Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

最低賃金1000円は可能か

2009-07-17 10:23:26 | 経済一般
民主党が「最低賃金1000円化」をマニフェストに入れた件について。
結論から言うと、現状では弊害の方が大きいだろう。

いつも言っているように、人件費の総額は法によっては変えられない。
たとえば、ある会社が法改正により、結果的に「時給を1割引き上げるべし」と
なってしまったとすると、

(1)価格に転嫁する
(2)社員の人件費を見直すことで、捻出
(3)非正規雇用カットや新卒採用の抑制で帳尻

三つのうちのどれかのプロセスが発生することになる。
当然、現状の日本においては(2)は難しい。
国際競争下で一方的な価格転嫁は難しい(できたとして、低所得者支援の意義は?)
ということで(3)が間違いなく主流になると思われる。
「仕事は誰がやるのだ」と思う人もいるかもしれないが、担い手のいなくなった仕事
については、既存社員の残業か海外発注でまかなわれることになる。

もっとも、絶対にダメかと言うとそうでもなくて、景気が良い時、かつ既存社員の
処遇見直しが可能な状態であれば、一定の再分配効果は見込めると思う。
一部の議員が「ニューディール時に最低賃金引き上げが景気回復に有効だった」
と言っているようだが、アメリカは流動性が高いから上を削って下に回すという
効果も期待できるのであって、日本でやっても失業率が上がるだけだ。
(ただ失業率も景気も改善しなかったので効果があったかは疑問だが)

ということで、最賃引き上げは時期尚早だろう。
ついでにいうと、一連の「派遣法の規制強化」も、上記の図式とまったく同じだ。
流動化無しでそんなことをやっても、規制バカの自己満足にしかならない。

この人災は、隣国で現実に起こっている出来事だ。
いや、わざわざ海の向こうに目を向ける必要も無い。
某政党が「3年たったら何が何でも直接雇用」と規制強化の流れに持っていったため
慌てた企業による“サブプライム便乗切り”が、
国内でも相当数発生していると思われる。


ところで、上記のようなアングルはなんら目新しいものではなく、エコノミストや
官僚の間では常識だ(モリタクと厚労省除く)。
民主党の労働関係の議員もよく承知しているはず。
ではなぜ、彼らはマニフェストに入れたのか。
そっちの方が票が取れると踏んだのだろう。
一部の論者や経済誌が多少騒いだところで、泣いて喜ぶ規制バカの方が多そうだから
トレードオフしちゃったわけだ。
均しく選挙権の保障された民主主義体制下では当然の選択だ。
結局は、彼らをそう振る舞わせた我々有権者にツケが回ってくるのだろう。


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41 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
とはいえ、所得はあげなければならない (松本孝行)
2009-07-17 11:54:55
とは言え、さすがに600円台の最低時給というのはあまりにも低いと思いますので、ある程度は上げる必要があるでしょうね。それが一律1000円である必要はないと思いますが。私が1000円に反対する理由はあまりにも安直すぎるからです。もっと経済をしっかり精査していけば、1000円なんて話にはならないと思うんですけどね。もうちょっと下調べをしっかりしてほしいです。
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支持母体 (Unknown)
2009-07-17 11:55:31
民主党が政権をとっても、連合とつるんでいる限りは期待出来ないどころか、ポピュリズム、パターナリズムで余計な規制ばかりかけてかえって状況が悪化していくような気がします。
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Unknown (DAI)
2009-07-17 13:22:18
最低時給1000円?
町工場全滅のリスクは無視ですか?
仮に時給1000円になったとしても、その分物価上昇でチャラになってしまうので、何の意味もない。

逆に一度、最低賃金法と労働法を廃止してみたらどうなるか、見モノですね。
コストが下がって利益が出て、誰でも働けるようになるか、戦前の女工哀史のごとき労働強化が復活するか
企業はどこまで賃下げするか?
国際競争力をどこまで盾にできるか?
やってみたら意外と穏便に事が運ぶかも知れませんね。て言うのは甘いかな(^_^;
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Unknown (ZG)
2009-07-17 13:26:25
今のままでは、賃金は限りなく中国インドに近づき、介護は限りなく介護者の年齢に近づくと思っています。
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(4)労働生産性を上げる (ケビン67)
2009-07-17 13:41:26
『(4)1割分の労働生産性を上げる』があり得ると思います。

方法としては、以下のものがあります。
①労働者をむち打つ
②労働者をやる気にさせる
③さぼらないように監視する。(監視コストがかかるが)
④技術革新等により商品の付加価値を上げる
⑤無駄の徹底排除

人事系の人はすぐに、人件費に考えが行きますが、創意工夫によって何とかなる部分も多々あると思います。
問題は、法律が人件費の上昇を強要するだけで、創意工夫をするインセンティブを持っていないことです。
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Unknown (epi)
2009-07-17 13:42:36
>結局は、彼らをそう振る舞わせた我々有権者にツケが回ってくるのだろう。


お上の言うことに黙って従っていたツケでしょう。
文句があるなら自分で意見を発信しないといけない。
飲み屋でべろべろになって愚痴ってるだけでは何も変わらないって事ですかね。
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民主党も閉じた共同体 (世逃げ人)
2009-07-17 13:49:23
民主党の選挙事務所に選挙運動の手伝いに行ってみた。若い新人候補に少々の期待をもって、かつ社会見学を兼ねて。
三ヶ月程度の経験だったが、しかし、充分身にしみて判ったのは、民主党も自民党と同じで、その後援会は閉鎖的な共同体だ、ということ。
自民の後援会で主に自営業者たちが世襲議員を囲んで利権共同体をつくっているのとパラレルに、民主の後援会では組合員が単細胞リベラル議員を囲んで利権共同体をつくっている。
演説会・報告会に集まるのは、労組・教組のオジさんと、そのOBのオジイさんたちばかり。それに、リベラル志向で且たっぷりヒマのある優雅なお年寄りたちが少々。
「今、本当に困っている若者たちに訴求すれば、票の山じゃないですか」と言ってみたが、「でも、若い連中、(政治に)関心ないからねぇ」とだけ。決してこちらから働きかけていこうとはしない。「関心」をもたれると、自分たちに不都合なことがあるからだろう。
あと、連合からの出向(?)者って、年寄りに限らず若いのまで、なんであんなに頻繁に休憩をとるのかね。純粋ヴォランティアが黙々と作業しているのを尻目に。
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Unknown (Unknown)
2009-07-17 14:59:35
とは言え、民主は勝つでしょう。
本当にやったとして、非正規の首切り(集会・自殺者増?治安悪化)→正規の仕事量増(過労死?)+仕事海外へ(消費冷え不景気)
これはこれで前に仰っていた正社員やってても何もいいことないという状況になるんじゃないでしょうか?劇薬すぎるけど。
再編考えると早々にこけてもらった方がいいような気がします。
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需要なのは最低賃金設定に非ず (えんさん)
2009-07-17 16:12:03
>さすがに600円台の最低時給というのはあまりにも低いと思いますので、ある程度は上げる必要があるでしょうね。それが一律1000円である必要はないと思いますが。私が1000円に反対する理由はあまりにも安直すぎるからです。もっと経済をしっかり精査していけば、1000円なんて話にはならないと思うんですけどね。

従来は「夫がそれなりの収入を得て、そのプラスアルファ程度があればよし」、と言うことで最低賃金が特段問題にはならなかったのですが、現在は非正規労働者がその賃金水準で生活しなくてはならなくなっており、今まで顕在化しなかった、「他国に比べ際立って絵低い水準の最低賃金」が、ここに来て問題になっていると言えると思います。

 今の雇用が引き続き維持されることが保障されていれば、最低賃金の引き上げは非正規労働者にとって喜ばしいことですが、そこだけ手をつけたら、そもそも雇用そのものがなくなる一方、そのしわ寄せが正社員行くのは目に見えている。
 
 だから、「(雇用の)流動化無しでそんなことをやっても、規制バカの自己満足にしかならない」
と言う訳です。
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「民公」連立で長期政権の虞れ (世逃げ人)
2009-07-17 18:14:17
> 再編考えると早々にこけてもらった方がいいような気がします。

私が最も懸念しているのは、民主党が安定多数を獲るために公明党と連立を組むことです。都議会ではその動きがあるそうですね。
自民党堕落の一因は公明党との連立だったと思いますが、その弊害は、民主+公明の組合せの場合の方が大きいのではないでしょうか。
安直なパターナリズム的政策がどんどん実施されないか、と不安です。この点で、自民よりも、民主の方が公明と「相性」がよい。自民よりも多く公明の要求を飲むでしょう。
メディアは、民主党に対して、選挙後の連立について問い質すべきです。公明党と組む可能性もある、というのなら、私は民主党には決して投票できない。
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