ブログ「かわやん」

森羅万象気の向くままに。

日韓の言論状況を考える

2005年12月31日 20時53分42秒 | Weblog
大晦日に韓国ソウルの李仁哲先生から原稿をいただいた。さらに韓国聯合ニュースのワン記者からも原稿が送られてきた。いずれも今年5月から始まった「ジャーナリスト・ネット」の大晦日原稿である。

さて李先生の原稿は7月から検察が捜査してきたXファイル事件の捜査状況であった。1997年大統領選挙直前当時国情院の盗聴チームが不法に盗み聞きしたもので、盗聴チームの責任者が録音テープの一部をテレビメディアに提供、明るみに出た。その内容は全文が掲載された月刊『朝鮮』を読むことだが(筆者未見)、李先生はそこに生々しいやり取りが収録されているといわれる。韓国最大財閥である三星(サムソン)グループのナンバー2である構造調整本部長と、三星が創刊した日刊紙「中央日報」社長(事件が表面化したときは駐米韓国大使))が1997年大統領選挙でハンナラ党の李会昌(イ・フェチャン)候補に巨額の政治資金を隠密裡に提供した事実を示唆するやりとりが出ているのだそうだ。

三星といえば韓国が世界に誇る代表的企業である。巨額のお金のやり取りを会長が知らないはずはないということで、録音テープには証言がないが、疑惑が取りざたされた。その捜査結果が12月14日に出た。いずれも不起訴であった。

ところがである。事件を告発したテレビ記者と雑誌記者は非拘束ながら起訴されたというのである。市民グループで構成するXファイル共同対策委員会は「検察は財閥総帥にひざまずいた」と批判しているという。この詳しい事件内容は10月12日、捜査結果は12月31日の李先生の「いま韓国は」のネット記事を見てほしいが、どうも韓国ではいまも言論が苦難の道を歩んでいるようだ。

例の黄教授のニセ幹細胞事件でも事件を告発したテレビ番組が廃止に追い込まれ、黄教授の不正が明らかになる過程で復活の道が開けるなどこれも苦闘を思う(12月28日のPRESSIANで放送局内報が紹介された担当デレクターなどの6月1日から始めた取材が記録されている)。

ただ日本と違うのは曖昧さがないことだ。今年一番の言論の事件はNHK番組「問われる戦時性暴力」が、放送直前に政治家の介入がある変更された問題を告発した朝日新聞のその後だが、最も肝心な政治家の介入で番組が変更されたとする主張は変えていないが、自社の情報が外部に流出したということで幹部が引責辞任したりして、部外者には「一体どうなっているのか」とスッキリしないことだ。取材テープがあったかなかったかは、取材相手に了解をとっていないこともあり表に出ていない。それよりも魚住昭さんが月刊『現代』に書いた内容で十分に論及されている。なぜ情報流出の非を認めた朝日は後ろ向きになっているのか。判然としない。

相手は時の権力者2人に「げせわ」な言葉で言うならけんかを売ることだ。それだけに十分な準備をしないといけない。社を挙げてである。その点が決定的に不足していたのではないか。

とにかく韓国言論と違いスッキリしない。ある報道をめぐり記者が起訴されるなどの事態はないが、26日にきまった犯罪被害者等基本計画案で犯罪被害者の匿名、実名は警察の裁量だという。新聞協会などもマスコミ側の要望は一切とおらなかった現況を考えれば、徐々に言論は首を絞められてきているのが日本のマスコミではないのかという気がする。2006年は憲法改正問題が本格化する。いよいよ正念場ではないか。

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