はやしんばんぱくの、めげてめけめけ、言論の不自由ブログ

全国各地へ飛び回り、めげてめけめけめげまくり、色々書いていましたが、ブログ終わりました。過去を読めばいい!サラバじゃ~!

『らーめん放浪記』麺19 本目。

2009年03月28日 17時44分23秒 | 連載書き物シリーズ
『らーめん放浪記』

〈1-(18)・沖縄〉


吾輩は猫である。
名前は『カエダマ』
どこで生まれたかとんと検討がつかぬが
何でも薄暗いじめじめしたらーめん屋台の裏でニャーニャー鳴いていたことだけは記憶している。

吾輩はここではじめて人間というものを見た。
吾輩とそっくりな“猫顔”の兄ちゃんで
飢えてた吾輩にらーめんを恵んでくれた。
腹ペコ故にペロリたいらげる。
食い足りぬ。
ひと鳴きしてみよう。
「ニャーッ!」
兄ちゃんおかわりをくれた。
再びペロリ。
「ニャーッ!」
おかわりくれた。
ペロリ。
「ニャーッ!」
くれた。
繰り返しているうちにいつの間にやら吾輩は
『カエダマ』と呼ばれる様になり
“猫顔”兄ちゃんのパートナーとなっていた。

“猫顔”兄ちゃんの名前は『猫田麺吉』
『猫田しゃん』と呼んでいる。
吾輩がニャーニャー鳴いていた、らーめん屋台『黒猫』の店主である。
吾輩は“沖縄”っちゅうトコの“西表島”っちゅう島で猫田しゃんと出会い
そこから人間時間で数年程を屋台『黒猫』と共に転々と過ごしてきた。
猫田しゃん曰く“準備の旅”だそうだ。

その間猫田しゃんはハードスケジュール。
昼間は『らーめん放浪記』っちゅう“レシピ”を書き
それに基づき“罠”を仕掛け
上質な“材料”を集め
次々“料理”を完成させてゆく。
合間にまた次のレシピの準備をと日々それの繰り返し。
猫田しゃんは究極何をしようとしているのか
真の目的、狙いは何なのか
そこらへん正直付き合いの浅い吾輩には計り知れない。
が、猫田しゃんが吾輩に寄せる信頼のあつさと
『黒猫』らーめんの感動的美味さは
神の領域に値するだろう。

猫田しゃんには壮大な夢があるようだ。
夢を実現させる事が宿命らしい。
その夢を吾輩は知らない。
具体的に語ってくれるまでには
まだも少し時間が必要なのだろう。
いや。
時間の問題ではない。
吾輩の修行が足りんのだなこりゃ。
吾輩よ!日々精進すべし!
気合いを込めて

「ニャーッ!」

「お、カエダマ。
もうそんな時間か。
じゃ、今日もいつものお使い頼もうかな」
ガッテン承知の助!
リュックを背負い、いつもの“店”までお使いに出掛ける。

そろそろ夕暮れ時だ。
まだまだ人は疎らだが
お日様が沈むのと同時に那覇の街は活気に満ち溢れ出す。
そうなる頃には『黒猫』も大賑わいだ。
血に飢えたゾンビどもが
らーめん求めてワラワラと集まりだす。
屋台『黒猫』はここに来て大繁盛。
そりゃそうだ。
上質の獲物が上手い事罠にはまり
極上の材料が次々と手に入り出しているもんな。
猫田しゃんのレシピによると
今後益々『黒猫』らーめんの美味さは増してゆくだろうとのコト。
さてさて、お使いだ。
先を急ごう。

「ニャーッ!」

公園を横切り路地裏を抜け
民家をすり抜けシーサーを蹴り倒し
木によじ登り枝を揺らし
桜を散らして飛び降り進む。
坂を上って上って
ブタ?
ブタが道に溢れとる?
一体どうした?
ナニナニ?
人間なんかに食われてたまるかブヒ?
“ブタ神様”が我らを解き放ってくれたブヒ?
我らの“ブタ神様”?
なんのこっちゃ分からんが良い心がけだ。
人間に食われる前に人間を食っちまえば良い。
おっと、先を急ごう。

「ニャーッ!」

到着。
ここは『ヤンバル病院』という“店名”の“肉屋さん”だ。
早速店内へ。
お~い。
おっちゃ~ん。
お使いに来たよ~。
いつもの肉くれ~。

「ニャーッ!」

おや?
今日はヤケに静かだな。
いつも出迎えてくれるおばちゃんもいない。
仕方ない。
寒くて痛いからあんまし入りたくないのだが
“貯蔵庫”に下るとするか。
廊下をツルツル滑りながら進み
階段をピョンピョン2段飛ばしで駆け下りて
扉をグイグイ引き開ける。
う~寒っ。
真っ白い部屋を進みもう1つの重たくてなかなか開かない嫌いな扉を…
はて?
開いとるわ。
こりゃ好都合。
お~い、おっちゃ~ん。
お肉く~ださ~いな。

“「ギャーーーーーーッ!!!」”

「ニャッ!?」
うるさいなぁ、どうした?
何事?
女の子が今日仕入れる商品“ムネ彦・頭部”を前に
プルプル震えて立ち尽くしとる?
貯蔵庫内のこの寒さだ
そりゃ震えるのも無理はない。
それにまぁ、いくら冷凍保存で原形を留めていても
人間の頭部のみがドガッと置いてあったら
グロいっちゃグロい
ギャーッのひとつも叫んじまうわな。
それにしてもまぁいつ来てもここは気味悪いわ。
人間の“肉”がわんさか並んどるからな。
ズラリ取り揃えて迫力はあるけども
こうも“人肉”が積んである世界っちゅうんも
猫である吾輩でさえ寒気が止まらんわ。
実際ここ寒いけどな。
品揃えが良いっちゅうのは喜ばしい事だが。

「…ムネムネムネムネ…」
女の子が何か言っとるわ。
何?
「…ムネムネ…ひっ!…彦…さん…」
ムネムネひっ彦さん?
おぉ、白目むいて倒れる?お、片足で踏み留まった。
キッと
“ムネ彦・頭部”を見据えて、今度ははっきりと
「ムネ彦さん」
あぁ、どこかで見かけた事ある娘だなぁ思ったら
『黒猫』向かいの店
ソーキそば屋『ガジュマル』の娘さんではないか。
おいおい娘さん。
吾輩だ、よく鰹節貰ったカエダマだよ。
お~い。

「ニャーッ!」

無視かい。
忘れたんか。
んな訳なかろう。
あんた吾輩を可愛がってくれてたがな。
あんたんトコのおやっさんは恐ろしかったケドな。
“肉”になっちゃったケド。
「!?…ギュウ…太郎…?」
ほう、この“新生児”は『ギュウ太郎』というのか。
成る程。
その“ムネ彦・頭部”があんたの旦那で
この“新生児”があんたの子供って訳かい。
どちらも“肉”になってしもて
哀れよのぅ。
心中お察し申…
お、ちょちょちょい。
娘さん、へたりこんでしまいよったがな。
ありゃりゃ。

「ようこそ、ベ子さん!
“ヤンバル肉市場”へ!」
あっ。
陽罵琉のおっちゃんだ。
こりゃなんだ?
トン吉しゃん、チン平しゃん、カン太しゃん勢揃いとキタではないか。
また珍しい。
しかもあんな高い窓からマイク使って話しちゃって。
ベタベタの“悪”って感じでカッコイイぞ。
お~い、お~い。
おっち~ゃん。
陽罵琉のおっちゃん達~。
毎度のお使いに来たよ~。
“肉”おくれよぉ~。

「ニャーッ!」

「よくここまで辿り着いたよねぇ~。
鼻の利いた良い娘だコト。
ハッハッ!」
無視かい。
「そうだよ。
そこに“ある”のは君のフィアンセ『ムネ彦』君と
可愛いベイビー『ギュウ太郎』ちゃんさ。
懐かしいだろ?
頬擦りしちゃえば~。
ハッハッ」
お~い。
トン吉しゃんてば~。

「ニャーッ!」

「…あゎ…あゎ…」
「何だい?
完全に放心状態か~い?
おや?失禁しちゃった?
いいよいいよ、全然オ~ケ~。
放尿大歓迎!
“ヤンバル肉市場”をどうぞトイレにも使って下さ~い!
ここは君の“トイレ”でもあり
そして“墓場”でもあるんだから。
ハッハッ」
無視しっぱなしだな。
無視っちゅうか気づかれてない?
「なかなか若い女子の放尿なんて見れないからね。
嬉しいな~。
興奮してきちゃったぞ~。
よし。
放尿のお礼と言っちゃなんだが君にプレゼントをあげちゃおう!
カン太、良い娘なベ子さんに“例の物”差し上げちゃって~。
ハッハッ」
「ほいさ~」
お?プレゼント?
おっちゃんら気前良いな。
何だろな。
“ぽ~い”ってカン太しゃんが投げ入れて

“かつんびちゃぐちゃ”

おっほぉ~う。
『ガジュマル』のおやっさんの首上頭部じゃないかい。
「!!!!!!!!!?」
「頭にリボン付けてあげたらさ~
ハチマキみたいになっちゃたさ~。
あははは!」
「ぎっっっ!」
わ?わわわぁお。
娘さん立ち上がりよったわ。
スクッと無機質コンクリの床にしっかり両足で根を張って
生気に満ち満ちた鋭い目線の刃をおっちゃん達に向けて
しっかり立ち上がりよったわ。
凄いわ。普通じゃ考えられんわ。
こんなむごたらしい状況目の当たりにし良く立ち直れるわ。
「ぶっ殺す…」
「はぁ?」
「ぶっ殺すさぁーーーっ!!!」
「“ぶっ殺す”はこっちの台詞じゃーーーっ!!!
チン平!」
「おう!お前ら、小娘取り押さえろっ!」
何だかゾロゾロ兄ちゃんらが出て来たぞい。
「がぁっ!」

“ブシッ!”

おっ。娘さんの拳がクリーンヒット。
結構やるねぇ。

“ゴボッ!”

今度は兄ちゃんAの木刀の先端が娘さんの溝内をえぐる様にヒット。
「!?ゲボッ!」
ありゃま。
娘さんゲボ吐いて膝をつき兄ちゃんB.C.D.Eらに
寄ってたかって羽交い締めにされちゃった。
「離せーッ!」
「ハッハッ!
おとなしくしちゃいな。
さぁてベ子さん。
自分どう料理してもらいたい?」
「うっせぇっ!キモいさ糞ハゲデブオヤジッ!
てめえのケツでもなめていなっ!」

“ズボッ!”

またまた木刀。
「ぬぐっ!」
「チッ。もういいや。
何でも良いから殺しちゃって~。
ハッハッ」
南無阿弥陀仏。
娘さんもご臨終かいな。
残念、無念、しょうがねん。
これもまた定めなり。
供養のひと鳴き。

「ニャーッ!」

「その殺し!待ったっ!」
なぬ?
「ぎゃはっ!
スクープいただきっ!」
“パシャッパシャッ”
うわっまぶしい。
目眩ましか?
「全て見させてもらったわっ!」
「何だぁ?」
何だ?
「あんたらの腐った悪行を
バッサバッサと切りまくり
バッサバッサと暴きまくる!
『スポコン』新聞記者!
都会のハイエナ白烏の顔を忘れたとは言わせないわよ!
ぎゃはっ!」

何だか凄いの登場だなぁ、おい。
「ちっ、糞新聞記者め」
「ついでに刑事もいっしょよ!みたいなっ!」
「え、あ、警察だぁ!」
ほほぅ。
へっぴり腰な警察まで来よったか。
「さぁ、その娘を離しなさい!
ダーリン行きなさいよ!」
「ご、ごめんなさ~い!」
刑事、何故謝る?
お、刑事がお兄ちゃん達に突進?
「うわぁ!」

“ズデーン”

コケよった。
あ、吾輩のお使い品“ムネ彦・頭部”でコケよった。
あ~あ、何てこっちゃ。
せっかくの上物に傷が付いたらどうしてくれんだい。
「ひっ?これ…ム、ムネ彦兄さん!?ぽぽぽっ!
ムネ!はうっ!」
ありゃ?
“ムネ彦・頭部”見て気絶してもうたわ。
何故?
「ぎゃはっ…役立たず。
仕方ない、アタシが行くしかなさそうね。
覚悟しなさい、アタシはね、こう見えて…
!?」
「こう見えて何なの?新聞記者さん。
ハッハッ」
あちゃ~、知らぬ間に凄いおばちゃん
お兄ちゃんFに背後を取られ後頭部にライフル突き付けられちゃった。
「ウケる…」
「なかなかの材料が揃ったんじゃな~い?
さて、解体ショーの始まりといきましょか!
ハッハッ」

“ドド…”

「ん?何だ?」
わっ。地震かい?

“ドドド…”

地響きが

“ドドドド…”

近づいて来よる?

“ドガーン!”
「ソワカーーーッ!」

何だ何だ?
パンツ1丁の汚い兄さんとブタ軍団?
「鉛筆銀!」
「キチガイ!」
「ぎゃはっ!ゆたか君!」
お。こりゃ『黒猫』常連客の医者兄さん。
「ウケる!
ジーザス・クライスト・スーパースター!」
成る程。“ブタ神様”
「ひゃっほーっ!
人殺し!人殺し!お前ら皆人殺し!
人殺しはいらない!いらない!
いらないソワカーッ!
ブタどもよ!人殺しを喰い尽くせ!」
“ブッヒヒーッ!”
ありゃりゃこりゃりゃ。
あちこちブタらが“肉”を食い散らかしとるわ。
「ざまぁみろソワカッ!」
「痛っ!やめろ!」
「鉛筆銀、きさま!」
“バキュバキューン”
わぁ。ハチャメチャになってきよった。
とりあえず“ムネ彦・頭部”をリュックに入れて
どさくさ紛れに退散だ。

「ニャーッ!」

『黒猫』戻れど日は暮れて
「遅い!」
と猫田しゃんに叱られる吾輩。
出直すつもりで顔洗うと

“ザァーーー”

雨が降り出した…

♪パララ~ララ
パラララララ~~~♪

街に夜鳴きの音(ね)が響く。

めけめけ~。

『らーめん放浪記』つづく。

この物語はフィクションです。

写真。ニャーッ!。