HIMAGINE電影房

《ワクワク感》が冒険の合図だ!
非ハリウッド娯楽映画を中心に、個人的に興味があるモノを紹介っ!

『Yoga and the Kung Fu Girl』を観る

2010年02月20日 | 中華圏映画
 近年の大予算を掛け、脚本も練られたクンフー・武侠映画も勿論すばらしいのだが、マイナー好みの私としてはアイディア1発勝負のB級テイストな作品を応援したくなってしまう。脚本もヘッタクレもあったものじゃないがその心意気は文句なしだ!
 今回は怪作としてマニアの間では知れ渡っている『Yoga and the Kung Fu Girl(軟骨真奶)』(79)をご紹介。


            

 内容は、幼い頃に父親と死に別れた少女が、小さな雑技団に拾われ様々な技やクンフーを身に付け立派に成人する。しかし、とある町で巡業しているときに兄弟子の犯した些細なイザコザで、町のギャングや実力者などの紛争に巻き込まれ、それが原因で育ての母である親方を含め団員が殺されてしまう。残った少女と二人の兄弟子はすべて裏で糸を引いていた町の実力者に戦いを挑む…というもの。

              
              

 ショウ・ブラザース出身の武打星・戚冠軍が主演、ベテランの白鷹が大ボスというメンツで、70年代後半の流行であるコメディ・クンフー調アクションを見せてくれて、まぁ、その部分だけでも楽しませてくれるのだが、この映画のウリでありすべてであるといっても過言ではないのはもう一人の主演であるフェニックス・チェン(于成鳳)の柔らかい身体を生かした奇天烈なクンフー・アクションだ。
 ほら、よく中国雑技で身体をシャチホコ状にしているおねぃさんいるでしょ?あの格好をファイト中にするんですよ。それで相手の足に絡みついたり頭蓋骨砕いたりするもんですからホント、武術指導のアクション設計には参りました。多分、あの技を生かすにはどうしたらいいか?と逆算して考えたんだと思いますが。それ故か劇中すべてのアクションシーンは彼女が演じています。

              
●コレです

 他に売りといえば…あっ、ありました。戚冠軍や于成鳳(ともう一人)が白鷹の陰謀により用心棒として働くことになるんですが、その敵というのが実にバラエティに富んでいるんですな。
 まず最初は、時代設定が清末民初だというのにパーカーとジーンズで登場するボクシング選手。次は『酔拳』の蘇化子を思わせるホームレスじーさん、その次がジミーさんを彷彿とさせる獨臂拳士、最後はジャッキーのそっくりさんによる蛇拳使い…!もう、この一連のシーンを観ただけでも十分に元は取ったって感じですわ。これが許せるかどうかで正調クンフー映画ファンかB級クンフー映画ファンか分かれる分岐点敵作品ですね。ちなみに私は後者(笑)。

              
              
              
              

 最後に于成鳳の事について。彼女、激しい闘いの合間に見せる幼い表情がとても可愛く(笑っているときも凛とした表情のときも)結構な萌えポイントとなっていて、そこだけでも見る価値はアリだと思います。これ以外に出演作はないらしく、なんか残念。

              

『Suay Samurai』を観る

2010年02月19日 | タイ映画
 こないだ紹介した『The Sancutuary』と並んで、「09年末・観たかったタイ映画」の一つである『Suay Samurai(英題:The Vanquisher)』(09)がようやくウチに届いたので早速観賞してみた。


 元・CIAの女特殊工作員、クンジャーがテロ組織壊滅の任務遂行中、上官・クレアの裏切りに会い桟橋に仕掛けられた爆弾の餌食になってしまう。そして2年後、奇跡的に生きていたクンジャーは爆破テロの横行するバンコックに舞い戻ってきた。彼女は、襲い掛かるテロ組織やかつての剣術の恩師率いる暗殺集団に立ち向かい、すべての悪の首謀者であるクレアに復讐を挑む…!
            
             
             

 タイ映画で、女性アクションと聞くと真っ先に『チョコレート・ファイター』『レイジング・フェニックス』並みの格闘アクションを連想してしまうが(特に最近)、本作では特殊効果+カメラワークで見せるハリウッド大作アクション映画風のイメージで、「痛そう」とか「ヤバそう」とかということは無く、アニメやゲーム感覚で「お~、凄ぇ!」と目の前に映し出されるド迫力画面を楽しめばよいのである。
 主役のクンジャーを演じたソーピター・シーバーンチューンは『チョコレート・ファイター』のジージャ・ヤーニンのような格闘技経験は皆無なので「本物」の動きを期待するのはチョイ酷だが、それでも彼女の演技力と振り付けのおかげでそれなりにカッコいいキャラクターになっている。格闘アクション映画に必要なのは格闘技経験だけでなく、相手を睨み付ける目力や闘いと闘いの間に見せる決めポーズの美しさ・格好良さなのだな、と改めて思った次第。
 ただ、これだけではインパクトに欠けると思ったのか、劇中にはもう一人正義の女戦士が登場する。クンジャーの元同僚で現在はタイ警察の特殊部隊長・シリン役のケーサリン・エークタワットクンである。彼女は正真正銘のテコンドー高手であり、あのパンナー師匠の監督作『7人のマッハ!』にも出演しているのでご記憶の方もいられよう。本作でも忍者姿の暗殺集団(このキャラクターの元ネタって『GIジョー』だよね、きっと)相手に得意の蹴りや肘&膝のムエタイ・ムーブ、はたまた主役のソーピター同様に日本刀を振り回しての大チャンバラまで披露してくれるサービス振り!アクション比率の高さといい、劇中ではどちらのアクション(またはインパクト)が勝っていたかは一目瞭然であろう。

              
              

 いろいろなシチュエーションで行われる爆破シーンなどはすべてCGで処理されているので何かしら「軽い」印象は否めないが、予算面などの関係なので仕方なかろう。監督の思い通りのカット割りにしたければ爆薬を使用しての発破では限界があるのでこれからはこういう撮り方が増えてくると思う。もはや役者はブルーバックの前で演技するのが当たり前の時代になってきたんだなぁ。視覚効果(照明・カメラワーク・特殊技術)で驚かせるか、本物の迫力(命を張ったスタントやオープンセットを使ったスペクタクル)で驚かせるかは監督の力量次第ってことですね、結局。

               
             
              
●まるで次回作が作られそうなエンディング。続編は作られるのか…?!

              
●暗殺者役でタイ在住の日本人女優・斎藤華乃が出演。いきなり登場するネイティブな日本語にちょっと不意打ち気味でした。

『ソフィーの復讐』を観た

2010年02月17日 | 中華圏映画
 チャン・ツィイー製作、主演作『ソフィーの復讐』(09)を遅らばせながら観賞した。タイトルの響きからサスペンス物と思い込みずーっと敬遠していたのだが、日本劇場公開が始まり予告編を公式HPで観たら私好みのシチュエーション・コメディで凄く面白そうだったのだ。


 内容は二年間付き合っていた婚約者・ジェフに結婚式直前に婚約を破棄されてしまった女流漫画家・ソフィーが、もう一度彼の目を自分の方へ向けさせる為、あの手この手を駆使して奮闘するというもの。
 これが日本や韓国で製作されていたのであれば「ありきたりのラブコメか」と別段驚く事もないのだが、中国映画ともなれば話は別だ(厳密には中国・韓国合作)。ローカル色を全面に出した文芸作品や芸術性の高い作品ばかりが紹介されてきた中国映画だが、このような欧米風のモダンなロマンティック・コメディが作れるまで洗練されてきたんですね!

この作品はチャン・ツィイー自ら製作を買って出ただけあってこの作品は“俺様映画”ならぬ“女王様映画”になっていて、どこを切っても彼女が登場し、見終わった後も網膜に焼き付いているのはツィイーの笑顔だけという恐ろしい代物だ(笑)。今までは役柄に合わせてその作品にブッキングされているので、作品中の登場頻度は程よい加減だったのだが、終始彼女が出ずっぱりとなると、う~ん…可愛いから許す(←大甘)。

 これまでは薄幸の美女、武林の侠女等クールビューティーなイメージが定番の彼女だが、今作ではちょっとエキセントリックな性格の等身大な現代女性を演じていて、コメディエンヌな彼女もまた魅力的なのだ。劇中ソ・ジソブ(『映画は映画だ』)やピーター・ホーといった韓国・台湾のイケメン男子に惚れられて(作品中では)さぞいい気分でしょうね。そして恋のライバルとして敵対する役に《ポスト・チャン・ツィイー》として中華圏では人気のある若手女優ファン・ビンビンを配したりして現在進行形の華流+韓流スターが楽しめる正に一級品なのだ。


 まだ劇場で上映されている地域もあるので、ソフィーの恋の結末に興味のある方はご観賞あれ。ちなみに私の感想は「そんなのアリかよ~?!」でした、ハイ。

              
●ビンビンとツィイーの狭間で小さくなるジソブ氏(笑)。劇中北京語で演技しているのは立派!

『熊猫大侠』を観る

2010年02月06日 | 中華圏映画

 今回の紹介作品は『熊猫大侠』(09)です。動画共有サイトにアップされていた予告編を観て面白そうだったので、速攻で注文しました。


 舞台は南宋時代、都で開催されるイベントの為に遠く四川より大熊猫(パンダ)を運送する命を受けたのは、飛刀以外はからっきし駄目で冴えない風貌の鏢客・王老吉。そんな彼(とパンダ)を行く先々で待ち受けるのは、別人と間違えて結婚を強引に迫る女山賊やパンダの肉を食えば最強の侠客になれると信じている男、それにパンダ護送を利用して宋の大将軍に接近し暗殺を狙うモンゴルの刺客二人組など様々。果たして王老吉は無事にその任務を果たすことができるのか…?

              

 いやぁ~、これはマジで傑作でした。導演の王岳倫は感覚がとても洗練されていて「えっ、中国のコメディ?」と二の足を踏むお方でもすんなりこの映画の世界に入っていけるような画作りをしています。CGの使い方も効果的だし、言葉は判らなくても見た目おかしな輩たちがトンチンカンなことをするので笑えるし、そして味付け的にホロッとさせるような“泣き”の演出があったりして、まだこれが監督二作目という王導演の只者ではない才能を感じます。かつてはこの手の作品は香港が製作していたんですが…今や中国語映画の才能たちは大陸に移っちゃったんですね。

              
              

 この映画で目についたのは2人の女優さん。一人は主人公を結婚相手と勘違いいて追い掛け回す女山賊・金蓮役の阿朶。彼女はこの作品ではお色気&バカ演技担当ですごい変顔を見せるかと思うと、恋に恥らう(笑)乙女チックな演技をしてみせたりとなかなか。彼女、本職は歌手で露出度の高い衣装で人気なんだとか。あぁ、だから劇中でもそういう衣装を着てたのね。
 もう一人は女武官・阿好役の家佳。武官らしい気の強さと女らしい可愛い所を併せ持つこれまた“ツンデレ系”キャラ。阿朶と比べて正統派中華美人顔なので私は彼女のほうに一票あげたいと思います。古装もいいですけどイマ風の衣装も似合うと思いますよ、彼女。

              
              
●上が阿朶、下が家佳。どちらも美人顔ですが映画のせいで…

 他にも中国で活躍する日本人俳優・矢野浩二の奇天烈なキャラクターぶり(彼のコメントによれば志村けんをモチーフにしたとの事)など見所満載の『熊猫大侠』。願わくば日本語字幕、贅沢を言えば日本語吹替版でぜひ観てみたい!

              
●左が矢野浩二氏。衣装のせいか周星馳的


『THE SANCTUARY』を観る

2010年02月04日 | タイ映画

 今回の紹介作品は久しぶりのタイ映画『THE SANCTUARY』(09)です。公開前の情報も少なく(日本語で読める範囲内では)、あまり期待せずにVCDを購入しましたが、いざ鑑賞してみると…拾い物的な一作でした。


 内容は100年前に盗まれ、以後行方知れずだったタイ王家の秘宝を中心に武力・知能に長けた外国人盗掘団と、ムエタイ修行中の青年&考古学を専攻する女子大生との闘いを描いたもので、一見アドベンチャー映画風だがお宝探しの描写は意外に少なく、衛星や最先端ハイテク機器などを使ってあっさりと見つけ出してしまい、トレジャー・ハンティングの興奮は残念ながら味わえない。この映画の大半は主人公と傭兵を含む盗掘団との闘い、盗掘団と彼らを利用する反政府ゲリラとの闘い等のバトルが占めている。よって宝探し要素を期待して観ると肩透かしを喰らうだろう。だが、それ以上に主人公を演じるパイロート・ブンクート(洋名:マイケルB)の身体能力の凄さに驚かされる。
 
             
             
 
 パイロート・ブンクートはトニー・ジャー等を育てたタイの誇るアクションマスター、パンナー・リットクライ師匠のスタントチーム出身で、今回が映画初主演。一見、今や世界的スターとなったトニーが簡単に使えないので低価格の小型版を作りました、という感じがしないでもない。香港電影に例えるならばチャウ・シンチーに対してのディッキー・チョン、と言えば分かるかな?
 主人公が最初から格闘技術に優れていたりする場合が多いパンナー系俳優作品が多い中、この作品ではパイロート演じる主人公がラスト近くまで弱いのが特徴。それまでは蹴られ殴られ、挙句の果てにはビルから突き落とされたりとまるでかつてのジャッキー映画のよう。彼は危険度の高いアクションを演じることによって先輩たちとの差別化を図っているようだ。まぁ、この作品だけかもしれませんが今後に注目したいアクション俳優でしょう。

             
             
             

 あとこの映画最大の悪役を演じたラッセル・ウォンについても触れておきたい。クールな顔つきから頭脳明晰なのはありありと分かるのだが、果たして“強さ”についてはどうなのか?と思っていた。ガタイもゴツいし銃撃戦を見る限りでは運動神経鈍そうだし、結局喋りとベッドシーンだけが売りのキザ系悪役なのかなと思っていたら…やってくれました。合気道風の関節技&投げや身体の重さを利用したパンチとキックを駆使して主人公を死の一歩手前まで追いやるんですから(対ラッセル戦までに散々殴られ蹴られてましたが)大したものです。ちゃんとラッセルの持つキャラクターを生かしきりましたね、見事です!タナポン・マリワン監督。