したのやムラ便りG

東京の片隅に眠る下野谷遺跡。「したのやムラ」と呼ばれる縄文のムラがありました… (non official site)

したのやムラの物語⑦「かめしーたの誕生日」

2011年08月29日 23時58分23秒 | したのやムラの物語

したのやムラの物語⑦ 「かめしーたの誕生日」

                                                               

朝から鳥が元気に鳴いています。

おっとめずらしい、かめしーた が自分の竪穴住居のまわりの草むしりをしていますよ。

お花は残してますね。きれい、きれい。

それから、湧水のところに行って、ていねいに手と顔を洗っています。えらい、えらい。

                                                               

さて、どこに行くのかな?

「おはよう!」

「ああ!かめしーた来たね。おはよう!」

しーた と のーや のおじいさん、長老まがのところでした。

かめしーた、おめでとう!」

しーた と のーや のおばあさん、たまもいます。

「まったく、そんなにおっちょこちょいなのに、よくケガ一つしないでいたもんだ」

おや、シャーマンのいせも来ていますよ。

なんでしょう。

                                                           

「さあ、こっちへおいで」

たまが かめしーた を呼びました。

そして、木箱からきれいな紐をとりだし、

かめしーた の髪をほどいて、自分のくしでとかし、その紐で結び直しました。

みとの編んだひもは本当に丈夫できれいだね。

本当はみとが結びたかったろうが・・・。

さあ、このみとの編んだひもが、お前をまた1年護ってくれるよ」

「ありがとう!たま

「さて、お次はこちらだ。おいで。」

いせが不思議なにおいのするくすりのついた棒で、かめしーた の顔に印をつけました。

「この、おっちょこちょいのあわてんぼうを1年間お守り下さい・・・むにゃむにゃ」

「ありがとう!いせ

「ふん・・・。さっ、長老に挨拶だよ」

                                                             

かめしーた は家の一番奥の座に座っている長老まがの前に行き、ひざまづいて

頭をたれました。

まが。森と川とムラのみんなのおかげで、1年間元気に暮らせました。」

「うん。りっぱに物語も語れたな。さあ、今年はどうする?」

「はい。今年は「きちんと」します。」

「「きちんと」?」

「はい。時間や約束をきちんと守って、きちんと家もきれいにして、きちんと物語も勉強して、きちんとやるべきことは早くやって、きちんと・・・」

「はははは、おまえがかい?」いせが笑います。

「うん!だってみとはいつも「きちんと」していたもの。」

「そうだね。かめしーた。でも、これは1年の大切な約束だよ。できるの?」

「うん・・・たぶん・・・」

「よし、わかったぞ、かめしーた。ならば、がんばるんだよ。さ、手を出しなさい。」

かめしーた は まがに手をだして、ぎゅっと目をつぶりました。

「いたっ」

ちくんとして、そっと目をあけると、手にいれずみが1本増えていました。

「さあ!また1年、したのやムラの一員としてがんばれる印も入った。

お誕生日おめでとう。かめしーた

「ありがとう!」

                                           

外にでて歩きだすとムラ人がみんなおめでとうを言ってくれます。

 しーた と のーや 家でお祝いです。

ぎんが昨日捕ってきた鹿のステーキにあんのご自慢の干し貝スープ。

デザートには、もんが作ったブルーベリーとラズベリーのジャム付きのドングリクッキーも!

しーた はオオカミの物まねを、ーや は新しいお話をプレゼント。

じょうかいは、石神井井川でおいしい魚をとってきて燻製をつくりました。

これから、おなかがすいた時いつでも食べられます。

木彫りが上手な ひーお がくれたきれいな木箱には

昨日、また旅に戻ってしまった とらん がくれた透明に輝く石が入っています。

                                                            

「みんなありがとう!すっごく美味しかったし、すっごく楽しかったよ!」

宴が終わり、家に帰る かめしーた のほっぺたをりょううりがなめました。

                                                  

降るような星空の下、草がきれいいなった家の前では、

かめしーた の友達のうさぎのぴょんとかめの のっそりー が待っていました。

「どうぞ!中に!」

少しだけかたづいた家の中、2匹を横に鹿皮のマットで眠りについた かめしーた には、

まだ最高のプレゼントが待っていました。

夢の中みとがやってきてくれたのです。

かめしーた、また1年元気でいるんだよ。私はいっつもおまえを見ているからね、

大丈夫だよ。」

                                                               

新しい1年が始まる、幸せな1日が終わろうとしています。

外では、すっかりうるさいぐらいになった虫の声が響いています。

ぐっすりおやすみ、そして「きちんと」した1年をね、かめしーた・・・。

                                                             

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