鏡海亭 Kagami-Tei  ネット小説黎明期から続く、生きた化石?

孤独と絆、感傷と熱き血の幻想小説 A L P H E L I O N(アルフェリオン)

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・第58話「千古の商都とレマリアの道」(その5・完)更新! 2024/06/24

 

拓きたい未来を夢見ているのなら、ここで想いの力を見せてみよ、

ルキアン、いまだ咲かぬ銀のいばら!

小説目次 最新(第58)話 あらすじ 登場人物 15分で分かるアルフェリオン

読者様と共に10数年、第2話から引っ張ってきた伏線が今、第52話で…

連載小説『アルフェリオン』第52・その1、一昨日(8月17日)アップしました。
もうご覧いただいているとしたら非常に嬉しいです。感謝感謝です。

以下、これまた例によってネタバレを含むため、読みたくない方の目に入らないよう、白地の背景に白フォントというお決まりのパターンで記事を書いています。

第52話・その1をすでに読まれた方、あるいは、自分は少々のネタバレを事前に知っていた方がむしろ楽しめるという(私のような^^;)方は、以下の部分をマウスでドラッグし、反転させるとテキストを読むことができます。

---ここから---

第52話・その1、最後の最後まで気が抜けませんでしたね。

冒頭からいきなりクライマックス(^^;)で、シーマ-家にもらわれたルキアンの秘密と、ネリウス・スヴァンとの関わりが明らかになり、もうこれ以上の急展開はないかと思われていた矢先に…いきなり「カルバ先生!!」で次回に続く、ですから。
ルキアンの師、カルバ・ディ・ラシィエン、こういう形で再登場です。

作者としては、それにしても感慨深いものがあります。
第1話にカルバが登場し、続く第2話でカルバが生死不明の状況であることが明らかになり、そこから延々と、50話もかかって、あるいはリアル世界の時間経過では10年以上も時が流れ、引っ張って引っ張ってここまできました。

その伏線が、ようやく第52話になって驚くべき展開へとつながったわけです。
いわば、1クール目の冒頭で設定した伏線が、4クール目の最終話で衝撃の展開…というかたちですね。

 ◇

もっとも、「月闇の僧院」が初登場した第44話で、僧院長コズマスと一緒にいた男がひょっとしてカルバではないか?ということに、もしかすると気づいていた方もいるかもしれません。

「私は、祖国も、この命もすべて捨てられる。事の成り行きを知っていたにもかかわらず、いや、だからこそ、私は《家族》さえも捨ててきた」と男は言いました。これは、今から思えば、カルバが言ったんですよね。自分は「死んだ」ということにして、ソーナとメルカのもとを去ったのです。内弟子のルキアンとヴィエリオも捨てて。

 ◇

カルバ先生、考えてみれば、いろいろ怪しいでしょ?

第1話、広大なイリュシオーネの大地から、旧世界の「レゲンディア」級のアルマ・ヴィオの中でも最強の機体であるアルフェリオンを、たまたま掘り当てた、「発掘」できたというのも、考えてみれば偶然とは思えません。今から思えば、事前に何らかの情報があったのでしょうね。

なおかつカルバは、アルフェリオン・ノヴィーアのテストパイロットに、優秀なヴィエリオではなく敢えてルキアンを――戦いが嫌いでダメっ子のルキアンを――わざわざ指名して、資料まで渡していたんです。

幼少時にシーマ-家にもらわれ、その後に16歳になったルキアンを、何食わぬ顔で引き取ったカルバ先生、恐ろしいです。さすがに、人類を守るために自らは敢えて「人間としての資格」を捨てて悪魔となったという「月闇の僧院」のメンバー、しかも僧院を率いる「ザングノ」の一員だけあります…というところでしょうか。

 ◇

なお、同じく「ザングノ」のスヴァンについては、本編のところどころに、すでに「いい人」ぶりが出てしまっていますね。

コズマスやカルバとは、スヴァンは本質的に違うのでしょうね。人としての「弱さ」を持ち、しかしその弱さが人間の「強さ」でもあるということを、体現するような人物。いや、そうなのでしょうか(^^;;)。

もともと彼が、自分は人間のままでいたいから…といって自身の命を犠牲にして「ロード」を行うつもりであったという場面も出てきましたが。

かつて見送ったルキアンの成長した姿を、10年ぶりくらいに目にしたスヴァン。
どういう気持ちなのでしょうね。

彼のセリフ、「大きくなったな、ルキアン」という部分に続き、「それに、こんなにも……」と言っています。何が「こんなにも」どうなのか、という部分は、敢えて省きました。想像してください。

 ◇

シーマ-家にしてもどうも不自然な部分があると、思っていた読者様もおられるでしょう。

第9話に、シーマ-家のルキアンの義父・義母のこういうセリフの回想がありました。

 ――ねえ、あなた……あんな子なんてもらわなければ良かったわ。
 ――声が高いぞ。あの子が聞いていたらどうするんだ。
 ――大丈夫ですわ。もう寝てますよ。
 ――まあ、やむを得まい。金になるんだ。わが家を守るためには……。

ここで「金になる」というのが妙です。ただでさえ貧乏で、むしろ口減らしさえしたいような没落貴族シーマ-家が、役にも立たないルキアンを引き取るなんて変ですね。
どうしてそれが金になるのでしょうか。

そのことには、ルキアン自身も気づきました。第46話ですね。
例の「楯なるソルミナ」の造り上げた夢幻の結界の中で。その結果、「気味の悪い連中」と取引をしたという養親の言葉を、ルキアンは思い出したのでした。

引用しましょう:

 ――《金になる》? そういえば、変だよ。
 己の辛い体験を、いくらか突き放して見つめることができるようになった今、ルキアンは初めて気づいたのだ。
 ――お金に困ってたのは知っていたけど、僕を引き取って育てたことがどうしてお金に結びつくんだろう。逆に、僕みたいな《いらない子》を養うのはお金の無駄だったんじゃないのか。父さんと母さんが僕をカルバ先生のところに弟子入りさせたのだって、口減らしのためだと思っていた。
 《盾なるソルミナ》の創り出す幻は、ルキアン自身が現在まで忘れていた記憶を、彼の頭の中から引き出して紡がれているようであった。そういえば、確かにあのとき、両親はこんなことも話し合っていた。

「とにかく16歳まで面倒を見れば大金が手に入る。あとは、とっとと追っ払って」
「えぇ、あんなどうしようもない子とも、あの薄気味悪い連中とも、早く縁を切ってしまいたいもの」
「その話は出すな。彼らのことは決して口にしないようにと言われたじゃないか」

 ――はじめから僕は、16歳になったとき、家から出されることになっていた?
 忘れもしない16という歳。2年前、カルバ・ディ・ラシィエンの研究所にルキアンが内弟子として引き取られたときだ。
 ――それに《薄気味悪い連中》って……。

以上が引用です。
「薄気味悪い連中」というのは、まさに今回の第52話・その1で出てきていましたね。
現時点ではもう疑いようがありません。「月闇の僧院」のリーダーの一人、ネリウス・スヴァンと二人の従者、しかもそのうち一人は、例のヌーラス・ゼロワンじゃないですか(!)。

 ◇

それから、エスカリア帝国の浮遊城塞エレオヴィンスが、ガノリスの首都バンネスクを最終兵器「天帝の火」で消し去り、そこにカルバが巻き込まれるはずであったことにも、もしかすると裏があるかもしれません。

神帝ゼノフォスが狙ったのは、バンネスクそれ自体である以上に、実はカルバをはじめバンネスクに集まった魔道士たちではなかったか…もっと言えば、「月闇の僧院」のメンバーを狙ったのではないかという憶測も出てきます。現世界での大乱が、結局のところは「時の司」が人類の歴史に介入し、修正するための手段として使われているであろうことは、本編でもすでに明らかです。

「時の司」たちにとって、吹けば飛ぶ塵のような存在に過ぎない「愚かな人間ども」の中で、彼らの計画を揺るがしうる存在――それは「鍵の守人」と並んで「月闇の僧院」です。その目障りな「僧院」のトップたちを、あたかも、エスカリア帝国がガノリス王国を攻撃したという外観のもとで密かに行わせたのだとしたら…。

---ここまで---

いや、詳しくは色々と妄想&解釈の余地があります。

ともあれ、今後も『アルフェリオン』をお楽しみいただけましたら幸いです。

鏡海
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