③企業の取り組み――トヨタによる六ヶ所村の実証実験
昨日は、経済産業省が進める、
「次世代エネルギー・社会システム実証地域」の例をあげましたが、
スマートグリッドの取り組みは官主導のものだけではありません。
例えば、トヨタ自動車は、経産省のプロジェクトに先駆け、
2010年9月より、青森県上北郡六ヶ所村において、
日本風力開発、パナソニック電工、日立製作所と組み、
2年間を予定して、スマートグリッドの実証実験を行っています。
六ヶ所村スマートグリッドでは、電力を供給するのは、
二又風力発電所という日本最大の風力発電設備が中心です。
34基で51メガワットの発電能力があります。
私は、風力発電機を目の前で初めて見ました。
風車の高さは、確か100メートル近くあります。
迫力がありましたね。
それだけに、人家に近いところには建てられない、
風が豊富でなければいけないなど、立地に条件があり、
風力発電には限界があるように思いました。
これに、太陽光発電の100キロワットが加わります。
また、地域にはHUB蓄電池が設けられていて、余剰電量を蓄電します。
その現場も見ましたが、蓄電池システムはまだ高価で、
技術的にも発展途上の印象でした。
電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)用の
充電スタンドもあります。
電力を使う側は、スマートハウス6棟です。
シャープ製の太陽光発電パネル、デンソー製の「エコキュート」、
同じくデンソー製の住宅用蓄電池、トヨタ製のPHVが備えられ、
電力を“見える化”する、PC-HEMS/HEMSモニタがあります。
もう、“見える化”あたりのきめ細かいデータの収集・分析などの対応力は、
日本企業の得意のところといっていいでしょう。
さて、この実証実験で面白いと思ったのは、
実際に、日本風力開発、パナソニック、
トヨタの社員とその家族が生活していることです。
夫婦2人暮らし、実験担当者1人暮らし、夫婦2人に子1人、
夫婦2人に子2人など、さまざまな家族構成です。
一年を通して、人が生活することによって得られた、
時間ごとの電力需要量の変化など、詳細なデータは、
今後のスマートグリッドの研究、開発に
大いに役立つことは、容易に想像できました。
トヨタにとっては“宝の山”でしょう。
ちなみに、電力の供給側と需要側、つまり、
電力供給事業者と、住宅、車、それらを使う人をつなぎ、
需給調整するのが、コンピュータ上に設けられた
トヨタのスマートセンターです。
エネルギー消費を統合的にコントロールする、
トヨタの独自システムです。
蓄電池の電力を使うのか、もしくは、貯めるのかなどを判断し、
電力を賢く管理・調節するというわけです。
一見、スマートグリッドは、
まだまだ先のことのように思われていましたが、
そうか、ここまで実証実験が行われているのか……と、
あらためて感じました。
前述したと思いますが、福島の原発事故後、
節電が呼び掛けられている折から、
スマートグリッドは一気に進むだろうと実感させられた次第です。
それから、スマートシティの構想では、
EV、PHVが大きな役割を果たすだろうということもよくわかりました。
つまり、スマートグリッドやスマートシティの構想は、
自動車メーカーにとっても、
大きな飛躍のチャンスであることは、間違いありません。