照る日曇る日 第2102回
ハンセン病の患者による詩集のコンピレーションである。この難病に罹った作家に北條民雄、歌人に明石海人がいることは知っていたが、これほど数多くの詩人が数多くの作品を作っていたとは迂闊にも知らなかった。
手がしなびてしまった時
まだ足があると思った
足が立てなくなった時
まだ目があるんだと思った
だがその目も
右は日曜になってしまい
左は半どんになってしまった (「流星」蜷川ひさ志)
もとより宿痾の難病が人生に与えたダメジについて触れ、呪う詩もあるけれど、それにとどまらず、絶望的な闘病を見据えることによって、どこかでその運命を超克しようとする果敢な試みをつぶさに知ることができた。
このまま
石のように
風雨や季節にも耐えることが出来たら、
私はやがて化石化し
鉱石のように地底に眠るのだ。
発掘されたら
いつでも
ピカピカに光りたい
そう思って懸命に
私は何物かを磨いている (「玉」宮崎しげる)
ゼフィルスの希少種のようには愛されぬ障害者と言われる人間の希少種 蝶人