はやしんばんぱくの、めげてめけめけ、言論の不自由ブログ

全国各地へ飛び回り、めげてめけめけめげまくり、色々書いていましたが、ブログ終わりました。過去を読めばいい!サラバじゃ~!

『らーめん放浪記』麺16 本目。

2009年03月07日 13時21分42秒 | 連載書き物シリーズ
『らーめん放浪記』

〈1-(15)・沖縄〉


ウシ男臨終。
それと同時刻。

ベ子はICU(集中治療室)で意識を取り戻した。
「!」
大汗。
どうやら相当うなされていたようだ。

捨て身で取った急性アルコール中毒になったるで行動による昏睡状態のさなか
ベ子は奇妙な夢を見た。
ベ子の視点で進む奇妙な夢。
夢の中でもアルコールが回っているのか
視界がまるでペロリンキャンディーの様に
ぐるぐる渦を巻いていた。

それもそのはず
夢の様に…
まあ“夢”なのだが
そう夢の様にきらびやかで
幻の様に…
う~ん、“幻”なのだが
幻の様に豪華で
お城みたいにキュートな『メリーゴーランド』に
家族みんなで乗っている夢だったからだ。

馬車の白馬にまたがる夫、『ムネ彦』。
その後ろ、王冠型の車体部分にベ子と“息子”の『ギュウ太郎』。
そしてその馬車を追うような形で
後方の白馬に父、ウシ男。
ぐるぐる回る『メリーゴーランド』。
とても、とても楽しい!

ウシ男の馬がベ子達を追っているのか
はたまたベ子達がウシ男の馬を追っているのか
まるで分からないくらいのスピードで回る『メリーゴーランド』。

ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる
ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる

目が回る。
でも
楽しい!
嬉しい!
皆で一緒に遊園地。
ベ子が夢見ていた世界だ。
何度も言うが、“夢”なのだが。

息子の『ギュウ太郎』も
「キャッキャキャッキャ」とはしゃいで
かなり興奮気味。
しかし顔は定かでない。
モヤモヤとモザイクがかった顔の『ギュウ太郎』。

「あはは!こっちこいよ~!」
と、いつの間にか王子様の格好になっている『ムネ彦』。
「丘の上の王子様!」
まるで『キャンディー♡キャンディー』気分で
白馬にまたがる王子『ムネ彦』に手を伸ばす。

瞬間!

回る『メリーゴーランド』の遠心力で
緩んだ手からモザイク『ギュウ太郎』がすっぽ抜け
馬車から投げ出されてしまった!
「!?ギュウ太郎!?」
すると天井から毛むくじゃらの巨大な手が“ニュッ”と伸び出てきて
モザイク『ギュウ太郎』をむんずとキャッチし
どこかへ連れ去って行ってしまう!
まるで『UFOキャッチャー・クレーンゲーム』の様!
「ギュウ太郎!!!」
次に『丘の上の王子様』…
いや、『ムネ彦』が“毛むくじゃら”に捕らえられ
「キャンディ~!」
連れさらわれた!

「何!何なの!何なのコレ!?」
「ベ子!とっちゃんが敵を取ってきてやるさ~!」
「え!?やだ!とっちゃん!行かないで!
とっちゃんまで行っちゃったらウチ…」
「とりゃーーー!」
馬から軽快にジャンプするウシ男!

“ガシッリ”

あっけなく“毛むくじゃら”に捕まり持って行かれる。
「とっちゃ~~~ん!」

ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる

回る『メリーゴーランド』……が……
「えええええ!!?」
いつの間にか回る『回転寿司』に変わっていた!
“白い皿”の上に乗せられて
ぐるぐる回るベ子。
壁には
“本日のおすすめ。『ムネ彦』『ギュウ太郎』『ウシ男』”
と張り紙がなされ
見上げると頭上に巨大な猫が!

「もぐもぐガリッボリボリッ。
大将!さすが本日のおすすめはネタが新鮮でうまいニャー」
いつの間にか出来たカウンターの向こうで陽罵琉院長が
「へい!上物でっせ!」
「ニャニャニャ!満足ニャ!」
猫はペロリと舌なめずりし
ベ子をギョロリ見つめて
「次はベ子!お前だーーー!ニャーーーーーーーー!!!」

「!」
そこで目覚めた。
嗚咽がこみ上げる。


同『ヤンバル病院』の
これまたベ子が目覚めたICU(集中治療室)隣の病室で
『みたらし組』が経営する『島んちゅぬ湯』のサウナにて
脱水症状で倒れた犬山源五郎(いぬやま げんごろう)警視が点滴を打っていた。
1滴1滴落ちる点滴を見つめ犬山は思う。
あのサウナ室での会話を。

沖縄ヤクザ『みたらし組』の存在は当然知っていた。
広島の粉物会系指定暴力団『お好み組』系列で
那覇を拠点に沖縄全土に勢力を拡大しようとしている団体だ。
“暴力”というよりは
どちらかというと“インテリヤクザ”的な部分が目立つ組織と記憶している。
“表と裏”“光と闇”があるのがその筋の世界。
しかしそれと
ワシが今いる『ヤンバル病院』と
あの『屋台』とが繋がっている?
『陽罵琉』?『3兄弟』?
なんらかの形で死亡した遺体を
病院から『みたらし組』に流し
どこかを経由して販売している?
何故、何故そんな悪趣味な。
しかし需要があるからなりたっているのだろう。
『屋台・黒猫』?
だとしたらどいつもこいつも“死体”を食って喜んでいるっちゅう事か?
そんな狂った話…
そんな“小説”の様な話…
フィクションならまだしも
ノンフィクションで
あってたまるか!
…たまらんのか!?

うつらうつら…
うつらうつら…。

いつのまにか犬山は夢の中にいた。
ここ沖縄の小高い丘。
巨大な桜の木。
怖いくらいに満開だ。
怪しい美しさ。
桜の花びらをシャワーの様に浴びながら
犬山はうっとり。

すると!
その桜の大木がモゾモゾと動き出し
犬山の前から逃げ出したではないか!
「待て!どこへ行く!?」
薬中患者の様な目つきで桜の大木を追う犬山!
逃げる桜!
追う!
逃げる!
海を渡り、大地を這い、また海を渡り
沖縄にいたハズの犬山が
夢中で桜を追いかけて
いつの間にか北海道に辿り着いていた!
沖縄から九州、四国、本州、北海道と
桜を追いかけ日本を旅していたようだ!

しかしなんと…
なんともはや…
今のこの地、北海道で見ている桜は
沖縄で見たそれよりも
同じ大木なのに
言い表せぬくらい物凄く妖艶に見える。

すっかりその桜の虜になってしまった犬山は
「ああ…このまま死んでしまってもかまわない…」
と滝の様な量のヨダレを垂らし
身も心も完全に
そう、完全にイッてしまったのだった。

病室のベッドで
ヨダレを垂らした犬山は
年がいもなく
夢精した。


時間は少しさかのぼり
『島んちゅぬ湯』事務室。
『みたらし組』組長『陽罵琉チン平』と
『ヤンバル病院』婦長とが
『ちんすこう』をお茶請けに密談のご様子。

「『ガジュマル』コレクション、どうやら揃いそうよ」
「娘か?」
「今さっき運ばれたって。
向こうから来てくれて手間が省けたわ」
「よし、猫田さんの為にも
早いとこ手を打つんだぞ」
「モチのロンよ。
でも慎重にやらなくっちゃ。
警察やマスコミも嗅ぎまわってるわ」
「がはは!
いざとなったら消しゃ良い。
何でもかんでも消しゃ良いさ」

サウナ上がりで白いガウンを身にまとっている組長のチン平。
『さんぴん茶』をワイングラスに注いで
ぐるぐると拡散して一気に飲み干す。
「美味っ!ゲプー」
「後は1番の“問題児”が残ったわけよね」
「がははっ!
奴だって時間の問題だわ
とにかく事を成立させ
なおかつ物語の進行を円滑にすすめるには
邪魔は排除。
これ鉄則」
「手は打ってあるの?」
「俺が打たなくても
猫田さんのシナリオではそろそろ」

♪チャララ~チャララ~♪

着メロ『仁義なき戦いのテーマ』
チン平の携帯が鳴る。
肉屋の弟『カン太』からの着信。

“ピッ”

「おう。
…そうか。
ほっほー。
分かった。
待ってる」

“ピッ”

携帯をプッシュ。

「………
あ、トン吉兄さん?
“まぐろの解体ショー”やるから!
うん、そう!
がはは!
“まぐろ”っつううより“牛”って
兄さん上手い事言うねー!
がはは!
じゃ、すぐ来て!
え?明日?
何で。
……ほう…ほうほう…
ほうほうほう!!
がははは!
なるほど!
そう!そりゃいいわ!
『鉛筆銀(ぺんぎん)』も一緒にやっちまうか!
がはは!
ほいじゃ、明朝、奴のアパートへ。
じゃ!」

“ピッ”

「獲物がかかったみたいね」
「おう!
そんでもって明日にはあんたんとこの『鉛筆銀医師』もとっ捕まえて
いっしょに解体って訳!
興奮すろぜい!」
「『鉛筆銀』君はちょっぴり可愛そうな気もするけど
ま、仕方ないわね。
彼は知りすぎたまま逃げた訳だし」
「さて。
“牛”が運ばれて来る前に
一戦交えるとするかい!」
ペロリ舌なめずりのチン平。
「良いの?
私すぐに病院戻らなくて
かわいい小鹿ちゃんが
“早く絞め殺して!”って待ってるわよ」
チン平はスルリと白いバスローブを脱ぎ捨てて
「これからの惨劇思い
興奮し過ぎてイキリ立っちまったこいつを
まずはどうにかしねーとな!
へへっ!」
婦長舌なめずり。
「『ちんすこう』好きにはたまらないわね」
チン平は婦長のふくよかな胸の谷間へ
勢い良く図太い腕をすべらせていった。


翌日。
鉛筆銀逃亡、失踪。
白烏(しらからす)は病院へ向かい。
ウシ男臨終。
陽罵琉3兄弟の影は着々と伸び。
ベ子が目覚め。
犬山は夢精していた頃
那覇空港の滑走路に
赤い羽根のジャンボジェット機が
轟音と共に滑り降りる。

機内サービスでもらった色とりどりの『レイ』を首から下げて
とぼけた顔で
『上野の森署警察官・鳩山豆郎』が
那覇空港到着口に降り立った。

「さて、手始めに」
真面目な鳩山は
「まずはここ空港で沖縄そばでも食べようかなー!」

すぐにレンタカー借りて
犬山探しに街へ行け!

まさに今
大変な事になっちゃってんだぞーーー!
鳩山君!


♪パララ~ララ
パラララララ~~~♪

街に夜鳴きの音(ね)が響く。
今夜もらーめん屋台『黒猫』は営業中。

めけめけ~。


『らーめん放浪記』つづく。


(注)この物語はフィクションです。
登場する人物、建物、団体名等はすべて
架空のものです。


写真。猫バッヂにつぐ、茅ヶ崎作家さんの犬バッヂ。