照る日曇る日第958回

朝日新聞の論壇時評をメインに収録された前半よりも、若き日の著者の政治活動や女衒で食べていたころの衝撃的な体験を告白している後半部が圧倒的に面白い。
しかし安倍蚤糞などの極右の大人たちが教育の現場でやっきになって歴史の修正を押しつけようとしても、「生徒はなあにも真面目に聞いていないからダイジョウビ」と居直るのはいかがなものか。
もはやそういう知性や感性すら喪失した森友学園の児童のような純粋培養ファシスト予備軍が大量生産されるのではないだろうか。
それにしても本書で引用されている鶴見俊輔とその息子の会話は胸にずしんと迫ってくる。
岡真史の自殺に衝撃を受けた息子が「お父さん、自殺をしてもいいの?」と尋ねた時、俊輔は即答したという。
「してもいい。2つのときにだ。戦争にひきだされて敵を殺せと命令された場合、敵を殺したくなかったら、自殺したらいい。君は男だから、女を強姦したくなったら、その前に首をくくって死んだらいい」(原文は鶴見俊輔「教育再定義への試み」)
もうひとつ著者がギリシア由来の民主主義を考察する中で引用したソロンの言葉をメモしておこう。
「ソロンは国内にしばしば党争が起こるにもかかわらず市民の中には無関心から成り行きに委せるのを好む者のあるのを見て取り、かかる人々に対する独特の法を設け、国内に党争のあるとき両派のいずれかに与して武器を執ることのないものは市民たる名誉を喪失し、国政に与り得ぬこととした」(原文はアリストテレス「アテナイ人の国制」)
トランプに喧嘩を売るとはたいしたもんだ「感動パンツ」の柳井正 蝶人