16期の桶 哲治です。
大井町の「きゅりあん」で11月28日に開催されたQCサークル京浜地区改善事例大会に行ってきました。ご存じでしょうが、QCサークルとは小集団活動ともいい、品質向上や改善活動を従業員が自ら行う活動のことです。メーカー経験が長い人であれば多くの工場でこの活動を行っていたことを覚えているのではないかと思います。高度成長期の1980年代は、この活動が活発で日本の製造業の品質向上と改善活動、人材育成を支えていたと言っても良いのではないかと思います。しかし近年活動が低迷しており、その理由は、活動が発表のための活動になっているところや、長い間活動しているとマンネリとなってしまったためのようです。本来、作業者が自ら考え、実行し、そして発表することで作業員自身が成長し、チームも成長することも目的の一つとしていましたが、最近見直しつつ有りますが、人材育成が置き去りになっていたようです。
ところで、この大会での特別講演は、私にとって非常に興味深いものでした。「事実に基づく管理のすすめ~プロ野球チーム満足度調査から学ぶ~」ということで慶応大学理工学部教授、鈴木秀男先生の講演を聞きました。先日、東京診断士協会の主催で北海道日本ハムファイターズの講演を聞いたばかりですが、またプロ野球関連のお話です。
講演内容ですが、QCサークル大会参加者に参考となるべく「事実に基づく管理」について、常に事実やデータに基づく客観的な判断と行動を行うべきであるとの内容でした。さらに「モノの品質」だけでなく「コト(サービス)の品質」と対象にする機会が増えておりその領域でも「事実に基づく管理」の実践が求められているとのことです。
先生が9年間実施されているプロ野球チームの顧客満足度調査の事例を通してサービス品質や顧客満足度の数値化、満足度向上のための要因解析などについてお話されました。
事実に基づく管理の例として、メジャーリーグで実施している「セイバーメトリクス」が有ります。野球におけるさまざまなプレー価値を数値化し、戦術に活かすことや、選手の評価査定にも使われています。また、最近は、ビッグデータが話題となっており、統計学の関連本がベストセラーになり、深層学習(Deep Learning)も話題で、データの活用がかなり注目されています。情報技術の進化により大量のデータが取得でき、それらを活用して価値ある情報(ビジネスではお金にになる情報)を抽出し、アクションにつなげていきたいといことです。つまりビッグデータ、データ・サイエンスの活用は「事実に基づく管理」を行うことになります。
プロ野球チームの顧客満足度調査においては、ACSI(American Customer Satisfaction Index)の顧客満足度指標モデルを考慮し、プロ野球チームのサービスに特化した指数モデルを構築されて2009年から9年間調査され現在も継続中です。継続することでデータの信頼性があがり、価値も増加し、時系列で観察することが大切であるとのことです。
満足度スコアの1位は広島、2位はソフトバンク、3位は日本ハムで、特に広島が大きく伸ばしています。ファンの数が多い巨人は9位です。これは巨人ファンの期待値が高いためと考えられます。満足度=実績値―期待値となり期待が大きすぎるとマイナスになってしまいます。巨人ファンは優勝しないと満足しないということでしょう。満足度最下位12位は中日で、最近の落ち込みはひどく、横浜が身売りしたときと同じ状況とのことです。
これらの説明を、具体的な数字をもとに聞くと、一般の人も納得する満足度の順位ではないかと思いました。この満足度の数字を上げるべく各球団が努力することでファン獲得に繋がるものと考えられます。一般のビジネスでも出来る限り数値データに基づく考察、アクションがますます重要になると思われます。プロ野球は広いファン層を持ち、社会的にも影響力があるので「事実に基づく管理」の重要性、サービスの満足度の数値化の有効性を知ってもらうには良い事例と考えられるとしています。プロ野球に全く関心の無い人には分かり難いかも知れませんが、鈴木先生のホームページを一度のぞいてみては如何でしょうか。
http://www.ae.keio.ac.jp/~hsuzuki/baseball0901/
ACSIの日本版JCSIも有りますので興味のある方はこちらもご覧ください。このデータをもとにディズニーランドやマクドナルドの評価を行っている先生もいらっしゃいますので参考まで。
JCSI:http://www.service-js.jp/modules/con