bowyow megalomania theater vol.1
公平君と洋子と文枝と僕も、のぶいっちゃんを助けようと手に手に近くに転がっていた石ころや棒ぎれを持って、おまわりの頭や顔や手や足をてんでにぶん殴りました。
思いがけない逆襲に驚いたおまわりは、びっくり仰天、慌てふためいて逃げ出しました。あんまりあわてたからでしょう、峠のそま道の真ん中には、なにやらものものしい物体が残されていました。それは警官が持っていたピストルと銃弾ベルトでした。
「へええ、ピストルじゃないか。本物のピストルだ! すごいじゃん」
「へええ、これが赤塚不二夫の漫画に出てきたピストルかあ。前から一度こいつにさわってみたかったんだ」
と、のぶいっちゃんとひとはるちゃんは狂ったように喜びました。
「おいおい、ちょっと僕にも触らせてくれよ」
と公平君が頼んでも、のぶいっちゃんとひとはるちゃんは、ピストルとガンベルトを握りしめ、まるでカーク・ダグラスとバート・ランカスターになったように飛び跳ねています。
それから僕たちは、かわりばんこにずしりと重い拳銃をベルトに差したり、楢の木のてっぺに止まっていたフクロウに狙いを定めたりしながら、3時間もかけてようやく懐かしのわが家に辿りついたのでした。
今日はほんとうにくたびれました。
油蝉リュリュリュ晩夏流る 茫洋