楽映画③『SI BUTA LAWAN JAKA SEMBUNG』

2006年03月14日 | インドネシア映画

このところ連続紹介しているインドネシア娯楽映画、というかバリー・プリマのジャカ・センブンシリーズの本日は第三弾、『SI BUTA LAWAN JAKA SEMBUNG』の紹介だ。その他にもシリーズとして括られている作品は存在するのだが、私が持っている作品はここまで。

今度のジャカはオランダ人領主からインドネシアを自らの手に奪い返す為、レジスタンス活動をする反政府組織のリーダーという役どころで、いよいよナショナリズムが前面に出てきた。今作にはジャカにタメを張れるもう一人ヒーローが登場する。それが盲目の剣士・ブータである。彼は最初《敵》として登場、しかしオランダ人に騙されて瀕死の重傷を負い、ジャカに助けられ以後仲間として行動する。今回ジャカの敵はオランダ軍の他、男の精気を吸って生きている森に住む魔女軍団も絡んで来て、騙し騙されの三つ巴状態。近代兵器使ってドンパチやられるのも嫌だが、得体の知れない力で襲われる方がよっぽど怖い!最後の方は魔女たちは顔がケロイド状になっていて、それがドUPで画面に映されるので、心臓に悪いの何のって…。大画面だったらヒキツケ起こしちゃうぞ、あれは。

 私は《おらが国のブルース・リー(もしくはジャッキー・チェン)》映画を観るのも好きで、このバリー・プリマも《インドネシアのジャッキー・チェン》と何かの記事で紹介されていたので興味を持ったわけだが、彼の作品はジャッキーのように体術・スタントで魅せる作品はほとんどなく、こういった南洋邪教や、変わった小道具など《ギミック》で魅せる作品が多いのに気が付いた。以前ビデオマーケットで彼の作品が多量に販売された際、付いたキャッチが《インドネシアのジミー・ウォング》だったのを思い出すと、こちらの方が的を得ているなぁと今更ながら感心する。なお、彼は現在もインドネシア映画界で活躍していて、アクションはあまりやらず、年相応の役を演じているとの事。
   

邪悪・壮絶!インドネシア娯楽映画②『BAJING IRENG & JAKA SEMBUNG』

2006年03月13日 | インドネシア映画

 その南国独特のカラーで、非ハリウッド娯楽映画好きを魅了するインドネシア娯楽映画を紹介する第二弾は、バリー・プリマ主演のジャカ・センブンシリーズの2作目 (とはいっても前作と話が続いているわけでなく、あくまでも商売用) である『BAJING IRENG & JAKA SEMBUNG』だ。

 今回の敵は、その眼光を見ただけで燃えあがってしまう”燃える”眼力を持つ妖術使いと、その弟子で長いこと封印されていたが、火山の爆発による地殻変動で再びこの地上に現れた鋼の肉体を持つ魔人で、こいつらがオランダ人領主に協力してジャカの命を狙う。一方ジャカにも協力な助っ人が登場。金持ちから金品を奪い、貧しき者たちに分け与える黒覆面の女義賊がその助っ人。このお姉さんがまた強く、大勢の警備兵に囲まれても動揺もせず、倒して逃げてしまうというこのカッコ良さ。ジャカが惚れるのも無理ない話だ。

 今作は前作の南洋邪教オンパレードとは違い、格闘アクションにかなりのウエイトが掛けられており、その格闘スタイルはまんま当時 (80年代前半) の香港クンフー映画なのだ。あまりの完璧さに、もしかしたら香港の武術指導家がアクション指導してるんじゃないか?と思っていたら、やはりこの当時のインドネシア・アクション映画には、香港のワークショップが参加しているとの事。こういう情報は、やはり同じ趣味を持つ同士からじゃないと入らないもんなぁ…。他に論議する人いないし。会津さん、ご教示ありがとうございました!
   
   ●頭の皮を剥がされ悶絶する悪党

邪悪・壮絶!インドネシア娯楽映画① 『JAKA SEMBUNG』

2006年03月12日 | インドネシア映画
 久々の映画紹介となった今回は、何を紹介しようかと色々悩んだ末、最近の私個人のヒット作であるインドネシア産幻想怪奇アクション映画『ジャカ・センブン』シリーズに決めた。本日はその第1作目『JAKA SEMBUNG』だ。

 舞台はオランダ統治下のインドネシア。政治犯収容所を逃げ出した民衆の英雄ジャカ・センブンは、反旗の狼煙を上げるべくチャンスをじっと待つ。しかし、オランダ人領主側も悪魔的な能力を持つ妖術使いを味方につけ、ジャカ逮捕に乗り出す。彼等の魔手に落ち一度は捕らえられたジャカだが、領主の一人娘の手引きにより逃げ出すことに成功。拷問によりボロボロになった身体を癒し復活したジャカは、憎き妖術使いを死闘の末撃破し、反乱分子と共に領主の屋敷へと攻撃を開始する…。

 以前からバリー・プリマ主演作を入手出来ないだろうかと色々手を尽くしていたのだが、金銭的問題と語学の問題もあり入手できずにいた。そこで《非ハリウッド娯楽映画》を通じて知り合った会津信吾さんにお願いしたところ、代表作であるジャカ・センブンシリーズ (欧米では『WARRIOR』シリーズとしてカルト的人気がある) 3本をコピーして送ってくださったのだ。これはうれしかった。持つべきものは同士だなぁ… 早速観賞したところ、その粗い画像にマッチするかのごとくやり過ぎ気味の残酷描写と、南洋邪教の原初的恐怖感に圧倒されてしまったのだ。今まで観たホラー系映画には《恐怖》《残酷》《狂気》等というキーワードは出てきたのだが、《邪悪》という単語が浮かんでくるのは初めてである。この《違和感》こそが世界標準であるハリウッド映画にはない、《非ハリウッド娯楽映画》観賞の魅力なのである。