片山修のずだぶくろ Ⅰ

経済ジャーナリスト 片山修のオフィシャルブログ。2009年5月~2014年6月

スマートグリッドは日本を救うか③

2011-11-24 19:10:18 | 社会・経済

③企業の取り組み――トヨタによる六ヶ所村の実証実験

昨日は、経済産業省が進める、
「次世代エネルギー・社会システム実証地域」の例をあげましたが、
スマートグリッドの取り組みは官主導のものだけではありません。
例えば、
トヨタ自動車は、経産省のプロジェクトに先駆け、
2010年9月より、青森県上北郡
六ヶ所村において、
日本風力開発、パナソニック電工、日立製作所と組み、
2年間を予定して、
スマートグリッドの実証実験を行っています。

六ヶ所村スマートグリッドでは、電力を供給するのは、
二又風力発電所という
日本最大の風力発電設備が中心です。
34基で51メガワットの発電能力があります。
私は、
風力発電機を目の前で初めて見ました。
風車の高さは、
確か100メートル近くあります。
迫力がありましたね。
それだけに、人家に近いところには建てられない、
風が豊富でなければいけないなど、
立地に条件があり、
風力発電には限界があるように思いました。
これに、
太陽光発電の100キロワットが加わります。

また、地域には
HUB蓄電池が設けられていて、余剰電量を蓄電します。
その現場も見ましたが、蓄電池システムはまだ高価で、
技術的にも発展途上
の印象でした。
電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)用の
充電スタンドもあります。

電力を使う側は、
スマートハウス6棟です。
シャープ製の
太陽光発電パネル、デンソー製の「エコキュート」
同じくデンソー製の
住宅用蓄電池、トヨタ製のPHVが備えられ、
電力を
“見える化”する、PC-HEMS/HEMSモニタがあります。
もう、“見える化”あたりの
きめ細かいデータの収集・分析などの対応力は、
日本企業の得意のところといっていいでしょう。

さて、この実証実験で
面白いと思ったのは、
実際に、日本風力開発、パナソニック、
トヨタの社員とその家族が生活
していることです。
夫婦2人暮らし、実験担当者1人暮らし、夫婦2人に子1人、
夫婦2人に子2人など、
さまざまな家族構成です。
一年を通して、人が生活することによって得られた、
時間ごとの電力需要量の変化など、
詳細なデータは、
今後のスマートグリッドの研究、開発に

大いに役立つことは、容易に想像できました。
トヨタにとっては“宝の山”でしょう。


ちなみに、電力の供給側と需要側、つまり、
電力供給事業者と、住宅、車、それらを使う人をつなぎ、

需給調整するのが、コンピュータ上に設けられた
トヨタのスマートセンターです。
エネルギー消費を統合的にコントロールする、
トヨタの
独自システムです。
蓄電池の電力を使うのか、もしくは、貯めるのかなどを判断し、

電力を賢く管理・調節するというわけです。

一見、
スマートグリッドは、
まだまだ先のこと
のように思われていましたが、
そうか、
ここまで実証実験が行われているのか……と、
あらためて感じました。
前述したと思いますが、福島の原発事故後、

節電が呼び掛けられている折から、
スマートグリッドは一気に進むだろうと実感させられた次第です。
それから、スマートシティの構想では、

EV、PHVが大きな役割を果たすだろうということもよくわかりました。
つまり、
スマートグリッドやスマートシティの構想は、
自動車メーカーにとっても、
大きな飛躍のチャンス
であることは、間違いありません。