HIMAGINE電影房

《ワクワク感》が冒険の合図だ!
非ハリウッド娯楽映画を中心に、個人的に興味があるモノを紹介っ!

『CIA殺しの報酬』を観た

2011年05月19日 | その他の映画、テレビ

 その昔、B級ホラー映画ブームの頃に日本ヘラルド映画という配給会社が、「こんなの誰も観ないんじゃないの?」というようなホラーやアクション映画を連続で配給・公開した事があった。『悪魔の改造人間』、『吐きだめの悪魔』『スコルピオン』『片腕サイボーグ』『ドラゴン忍者』…多感な中高生時代だったので、すげー興味あったのだが、残念な事に番組を流してたのが普段ポルノ映画等を上映している3番館だったので、観る事が叶わなかった。いま思えばあの頃までがきちんと《映画館》というものが存在していた時期だったのだな。今やシネコンかミニシアターくらいしかないもんね。

 そんなヘラルドによる怒涛のB級映画ラッシュの1本に『CIA殺しの報酬』(1982:米)という作品がある。当時のアメリカ製アクション映画としては珍しく香港チックな格闘アクションがある、という情報だけは日本公開時(87年頃)に雑誌で得てはいたのだが、中々現物にお目にかかれなくて、中古ビデオでも見つけたことはあったけれどスルーしたりして「観たいけれど観たくない」状態が長々と続いたが、それが去年、クンフー&マーシャルアーツ映画ファンの知り合いからコピーを頂いた事からようやく鑑賞のはこびとなった。

 「すげー安っぽいんですケド…」

 これが20年以上、観る事が出来なかった映画を観た最初の感想だ。話が浅い(これはB級アクション映画だから当然として)、キャストに華がない…正に《儲からない》スパイラル全開、《添え物》《プログラム・ピクチュア》という表現がピッタリな作品である。間違っても単品では上映される事はなかろう。CIAの末端組織で働く主人公が、裏切り者の元CIA情報員を捕らえる任務に就くが、本当の目的は彼がCIAの行った残虐行為について記した手記を奪うためだった。それを知った主人公は手記とそれを託された彼の妹をCIAの放った刺客から守り闘うという内容で、ジョークも寒いし、ラブシーンにも魅力なし。ハッキリいってマーシャルアーツ要素がなければ見向きもしないような作品だった。諜報部員モノのジャンルであればどうにでも内容も明るくできそうなものだが…ちなみにアクション・コーディネーターは韓国クンフー映画ファンにその名を知られている楊成五(タイガー・ヤン)という人物、わたしはよく知りませんが。どうりで格闘アクションの動作がテコンドーぽいわけだ。


『マッスルガール!』初回放映&『ビューティ・ペア 真赤な青春』を観る

2011年05月15日 | 女子プロレス

 大阪・東京に遅れること約1ヶ月、ようやく我が地域でも市川由衣&イ・ホンギ主演の女子プロレスドラマ『マッスルガール!』が放映開始となりました。ライバル団体による圧力により解散寸前のプロレス団体の女性オーナーと仲間(所属選手)たちによる再生物語と、来日中の韓流スターの母親探しの二本立てで進むこのドラマ、果たしてどうなる事やら。今後に期待したい…といいながらも番組HPでは既にもう4話目までの粗筋がアップされているんですよね(涙)。見所はプロレス場面でJWPアイスリボンが協力していて、市川の団体の所属選手役である志田光(アイスリボン)以外の所属選手たちが、ライバル団体の選手として登場する事と、主演の市川由衣によるラリアット(笑)かな?こちらでは未放映の直前スペシャルでのメイキング映像(トレーニング風景)で映った、彼女の動きが本職みたいでビックリしました。

 そしてその放映当日に、動画サイトから拾った内藤誠監督『ビューティ・ペア 真赤な青春』(1977)を鑑賞。
 その存在は知っていたものの、肝心の試合を見たことがなかったビューティ・ペア(ジャッキー佐藤&マキ上田)の試合映像を中心に添えてヒット曲をバックに、彼女たちの青春時代(代役でなく本人がセーラー服や体操着を着て当時を再現!)やケガによる負傷からの再起などのドラマを所々に織り込ませながらキチンと1本の映画に仕上げている。ランニングタイムは57分と短いのだが、これは観客層は彼女たちのファン(少女)なので「歌と試合だけ見せとけばいいか」という製作会社・某東映のプロデューサーの投げやりな声が聴こえてきそう。でも併映は『ドーベルマン刑事』だったらしいので、余計にティーン層入りづらいじゃん!でも逆に、短い事でメリハリがあって(無駄がなくて)良かったと思いますよ、私は。
 あの人気絶頂時のクラッシュギャルズでも成し得なかった主演映画(しかも本人役)を持つビューティ・ペアってやっぱり凄い存在だったのだなぁと、観て感じた次第であります。女子プロレスがもう一度あの頃のようにティーンエイジャー少女たちのメインカルチャーに戻れる日は来るのか…?来ないだろうなぁ。


パンナー師匠主催大運動会っ!『Bangkok Knockout』を観た

2011年05月02日 | タイ映画

 肉体表現は言語を超える。

 そんなのは映画がサイレントの時代から分かっている事なのだが、目の当たりにするとこの言葉がいつも頭に浮かんでくる。
 ハリウッドが多額の資金をつぎ込んで新たな映像技術を開発し、観客たちを驚かせ感動させているが、やはり生身の人間によるギリギリのアクションには敵わない。息づかいや体温が画面から感じられないから。
 今や編集やCG等視覚効果によりバーチャル世界のような無気質なものとなった格闘アクション映画が多い中、数少ない《本物のアクション映画》を作る男がタイに存在する。

 パンナー・リットクライ師匠である。

 トニー・ジャーの出世作『マッハ!』により世界的知名度を得た彼は、自分の育てた俳優たちの作品において次々と新たなアクションを見せてくれた。それはかつてジャッキー・チェン作品
などで感じた《痛みが共感できる》ような血肉の通ったアクション。そんな彼の生み出すアクションに世界中のファンたちは賞賛の声を贈った。
 だが、『チョコレート・ファイター』以降、パンナー師匠自らが直々にアクション指導する作品は減り、彼のアクションチームの手による《パンナー師匠的アクション》作品ばかりとなり、正直編集と受け手(やられ役)の技術向上ばかりが目に付き、ここ数本はちょっと食傷気味でパンナー作品のこれ以上の期待が望める要素がなかった。あの『マッハ!』の興奮を、『7人のマッハ!!!!!!!』の興奮よもう一度!とそれらの作品を見ながら(決してアクションのレベルが落ちているわけではないが)そう思っていた。

 だが、やってくれましたよ師匠!

 昨年末(2010)にタイで公開された、パンナー・リットクライ久々の監督(共同)作である『Bangkok Knockout』 はそんな世界中のパンナー信者の心の叫びを一瞬で満たしてくれた、危険度MAXな超絶アクション満載のどこから切っても《パンナー印》な作品だったのだ。

 ストーリーはあってないようなもので、闇の賭博組織によって拉致され、死と隣り合わせな格闘ゲームの《駒》とされてしまったスタントチームの生き残りを賭けたサバイバル・バトルを延々と描いており、多少の恋愛要素はあるものの映画の大半は紅一点のヒロインや身内を《賞品》として、スタントチームの面々と闇組織の用意した《敵》たちとの壮絶な闘いの連続だ。
 集団劇である故に、トニー・ジャーやダン・チューポンみたいな頭一つ飛び抜けた存在が登場しないので(ひと山幾ら的な感じがする)個々で感情移入しにくいのが難点だが、各面々にそれぞれ振付けられた異なるアクションを堪能することができ、格闘振付師パンナー・リットクライの才能の高さを窺い知る事ができる。

 久々のパンナー師匠度100%な作品を楽しんだわけだが、よ~く考えてみるとやってる事は前作の『7人のマッハ!!!!!!!』と変わっているわけでもないし、もっというと代表作『Gead Maa Lui』(86)や90年代に仲間たちで製作した数々の作品群とも大きな違いはない。それは何か?彼の作るアクション映画が、ストーリーを語る上の手段でアクションを用いているのではなく、アクションの積み重ねによって映画を構築していく点である。このあたりは全然進歩がない。武術指導・アクション監督としての才能はものすごいものを持っているのだが、ドラマを含め総合的にやってしまうと映画のバランスがものすごく悪いのだ。そうやって考えると『マッハ!』や『トム・ヤム・クン!』そして『チョコレート・ファイター』で一緒に組んだプラッチャヤー・ピンゲーオ監督は映画というものを知っている。

 過激なアクションのみがずば抜けて突出し、全体のバランスが悪い映画ではあるものの、面白い事には変わりはない。肉体で映画を語ってきた80年代香港明星たちは既に演技に重点を置いた作品に移行し、人命が安っぽく感じられるスタントシーンが満載だった香港アクション映画も過去のものとなった2011年現在、未だに肉体の可能性を信じ、敢えて安全性度外視で(実際は経験と技術でカバーしているけど)映画を作っている御仁がいるなんて感動ものだとは思わないか?


 追記:変わってないといえば、敵の集団が忍者風なのも昔と全然変わってない。好きだねぇ、パンナー師匠…