こんにちは、24期生の金子政弘です。
今回は「失敗の本質」(中央公論新社)について書きます。
書店で「失敗の本質」に今年1月に亡くなられた野中郁次郎先生のあとがきが追加された文庫版が販売されていたので購入して再度読み直しました。
出版から40年後、共著者の一人である野中先生があとがきで読者にどんなメッセージを残したかったのか知りたかったためです。追加されたあとがきは2024年11月に書かれたものです。
表紙にファーストリテイリング柳井会長兼社長のコメントがあり、インパクトがあるので再び手に取る読者も多いのではないかと思います。
野中先生はSECIモデルを考案された先生の一人です。
あとがきには、日本軍の自己革新力を奪った組織的特性が戦後も日本社会の組織に連続しているのではないか、と問題提起されていました。
今回追加されたあとがきから引用すると
「動く現実のただ中で何が本質なのかを直観する。
他者との共感を媒介に、忖度抜きに知的コンバットを行い本質を錬磨する。あらゆる知見を綜合し、未来の共通善に向かって自在に集合知を創造する。
共感した人々がスクラムを組み、試行錯誤しつつ機動的に実践し、やり抜く。
無限の努力をレジリエントに続けるという実践知のリーダーシップを日々発揮できているか、読者に問い続けたい」とあります。
出版から40年経っても日本の組織は、まだ進化していないと思われているようでした。
「失敗の本質」は大東亜戦争における6つの戦い(ノモンハン事件、ミッドウエー海戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦、沖縄戦)を通じて日本軍の組織特性を描いた本です。
不確実な時代を生きていくには前例のないイノベーションを起こすような議論やリーダーの出現が必要なことを共著者全員が40年前に訴えていました。出版の動機はなぜ日本軍は失敗したのか、組織の考え方や組織文化を分析することで、日本のあらゆる組織に日本軍の失敗を教訓にして役立ててほしいとの願いが込められています。そして40年経過した今なお、日本軍の失敗が企業の組織論に教訓として生かせていないのではないかとの結論です。
読者によって感じる点は違うと思いますが、リーダーシップについて気づきが多くありました。
本に書いてある教訓で私の印象に残った点を箇条書きにしますと以下のようになりました。
・自己革新能力をもち、新たな環境変化に対応する。
・戦略的なグランドデザインをもつ。短期的な視野ではなく、長期的な視野をもって戦略を立てる。
・過去の失敗を冷静に分析することで、同じ失敗を繰り返さない。失敗を次に活かすことが大事である。
・作戦の過ちを犯したリーダーに対し、甘い処分をしない。組織としてけじめをつける。
・過去の成功体験をいつまでも引きずらない。
時代は刻々と変化しているので古い成功体験は学習棄却する。
・組織は優秀な若手リーダーを積極的に登用する。リーダーは世代交代を進め、いつまでもポストにしがみつかない。
・リーダーは部下と常日頃から自由闊達なコミュニケーションを行い、部下の意見にも耳を傾ける。
・異なる領域のメンバーでチームを作り「本質は何か」真剣に議論して一つの方向性を見つけだす。
・リーダーは学閥による人選ではなく、あくまで実力主義で選ぶ。
・戦争は情報が勝敗を決める。情報を正確に掴むことで作戦を効果的に進める。
(日本軍は敵の情報収集をあまり重視していなかった。)
・技術的に未熟な人が使える武器を大量に作れるほうがよい。属人化した武器は要らない。
・作戦の内容を現場の各リーダーを通じて組織内で理解できるように情報共有する。
・陸海空軍の作戦を統合して一つの方向にベクトルを合わせないと総合力を発揮して勝てない。
一人のリーダーの指示を徹底して全体が同じ方向に動けることが望ましい。
・コンティンジェンシープラン(事故や災害など非常事態が発生した場合に備えて、対応策をまとめた計画)を常に用意する。日本軍にはなかった。
・日本軍は精神力を過度に重視して、科学的な検討に欠けるところが敗因になった。
精神論だけでは戦いに勝てない。現実を冷静に見ることが大切である。
・作戦本部が現地の実戦部隊のリーダーの意見を逐次聞いて適切な判断ができなかったことで現場の信頼を無くして現場のリーダーが勝手な行動を始めたため、統率できなくなった。
・米軍は戦争で現地に赴任して戦っている時も兵士に定期的な休暇を与えてリフレッシュさせていた。どんな困難な状況の時も休みを定期的にとり、オンとオフを切り替えて心と体をリフレッシュすることが仕事の成果を出すうえで重要である。
内容は日本軍における組織特有の考え方について書かれていますが、主に戦争の主役は陣頭指揮した現場のリーダーがどういう考え方を持っていたのかに焦点が当たっています。
組織はリーダー次第で変わることがよくわかり、リーダーの考え方が大事であることが窺えます。
日本軍は6つの戦争を通じて失敗を教訓に生かすことがほとんどできなかったことがわかります。
この本に描かれている日本陸軍と海軍の組織文化は、今の日本企業でも、よくある悪しき企業文化を感じて、古臭さが全くありません。
あとがきを含め改めて読んでみて、失敗から得られた教訓を次に活かすことがいかに重要であるか、理解しました。また本質を磨き上げるためには多様な考え方をもった人達による遠慮ない議論が必要なことを学びました。
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