あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

道浦母都子著「挽歌の華」を読んで

2024-09-07 09:07:11 | Weblog

 

照る日曇る日 第2104回

 

よく分からない題名だが、副題通りの「歌人探訪」記で、与謝野晶子、鉄幹から中城ふみ子、河野裕子、岡井隆、石牟礼道子、辺見じゅん、岸上大作、小高賢、佐藤佐太郎、山中智恵子などの有名歌人が次々に取り上げられ、その代表歌の鑑賞ととちもに、思い出話やこぼれ話が記されていて、歌よりむしろこちらのほうが読者の記憶に残る。

 

最後の最後に取り上げられたのは「未来」の創始者の一人、近藤芳美であるが、子供のなかった近藤夫妻から、生前何度も著者が養女にならないかと誘われていたとは知らなかった。

 

2首だけ紹介しておこうか。

 

 女にて生まざることも罪の如し秘かにものの種乾く季  富小路禎子

 

 取り落とし床に割れたる鶏卵を拭きつつなぜか湧く涙あり 道浦母都子

 

 著者が都はるみから詞を作ってほしいと頼まれた時、たった一つの条件が歌詞に「鶏卵」という単語を入れてほしいといわれたそうだが、考えてみれば著者も、都はるみも、富小路禎子も子どもがない女性なのだった。

 

午前午後誰も来ない官邸で深爪を切るキシダフミオ 蝶人

コメント
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