KAYO MATSUSHIMA HP

ペンギン×アート作家 松島佳世のブログです。
展覧会情報と創作の日々の様子を書きます

ルソー夢×ペンギン、壁画になる その5

2023-04-08 16:55:00 | 壁画ルソー夢ペンギン

12月になり、いろいろ考えた構想を元にパソコンで大まかな下絵を完成させました。



準備をしてくれるマックスさんには壁画用の板に細かくグリット線をひいてもらうことを依頼。あとはそのグリット線を目安に現地で下書きを完成させるだけ。楽ちんらくちん♪

と思っていたのですが、

2008年に描いた時は小さい画面でしたが、植物が入り組みすぎて自分が元絵のどこをパスティーシュ(芸術模倣)しているのか何度もわからなくなり、描くのに苦労したことを思い出しました。

「ルソー夢×ペンギン」は「最後の晩餐×ペンギン」よりもはるかに細かい絵。

現場でグリット目安にパソコンで作った構想図を見ながら下絵を直接板に描いたりしたら、入り組んだ植物でわけがわからなくなって現場で混乱してしまい、いつまでたっても下絵が終わらないのでは…

どうしよう(顔面蒼白)

ちょうどこの頃、マックスさんから連絡があり、現場への板の搬入が12月初めから中頃に遅れるとの連絡がありました。

これぞ渡りに船!(マックスさんありがとう~笑)

家できちんと事前に下書きを制作することにしました。

はじめは「最後の晩餐×ペンギン」みたいにパソコンでやろうと思いましたが、数分やってみて私には細かすぎて無理とわかりました(はやっ)

それで模造紙を買ってきて1/2縮尺の画面を作って鉛筆で描き始めました(アナログはけっこう強いのです)

壁画の実寸は横318cm×縦138cm。なので模造紙は横159cm×69cm。

実際に作ってみると1/2縮尺でも大きくて机に全部のせれません。

(おおきなダイニングテーブルでもあればよかったんですけどね)

現場で下絵をやらなくてよかったと思いつつ、小さな作業台兼こたつで紙を巻きつつ途方に暮れながら制作しておりました。

12月中頃に現場が完成したとマックスさんから連絡があり下見に行きました。とてもよく準備されていて感動。環境もばっちり。描くのが楽しみになりました。板の画面が黄土色なのは、私が下地色としてイエローオーカーを指定したからです。



でもまだ下書きは半分…

担当のKさんに「切りがいいので来年早々から取り掛かります♪」と見栄をはるけど心の中はドキマギ。はたして間に合うのか?

ちょうどこの頃はならペンギンランドの準備もあって忙しかったです。正月準備もあるし。とにかく時間との勝負。鉛筆で手が汚れ、消しカスが下にあるのに気づかずに線を引いてしまい、線がゆがんでしまうなど物理的にも大変でしたが、一番大変だったのはやはり今自分がジャングルのどこを描いているのかわからなくなること。

たぶんジャングルの植物を輪郭線で描くより、影をつけながら面で描くほうがよっぽど描きやすかったと思いますが、余計な線は下書きとして邪魔なだけ。考えている間はないのでただひたすら線をひいていました。ひたすらひたすら…



この頃から、グリットごとに自分で拡大コピーして一枚一枚現場でカーボン紙を挟んで写すよりも、業者さんに頼んで原寸大に拡大コピーをして現場で板にそれを貼って下絵をカーボン紙で写し取るほうが早いことに気づきました。(正月ぐらいはゆっくりしたいし笑)

下絵はクリスマスにはなんとか完成しました。



世間が仕事納めの日に印刷屋に持ち込んで原寸大の拡大コピーを依頼。印刷屋さんによるとさすがにこの大きさの一枚物は無理で、縦4枚に分けないと出力できないとのことでしたが、それぐらいなら現場で貼り合わせられるのでお願いしました。

おかげさまで無事に正月が迎えられました。

年明けになりましたが、原寸大の拡大コピーができあがりました。とにかくきれい。すごい。これを自分で一枚一枚拡大コピーして貼り合わせるのは無理だったと痛感しました。

書き忘れていましたがグリッドは128もありました(^^;)

相変わらずの予測の甘さでしたが、印刷屋さんのおかげでギリギリ間に合いました(笑)



大きすぎて一枚の写真には収まりません。


つづく

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

さて、この度ペンギン壁画の見学会を開催することになりました。

会社なので平日の昼間ですが、お時間が合う方はぜひお越し下さい。

4月19日(水)

14時〜と15時半〜の2回です

ペンギン美術館「最後の晩餐×ペンギン」と「ルソー夢かけペンギン」(制作途中)がご覧頂けます

申込は調整さんにて受付ています。





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ルソー夢×ペンギン、壁画になる その4

2023-04-03 19:23:00 | 壁画ルソー夢ペンギン

秋が更けるころ私は急にいそがしくなりました。ならペンギンランドの制作があったからです。よせばいいのに慣れないグッズ制作にのめりこんでしまい、気が付けば11月下旬。

やばい!と慌てて下絵の準備に取り掛かりました。

まずは本を読みました。(ここから?笑)

原田マハさんの「楽園のカンヴァス」です。

「夢」を制作中のアンリ・ルソーやピカソなど19世紀の画家の世界とその作品を取りまく現代の学芸員やコレクターの少しサスペンスじみたお話です。

前から読もうと思っていたのですが、なかなか意を決せず、このタイミングを逃すまいと思いました。

とにかく面白い。一気に読みました。物語とはわかっていても、さすが美術館勤務経験のある原田マハさん。美術大好き人間としてはぐいぐい引き込まれます。ソファに寝そべっている女性とルソーの恋の話なんて、その結末までそうあってほしいと思いました。

なので、新しく描く壁画ではルソー本人を登場させようと思いました。

元々の私の『ルソー「夢」×ペンギン』と壁画の画面の大きさは縦横の比率が違います。拡大しても横の長さが足りません。なので、本来の私の絵は壁画の中央におき、ジャングルを左右に広げることにしました。

ただジャングルを広げただけでは面白くないので、ペンギンの配置を変えようとも迷いましたが、変えてしまうと自分の元の絵とは違うものになるので、そこはやはり変えたくない。

そこで左右に広がったところは、本来ルソーが「夢」で描いた動物たちや蛇使いを再配置することにしました。

ほかのルソー作品からもいろんなところを抜粋して配置しました。

手を洗いながら社員さんが壁画を見て、ジャングルに潜むいろんなものを探すのも絶対楽しいと想像しました。

(いくらサンコーインダストリー株式会社さんのマークがペンギンでも、社員さんすべてがペンギンラブではないでしょうし)

で、ついでにルソーおじさんの登場です。以前描いた目がペンシリーズ「私自身:肖像=風景(アンリ・ルソー)」(別名 ルソーおじさん、ペンギン好きをはじめました)から拝借です。今回はかわいい雛たちを引き連れることにしました。





ソファーに座ったペンギンから、妖しい目線が届いているけれど、ルソーおじさんはシャイなので目が合わせられないという設定にして、すこし恥ずかしげに避けるように配置しました。

ベレー帽のアデリーだけが目線を合わせています。

今回の壁画は、2008年に描いた時とは解釈も少し違う『ルソー「夢」×ペンギン』となります。

さて、先日サンコーインダストリー株式会社の社長さんからむちゃぶりがきました。

とあるキャラを絵にひそませることになりました。

どんなキャラが追加されるかはどうぞお楽しみに。

どう描こうかとすごく悩んでいます(笑)






原田マハ「楽園のカンヴァス」(2012年発行)新潮社


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