片山修のずだぶくろ Ⅰ

経済ジャーナリスト 片山修のオフィシャルブログ。2009年5月~2014年6月

もはや“石にもかじりつけない”と、トヨタ

2011-11-18 18:41:50 | 自動車関連

今日の日本経済新聞によると、
どうやら今年度の
新車販売台数のランキングで、トヨタ自動車は、
1位から、米GM、そして
独フォルクスワーゲンに抜かれて
3位になるようです。
誰かではありませんが、まあ、
1位である必要はありません。
震災とタイの洪水が影響しているといいますが、
「歴史的円高」も見逃せません。

論より証拠、トヨタ自動車は、
米ミシシッピ州で、新車両工場を稼働させした。
生産するのは、北米向け小型車
「カローラ」です。
「カローラ」といえば、
トヨタの看板ともいえる、世界戦略車です。
私は、2002年に
『トヨタはいかにして「最強の車」をつくったか』(小学館)
を上梓し、「カローラ」に携わったトヨタの関係者、
20人以上にあって、話を聞きました。
「カローラ」は、1966年に愛知県の高岡に量産工場がつくられて以来、
世界中で生産、販売され、「世界でもっとも売れた車」となり、
日本の高度経済成長を支えました。

現状も、日本に加え、カナダ、ブラジル、ベネズエラ、南アフリカ共和国、
台湾、インド、パキスタンタイ、ベトナムなどで生産していますが、
米国では、09年にGMとの合弁解消以来、つくられていませんでした。
米国向けカローラは、日本から輸出していたのです。

つまり、今回のミシシッピ工場稼働は、
日本からの輸出をやめ、
北米の“地産地消”に切り替えるということです。
トヨタに限らず、自動車メーカーは
生産の現地化を進めています。
為替が
1ドル70円台の、歴史的円高で、先が見えません。
これは、自動車メーカーにしてみれば、
とにかく、
車体に一万円札をペタペタ貼り付けて、
米国に輸出している
ようなものです。
たまったものではありません。

トヨタの豊田章男社長は、“
石にかじりついてでも、
国内300万台の生産態勢を維持する”といってきましたが、
もはや
“石にかじりつけない”状態だということでしょう。

自動車だけでなく、家電製品などの
“地産地消”の流れには、
ストップはかけられないでしょう。つまり、
産業の空洞化です。
企業経営の視点から見れば、その方が経済合理性に適っているからです。
生産を海外に移しても、
コアとなる技術については、
開発本拠を日本に残すなど、日本が儲かる別の仕組み、
すなわち新しいビジネスモデルの創造が求められるわけです。