製作中におけるトニーの失踪事件など紆余曲折を経て完成した本作は、前作(『マッハ!弐』)にもまして本人考案の新アクションは見事で、ちゃんと開巻当初→荒々しく野性的、物語後半→達観して落ち着いた硬軟織り交ぜた動作、とちゃんとキャラクターの心の成長とともにアクションを変えているのがとても良い!タイ・マーシャルアーツ映画の《シンボル》的な動作である膝・肘を多用したアクションは少なく、トニーならびにパンナー印のアクションが現状維持ではなく、新たなるステージへ向かっている事がうかがい知ることが出来る。
ラスト近くの《最高に盛り上がるクライマックス場面をわざわざゼロに戻す》演出は観ていて「へっ?」と思ったが、これって当初からトニーが考えていた脚本にあったんでしょうか?ものすごく不自然だし、興奮が途切れちゃうんですよコレだと。仕切り直しでトニー対本作の悪役ダン・チューポンの一騎打ちが開始されるのですが全然感情が入らない。格闘アクションは凄いですけどね。果たして本作はどこまでトニーの意見が織り込まれているのか?『マッハ!弐』がもの凄い緊張感で物語が推し進めていただけにその点だけが悔やまれます。
この作品を最後にトニーは、仏門に入るため映画界を引退(?)するわけですが、「残念」「もっと作品が観たかった」等という声があるけれど、私はここらで一旦観客の目からフェイドアウトして自身のキャリアをリセットするのもアリかな?と思います。『マッハ!』で始まった怒涛のトニー・ジャー・アクションですが、自身の監督作である『マッハ!弐』『Ong-Bak3』を完成させた現在、彼がこれ以上のハイレベルなアクションを見せ続ける事は難しいと思いますし、映画ファンの興味を繋ぎ止める事だって難しいでしょう。それならば数年後かに今までとは違った魅力を持つ《新生トニー・ジャー》としてカムバックしたほうが良いのではないか?と考えています。
果たして彼は今でも映画への情熱は持っているのでしょうか…?