鳥!連続写真!掲載中!

近くの多摩川に飛来する野鳥の連続写真を中心に、日頃感じた出来事を気ままな随想でご紹介し、読者双方との情報を共有したい。

管理職の人事考課制度の現状と課題(11回シリーズその7)

2013年04月30日 00時00分01秒 | ブックレビュー

(3)チャレンジ精神の高揚
 大競争時代の到来、産業構造の転換の必要性が叫ばれる中で、企業は社運をかけて新製品の開発や新規事業の開拓、あるいは社内コスト削減や生産性向上に向けた不断の努力をしなければならない状況にある。そして、これらを推進する原動力はヒトであることから、従業員のチャレンジ精神の高揚を図ることが、企業にとって喫緊の課題となっている。
 アンケート調査では、将来見通しについて「既存分野は衰退していくと見られ、新規事業を開拓したい」とする企業は24%であった。また、管理職の問題点として、「新規事業などへの挑戦を行っても、人事考課や処遇に反映されないため、チャレンジ精神が欠けている」と指摘した企業は17%、更に「新規事業分野や改革・革新を行った管理職には、インセンティブ的な処遇を実施した」企業が5%、「今後実施したい」とする企業は63%にのぼった。
 従って、今後、従来の減点主義から加点主義を加味した人事考課制度へ改める。出来れば、「チャレンジしたら、その結果は問わず加点する」くらいの前向きな改革を進めるとともに、挑戦者(成功者)にはインセンティブ的な処遇を行っていくことが必要と思われる。

(4)昇給考課と賞与考課

 a.絶対評価と相対評価
 昇給考課と賞与考課につき、最終人事考課結果を決定するにあたって、絶対評価と相対評価のいずれを用いているかを見てみたい。
 アンケート調査によると、昇給考課では絶対評価と相対評価が半々、賞与考課では相対評価を用いる企業が多いという結果であった。
 絶対評価には、被考課者の納得性が得られやすいという利点と、企業相対としての業績とかけ離れて考課結果が甘くなりがちになるという欠点がある。一方、相対評価には、原始の枠内の配分で済むとともに、競争意識を高めるという利点がある反面、達成された成果と考課結果にギャップが生じる場合があるとともに、分布制限をしても標準ランクへの集中化現象が起こりやすい、減点主義的な発想に陥りやすいなどの欠点があると考えられる。
 いずれにせよ、一長一短があるわけで、各企業の業績見通しや管理職の考え方、企業風土などを考慮した上で、管理職個々人の評価に対する公平性と納得性の確保、管理職の活性化、人件費コストの管理などの課題につき、そのバランスを考えて決定せざるを得ないと思われる。
 しかしながら、現在の低成長、競争の激化など、賃金原資が安定的・長期的に拡大を望めない中では、人件費原資の制約という側面のウエイトが大きくならざるを得ず、昇給、賞与考課いずれにおいても相対評価を選択する企業が増えていくのではないだろうか。また、少なくとも毎年毎期の決算にらみとなる賞与については、その配分のための考課は相対評価としておくことが妥当であると考える次第である。(次回へ続きます)

管理職の人事考課制度の現状と課題(11回シリーズその6)

2013年04月29日 00時00分01秒 | ブックレビュー

(2)目標管理制度 企業が、管理職層の賃金から年功色を排除し、能力・実績主義化を進める中で、人事考課制度の役割は極めて重要になっている。処遇の格差拡大を図るためには、評価によって個々人の能力・実績を決定する必要があるが、個々に、如何に公平かつ納得性ある方法で能力・実績を測るかということが最重要の課題になってくる。そして、その測定方法として、現在多くの企業で導入されつつあるのが、個々人の目標を設定し、その達成度で能力・実績を評価するという目標管理制度である。

 どのくらいの企業が目標管理制度を導入、あるいは今後導入したいと考えているかというと、アンケート調査の結果では、「すでに導入」が63%、「今後、導入したい」が26%で、合計89%に達している。また、事例企業では、業績を評価するに際して、目標に対する達成度に基づく考課を実施している。目標管理制度の内容については、目標設定の段階では、個々人が自己申告で行う方法や、上司との話し合いで設定するもの、あるいは上から指示・設定する場合がある。また、その達成度合いの把握と評価については、自己申告のうえで上司と話し合い決定する場合や上司が一方的に評価する場合などがある。これについて企業事例で見ると、上司(考課者)と部下(被考課者)との話し合いにより、目標設定並びに達成度評価を行うという面接制度を導入している企業が多い。上司と部下との話し合いが、適切な目標設定をもたらすとともに、目標設定とその達成度評価について、相互の納得性を高めるからであり、さらには、コミュニケーションが図られ、両者の育成に繋がるためであると思われる。

 他方、上からの指示・設定が行われる企業では、経営方針・計画から部門目標が設定され、それが個々人の目標にまで展開される場合が多く、特に、営業や販売など目標が数値化・金額化できるところで活用されている。

 このように、目標管理制度と面接制度に基づく人事考課は、被考課者に経営方針・経営計画に対する理解を促し、また、個々人が努力すべき能力開発の方向を示し、更には上司と部下とのコミュニケーションにより、評価に対する納得性を高めるメリットがある。
 従って、目標管理制度と面接制度を組み合わせた人事考課制度は、人事・処理の能力・実績主義化を進める上で、要となる制度であるとみられ、今後ともその充実に向けた企業の様々な取り組みを注視していく必要があろう。(次回へ続きます)

管理職の人事考課制度の現状と課題(11回シリーズその5)

2013年04月28日 00時00分01秒 | ブックレビュー

3-1能力・実績主義時代の人事考課制度
(1)年功色の排除と能力・実績重視

 過去、我が国企業は、年功賃金、つまり、年齢や勤続年数に応じて、賃金が上昇する賃金体系を採っていたが、時代の要請に応じて、職務遂行能力を主たる賃金決定要素とする職能給体系への転換が進められた。しかしながら、現在でも、多くの企業において、年齢給、基礎給などの名称は様々であるが、年齢あるいは勤続年数と直接リンクして金額を定める賃金項目を設け、あるいは、本給部分の定期昇給制度により、生活給的要素としての年功賃金部分を残しているのが実態である。これは、企業が、終身雇用慣行(長期継続雇用)を前提に、従業員の生涯生活に配慮してきたことなどによる。
 では、現在の企業環境の激変の中で、企業はどのような改革に乗り出しているのであろうか。
 アンケート調査では、「管理職の賃金について能力・実績主義とし、個々人の格差を付ける、あるいは格差を拡大する」という改革を「実施した」とする企業が41%、「今後実施したい」が53%、合わせて94%という高率の回答結果を得た。また、「管理職の賃金を業績対応型にする」についても、「実施した」が30%、「今後実施したい」が57%、合計で87%という回答結果であった。更に、「年俸制」については、「実施した」が13%、「今後実施したい」が50%、合計で63%となった。
 なお、管理職の昇給額及び賞与額における最上位者と最下位者との格差についても、部、次、課長別にその現状と今後の方向をアンケートで調査したが、最上位者と最下位者との格差はかなり大きく、それが今後は更に拡大する方向になっている。
 さて、他方、企業事例を見ると、管理職の月例給与については、a.月例給与項目からの勤続・年齢の積み上げ部分の除外、b.定期昇給概念の除外、c.単年度ごとの洗い替え方式の導入などの改革が行われ、また、賞与については、a.賞与からの年功的要素の軽減・排除、b.考課反映部分の新設・拡大などが図られている。更に、年俸制を導入した企業もみられた。
 このように、現在、企業においては「少なくとも管理職層の賃金から年功色を軽減・排除するとともに、人事考課の結果に基づく能力・業績に応じた賃金部分のウエイトを高める方向に動き出している」ということが明らかとなった。まさしく、年功賃金から能力・実績賃金への改革が進められているのである。(次回へ続きます)

管理職の人事考課制度の現状と課題(11回シリーズその4)

2013年04月27日 00時00分01秒 | ブックレビュー

 ここで、企業における人事・処遇の改革の方向性を考えてみると、
1)成熟経済により人件費パイの拡大が期待できない中で、管理職の活性化を図るためには、従来の年功主義から、個々人の能力と実績に応じて賃金を配分するという能力・実績主義へと転換すること。
2)競争激化のための企業業績も不安定とならざるを得ないため、硬直化した賞与につき、本来の賞与の持つ性格に鑑み、企業業績反映型とし、その従業員への配分については、個々人の業績に応じて行うこと。
3)大競争時代の到来、規制緩和、輸入拡大などの動きの中では、新規事業への果敢に挑戦することが重要であり、これを促すには、従来の減点主義から、加点主義への変革を図ること。
4)高齢化が進む一方、情報化が進展する中では年功序列ではなく、昇進・昇格の厳選化を図ること。
5)賃金の能力・実績主義への転換並びに昇進・昇格の厳選化を進めるためには、被考課者の納得性が得られる人事考課制度を構築すること。
などが指摘できるのではなかろうか。
 実際、今回のアンケートの調査結果でも、多数の企業が、これらの改革に乗り出していることが明らかになった。また、今回の事例企業8社においても、近年、大幅な人事諸制度の改革を実施したところが大勢を占めた。従って、企業環境が激変する時代を迎えて、企業は、人事・処遇及び人事考課制度の抜本的な改革に迫られており、それを実現できるかどうかが、企業の盛衰をも決定すると断言して差し支えあるまい。

3.管理職人事考課制度の現状と課題 個々では、能力・実績主義時代の人事考課制度、昇進・昇格の厳選化、人事考課の納得性を高める諸政策、管理職と一般従業員の人事考課制度の相違点、人材育成に向けた諸政策などについて、委員企業8社の事例並びにアンケート調査結果をふまえつつ、現状と今後の課題を探ってみたい。(次回へ続きます)

管理職の人事考課制度の現状と課題(11回シリーズその3)

2013年04月26日 00時00分01秒 | ブックレビュー

2.企業を取り巻く環境変化 (出版された時点から15年近くが経過しているため社会経済情勢が相当変化しているが、当時の状況をふまえることは今日との比較を容易に出来ると思い、あえて記述することとした)

 テーマである人事考課制度の問題に入る前に、その大前提となる企業経営を取り巻く環境の変化について考えてみたい。

 その第1は、日本経済の成長軌道の変化である。かつての高・中成長、つまり常なる右肩上がりの成長時代は終焉し、成熟軌道に入ったと見られる。

 第2は、為替レートの問題である。昨今の円高は、我が国の賃金を世界一の水準に押し上げる一方で、内外価格差を拡大させた。これらにより、我が国産業は国際競争力を低下させ、製造拠点の海外移転、いわゆる産業の空洞化にも拍車をかけている。過度な円高を是正するためには、経済的保護・規制の撤廃による低生産性部門の生産性向上と輸入拡大による国際収支の均衡という抜本的な改革が求められている。

 第3は、国際的な大競争時代に入ったことである。東西冷戦の終焉により、東西が合体した中での競争が行われることになった。また、我が国は東南アジア諸国の技術力・品質のキャッチアップにも直面している。

 第4は、情報化の進展である。インターネットの普及、マルチメディア時代に向けた技術進歩には著しいものがある。この分野で我が国は後れを取っているともいわれているが、今後、急激に間を詰めていくことであろう。

 第5は、我が国の高齢化の進展である。労働力人口に占める55歳以上の高齢者の割合は、1994年には22%であったが、2010年には29%まで拡大すると見られており、企業成長と年功序列制度の好循環をもたらした人口構造のピラミッド型が急速に崩れつつある。

以上のように、今回の長期不況に加えて、大きな歴史的潮流が変化する中で、我が国経済、企業経営の先行きは不透明となっており、企業には様々な発想の転換と急速な対応策が要請されている。
今回のアンケート調査の結果でも「不透明な将来に備えて、コスト削減を図るとともに、リストラに着手あるいは検討している」と回答した企業は64%にのぼっている。このような激動の時代を迎え、これを乗り切っていくためには、最も重要なのは人材であり、その中でも中核となる管理職の正しい現状認識と将来に向けての建設的かつチャレンジ精神に富んだ取り組みが不可欠である。(次回へ続きます)

管理職の人事考課制度の現状と課題(11回シリーズその2)

2013年04月25日 00時00分01秒 | ブックレビュー


 まず第1が、いつの時代においても、経営陣の補佐役、経営管理の中核である管理職のあり方は、企業の盛衰をも決定する主要な要因の1つであり、かれらの意欲向上・活性化を図るために、どのような人事考課制度が行われているかを把握することであった。
 昨今の厳しい経営環境の中で、管理職のあり方が改めて問われ、また、その生産性を高めることが要請されている。管理職の生産性を向上するには、何よりも管理職の意欲、具体的には、チャレンジ、改革・革新、目標達成、部下育成、自己啓発等に向けた意欲が不可欠であるが、その自発的な意欲を高めるためには、管理職個々人の資質、適性、能力を的確に把握した上で、適材適所に配置するとともに、各人の業績を正しく評価し、それにふさわしい処遇を実現することが必要と思われる。
 第2に、従来からの年功序列的な運用の結果、管理職層が肥大化したが、バブル経済崩壊後の景気低迷の中で、昇進停滞、相対的な人件費負担の増大などの問題が生じたことから、管理職層のスリム化が求められているとみられ、その実現に向けて、企業がいかなる対策を講じているかを明らかにすることである。具体的には、昇進・昇格の厳選化並びに、企業業績への貢献度に応じた処遇の実現が必要であり、そのためには、管理職の能力、特性、業績を的確かつ公平に評価することが不可欠となっていると思われる。
 第3に、人事考課に関する報告書や出版物は多数にのぼるが、その多くが、一般従業員に関するものであることから、今回、管理職の人事考課制度の特徴を探ることがねらいであった。
 第4に、単に人事考課の制度を調査するのではなく、効果の結果がどのように人事処遇に反映さているのかという人事考課と人事処遇管理の関係を明らかにすることを目的とした。(次回へ続きます)

管理職の人事考課制度の現状と課題(11回シリーズその1)

2013年04月24日 00時00分01秒 | ブックレビュー

サブタイトル 制度の内容と運営及び諸人事管理への適用の実際とこれからのあり方
編者 (財)雇用振興協会 発行所 経営書院

序文(抜粋) 最近の企業を取り巻く経済環境及び経営環境は、大変厳しい状況に直面しております。我が国の多くの企業では、戦後、日本的経営の代名詞ともいうべき年功序列型賃金制度を柱とし、終身雇用を軸とする長期雇用システムを採ってきておりますが、急激な円高による国際競争力の低下と高齢化の進展で、こうしたシステムの維持が難しくなり、日本型雇用システムの崩壊が叫ばれてきております。一方では、管理職を始めとする一部ホワイトカラーを中心に、年俸制による賃金制度が取り入れられてきており、能力主義や実力主義重視型賃金制度に目が向けられるようになった現れと思われます。
 このような情勢をふまえ、今回の調査研究テーマを「管理職の人事考課制度の現状と課題」といたしました。
人事考課制度は多くの企業が様々な問題を抱え、しかも現実の問題として、その解決を図りながら進められていると思われます。それぞれの企業にあった人事考課制度をシステムとして定着させるためには、今後も詳細にわたる検討と実績の積み重ねが必要であります。本研究には、幸いにも、我が国を代表する企業8社の参加を得て、研究会の場で、現在までに蓄積された各企業のノウハウのご報告とご討議をいただきました。本書が未だ着手できていない多くの企業の先鞭を付ける事例として、いささかなりとも寄与することが出来れば幸いです。

1.調査研究テーマの設定に当たって
 本研究委員会では、調査研究テーマを「管理職の人事考課制度の現状と課題―――制度の内容と運営及び諸人事管理への適用の実際とこれからのあり方」と決定、委員企業8社の事例を研究するとともに、「管理職の人事考課制度の現状と課題に関する調査」と題したアンケート調査を行った結果を報告書としてとりまとめた。調査研究テーマとして、管理職の人事考課制度を取り上げたねらいは、以下の4点である。(次回へ続きます)

ブックレビュー 「若手コア社員像」(5)

2013年03月24日 00時00分01秒 | ブックレビュー

 第3の点は、これからの賃金、賞与、退職金あるいは福利厚生費などの管理については、総額人件費の中で考えねばならないことである。総額人件費は、低成長時代にあって企業の支払いうる総額人件費は限られたものになってきている。また、賃金、賞与などの現金支給が既に世界水準に達していることを考えると、この限られた総人件費を、どの部分に重点を置いて配分するのがよいのか、今後、労使で十分話し合い、対応する必要がある。

 他方、賃金、賞与、退職金について、能力主義、業績主義を強める方向が求められている。更に、21世紀の方向を考えると、退職金や福利厚生費を定額賃金に繰り入れるといった制度改革も考えられる。これもまた、国際基準化の方向かもしれない。

 企業経営にとってもっとも大切なのは「企業は人なり」であり、とりわけ将来企業をしょって立つ「若手コア社員」に期待するところが大である。こうした若者の勤労観が変化してきている一方で、企業が求める社員の能力や人間像も変化してきている。新しい21世紀を迎える我が国企業経営にとって、その中心的担い手である「若手コア社員」に求められている能力は何か、彼らを活性化するには人事処遇制度をどのように改革したらよいのかの考えを本書で考察している。

ブックレビュー 「若手コア社員像」(4)

2013年03月23日 00時00分01秒 | ブックレビュー

 第2の点は、勤労者意識の変化や高齢化、女性の労働力化の増大等による雇用形態の多様化が進んできていることである。今後の雇用の在り方については、「長期蓄積能力活用型」(終身雇用的勤労者層)、「高度専門能力活用型」(高度な専門知識・技能を持ち1~3年の短期間契約だが高給を受ける勤労者層)、「雇用柔軟型」(スーパーやコンビニのパート・アルバイトなど比較的単純労働の勤労者層)の3つの雇用グループに分けられる。そして、これらのグループの雇用者に占める割合は、それぞれ現在の81%、7%、12%から将来は71%、11%、18%になると見られている。つまり、今後は終身雇用的な「長期蓄積能力活用型」グループの勤労者が減り、他のグループの勤労者が増えるということになる。この傾向は、企業側の考え方だけでなく勤労者側の考えでもあることにも注目すべきである。人事担当者としては、自社の要員管理に対して、この3つのグループの割合をどう設定し組み合わせるのが経営にとって効率的なのかを決める雇用ポートフォリオ(組み合わせ)が重要な仕事となってきている。

ブックレビュー 「若手コア社員像」(3)

2013年03月22日 00時00分01秒 | ブックレビュー


 まず第1の点は、経営に対する考え方の基本が大きく変化してきていることである。それは、1985年のプラザ合意(先進7カ国蔵相会議)で、為替レートが1ドル240円程度から一挙に120~140円となり、日本経済が将に世界のトップランクに躍り出た以降とそれ以前とでは大きな違いを見せてきたことである。つまり、それまでの経営の基本は「コスト+利益=価格」の考えで、企業はかかったコストに必要な利益を加えた価格で経営をすれば良かった。別の言葉でいえば、企業(供給者)は自分の理論で仕事ができたともいえる。しかし、プラザ合意以降は「コスト↓=価格↓-利益↑」という考えで仕事をせざるを得なくなってきた。

 この式が意味するところは、国際基準が求められるなかで、我が国が国際的に低いとされる1単位あたりの利益を上げなければならなくなり、他方、価格は国境のない大競争時代の中では下げざるを得ない。下がる価格から上がる利益を引いたコストは、当然下げざるを得ない。
 従って、この下げざるを得ないコストで経営ができない企業はつぶれるか、多の分野を開拓しなければならない時代になってきているということである。そうでなければ、企業が価格を決められるような消費者の求めるものまたはサービスを提供できるようにならなければならない。経営が、企業(供給者)優位から、消費者・ユーザー(需要者)優位の時代へと確実に変わってきているのである。

ブックレビュー 「若手コア社員像」(2)

2013年03月21日 00時00分01秒 | ブックレビュー

 (財)雇用振興協会は雇用促進住宅の管理運営をする法人であるが、財団法人の定款には通常の事業とは異なる、全額出資で行う本来事業であり、このことが財団法人たる所以である。雇用振興協会の設立の目的は、労働者の雇用促進に関する調査、研究、広報宣伝等を行うとともに、雇用促進事業団の行う業務に協力し、もって労働者の能力に適応する雇用の促進に寄与し、労働者の福祉の増進を図ることを目的とする。としており、昭和34年職業訓練振興会として発足し、昭和46年に雇用振興協会として改称し、現在に至っている。雇用の促進に寄与するため、景気情勢、社会風潮、雇用動向とその時宜に則した諸問題をとらえ、協会発足以来、継続して調査研究活動を行い、その結果を報告している。
 
 雇用振興協会と日本経営者団体連盟で平成9年2月に行った調査によれば、各企業は経営環境の変化への対応策として、次の諸点をあげている。もっとも多くの企業が指摘したのが「消費者・ユーザーニーズの把握と高付加価値商品やサービスの開発」次いで、「人件費負担の軽減、少数精鋭化」、「新規事業による多角化」、そして「21世紀に向けた技術革新」であった。こうした環境の中で、企業が認識しておかなければならない経営課題として3つの点をあげている。

ブックレビュー 「若手コア社員像」(1)

2013年03月20日 00時00分01秒 | ブックレビュー

 [我が国を取り巻く経済・経営環境は、急激な変化を遂げている。その変化を箇条書きすれば、①国際化における国境のない大競争の時代 ②情報通信革命の時代 ③大失業の時代 ④少子化・高齢化時代ということができる。企業経営に関する多くの事項が、こうしたものとの関連性で考えなければならなくなってきている。先進各国ともほぼ同様な状況下にあるが、加えて我が国は、1990年代初期のバブル経済の崩壊以降、低成長時代に入り、更に経済の成熟化の進展によって、企業は苦しい経営を強いられている。国内市場は飽和状態の中で、企業は鮮烈な競争の時代を迎え、他方、海外市場は為替相場が不安定なために、きわめて不透明な経営を余儀なくされている。更に、国が構造改革を進める中で、企業も種々の規制緩和が実施されてきている。業種や規模に関係なく、我が国企業はあらゆる面で国際基準(グローバルスタンダード)が求められている。]

 上記は、小生が手がけた「大競争時代の若手コア社員像」(1998年3月28日発行 経営書院)副題は「求められる人材と若手・中堅社員の人事処遇・教育・採用の新方向」の冒頭の一節である。

 発刊して既に15年が経過しているが、この標題は何時の時代にも求められる課題として、今、まさにTTP参加の有無が議論されている中、日頃あまり眼にしない項目でもあるため、急遽、ブックレビューとしてご紹介することにした。企業調査を実施し、その結果を分析し、詳細に報告している。また、代表的企業の事例紹介が行われている。
読者を特に限定はしていないが、企業等の人事担当者やこれから就職を目指す学生に対し、ご一読をお薦めしたい。人事面から、我が国の企業文化としての日本型経営の構造がよく理解できると思われる。

 参考:調査内容や研究委員会に参加された各企業の詳細な事例及び分析については誌面の関係 で割愛します。必要であればこの報告書が同名で経営書院から出版されています。古書となっ ているため、検索サイトからアクセスしてみてください。