かちこのアメリカ奮闘記その後

アメリカの大学院での登録栄養士(RD)を取得、帰国して日本の病院でNST奮闘中

高齢者の肺炎を治療しないという選択肢(成人肺炎診療ガイドライン2017)

2017年05月01日 | 臨床栄養最近のトピックス

以前より検討されていた「成人肺炎診療ガイドライン2017」がついに発表されました

これまでの市中肺炎、医療関連肺炎などをひとまとめにし、

治療のアルゴリズムを示しているので

コメディカルにもとてもわかりやすくなっているのですが、

ここで取り上げたいのは、

「終末期や、老衰の患者については個人の意思やQOLを考慮した治療やケアを行う」

とした点です

 

病院にいると毎週のように枯れ木のようにやせて、肺炎と診断された高齢者が入院してきます

お決まりの2週間の抗菌剤投与+禁食(誤嚥したら困るから食事はなしで点滴のみ)

 

薬のお陰で熱も下がり、2週間後には確実に肺炎像は改善されているのですが

1週間以上食事も食べさせてもらえず

入院中はずーっと天井を見ているだけ

ベット上安静でトイレも行くことを許されず(転倒防止など)

認知症はどんどん悪化

今までは伝い歩きでトイレまで行けていたのに

自分では立てなくなり

自分の家じゃないところで

知らない人に囲まれて

何がなんだかわからない状態で

退院するころには寝たきりでごはんも食べれない、会話もできない

生きているけど魂がどこかへ行ってしまったような老人が

それはそれはたくさんいます!

 

まさに「病気を治して人を治さず。」

 

そんな状況は医者の責任ですか?

でも医者は家族が病院に肺炎の老人を連れてきたら治療せざるを得ない

 

そんな状況に切り込んだのが今回のガイドライン

 

誤嚥性肺炎を繰り返したり、

老衰のような状態の患者に無理やり抗菌薬を使ったりということをせず、

本人や家族が何を望んでいるか。

今の現状が本人の人生のスパンの中でどの位置にあるのか、

一人の人生を考えたうえでベストな治療/緩和などの選択をせよ

と背中を押してくれるガイドラインなのかなと思います

 

肺炎になっても住み慣れた家で、少ししか食べられなくても

好きなものを食べて、自然な形で命を終える、

そんなことができるようになるといいなと思います

 

ただ、私の祖母の経験を振り返って考えると、

90歳を超えて誤嚥性肺炎になったあの時は、

脳血管疾患後の嚥下障害もかなり重く、

認知症もひどく、

今のように(今も認知症はあるけど嚥下障害は3年ほどの訓練の結果改善し、今は普通食)

回復するとは誰も思っていませんでした

今回のガイドラインに当てはめると「老衰」として

諦められていた可能性も大きいと思うと複雑な心境です

 

人の命、人生の集大成、関わる私たちの責任は重いですね

 

ガイドラインの速報は以下のリンクから

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201704/551082.html

 


亜鉛欠乏治療薬が承認。

2017年05月01日 | 臨床栄養最近のトピックス

久々の記事です

引っ越しなどが一段落し、職探しが本格的にスタートしました

が、、、

少し自分の勉強のための時間をとって

ゆっくりするのもありか?

と思い始めた今日この頃

最近気になった臨床栄養関係のトピックスを自分の備忘録として

アップしていきたいと思います

マニアックすぎるので、専門分野外の方は読み流してください

 

最近「低亜鉛血症」に対する治療薬が承認されました

正確にいうと、もともとウィルソン病という、銅が蓄積する病気の治療薬の適応範囲が

低亜鉛血症にも認められたのです

低亜鉛血症は特に高齢者で多くみられ、褥瘡の治癒が遅れる原因になったり、

味覚障害(ひいては食欲不振)の原因になったりするのですが

実際は見過ごされることが多く、

医師もあまり積極的に血液の亜鉛濃度をチェックしたりしてくれませんでした

しかも血中亜鉛濃度が低くてもプロマックDという胃薬をなんだかんだと病名をつけて

処方してもらうしか方法がなく、

「低亜鉛血症って軽く扱われてるな~」という印象でした

が、ここへきて正面切って「治療」とうたえる薬が登場したわけです

ちなみにプロマックDは17㎎×2回内服で34㎎/日

新しく低亜鉛血症を治療する薬として承認されたのはノベルジン25㎎/錠で、

25~100㎎/日の投与が可能になりました

ちなみに亜鉛は牡蠣の他、牛肉やレバーなどに多く含まれており、

食事(動物性のものを含む)を普通に食べれている人では

あまり欠乏のリスクはありません

特定の薬を服用していたり、ベジタリアンだったり

食事の摂取量が減って低栄養になっていたりする人では疑ってみるのもいいかもしれません

皮膚炎や潰瘍、味覚異常、血液検査ではアルカリフォスファターゼ(ALP)が低値になっているのも

疑うポイントですね

特に肝硬変の患者などでは亜鉛の吸収が低下している上、

亜鉛が欠乏していると血中のアンモニア濃度が上がったり

肝細胞の線維化が進んだりする原因にもなるので要注意です!

 

最後まで読んでいただいてありがとうございました

https://medical-tribune.co.jp/news/2017/0428507754/?utm_source=mail&utm_medium=recent170501&utm_campaign=mailmag&mi=0012800000AtrlLAAR&fl=1