Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

新卒一発勝負の弊害

2009-05-05 08:49:33 | 経済一般
先日紹介したVoiceセレクト。
高橋俊介氏(慶応大)のマネジメント論に、いくつか興味深い視点が述べられている。

・人材の成長には流動性のある環境こそ重要であり、そちらに手を入れずに
「年功序列だ、 数値目標だ」とやったところで意味は無い。
・輸出主導型の産業はもう伸び代がなく、これからは工業社会向きの均質な人材よりも
 多様性のある人材が価値を持つ。

等、非常に優れた視点だ。個人的に注目したのは、六大学対象の調査で明らかになった
という、
「自分に自信がある学生ほどリスク型の就職を目指し、
自信の無い学生ほど安定志向である」
という結果。

年功序列制度とは要はその年齢層の平均賃金のことであり、平均以上の人は損で
平均以下の人材にとっては美味しい仕組みなのだから、こうなるのは当然である。
自動車や電機の採用担当者の中には「最近の学生はバカになった」と嘆く人がよくいるが
自分の会社が割に合わない会社に成り下がっただけだ。
学生は合理的な選択をしているにすぎない。

ただ、課題もある。リスクを取りたい優秀な学生(ただの自信過剰かもしれないが)
は間違いなく増えている。だが彼らのふつふつとたぎるマグマを受け入れてくれる器が
なかなか存在しないことだ。
外資はもともと椅子の数が少ない上、外銀が採用数を激減させているので
器になりきれていない。

となると起業しかないのだが、こちらは相変わらず低調だ。
理由ははっきりしている。※1
新卒カードがあまりにも重過ぎることだ。
日本において起業するということは、昭和的価値観に歓迎してもらえる唯一のパスポートを
自ら捨てることを意味する。特にエリートほどカードは重いから、優秀者ほど安定志向という
アメリカの真逆な現象が起きてしまう。
そりゃ何十年やろうがMSもグーグルも出てきませんわな。
実は個人的には、年功序列の最大のネックはここかもしれないと感じている。

氏は(まあコンサルなので当然だが)色々と社内での人材育成改革について提言してはいるが
個人的には日本企業が自主的に変わっていくのは非常に困難だと考えている。
この状況を打破するには、

①トップダウンで一気に流動化を進め、新卒カードを無意味化する
②新卒カードで貰えるものが激減するまで、待つ。


といったところか。
経済状況をみるに、意外に②の方がメジャーになるかもしれない。


※1
フォローしておくと、起業といってもゼロから会社を作るというわけではない。
数名での立ち上げに参加するか、10名程度のベンチャーに参加するという選択肢も
含めての話で、実際にはそうやって経験を積む人の方が多数派だ。
これなら、ぐっとハードルは下がるだろう。

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5 コメント

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Unknown (ベンチャー企業勤務)
2009-05-05 14:34:00
私は新卒時にベンチャー企業(従業員20人程度)に
就職しましたが、今振り替えてみると、
新卒時は大企業に就職するのが1番だと思います。
理由は2点あります。

1.社員に余裕がないため、きちんとした社会人教育を受けられない。
2.ベンチャー企業は大企業の下請け仕事が多く、大きな仕事に携わるのが難しい。

大企業からベンチャー企業に転職することはできますが、逆は難しいです。
城さんもこの現実を考慮していただけると幸いです。
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Unknown (Unknown)
2009-05-05 18:45:29
海外の政治関係者など話をすると、必ず出てくる話題として、「日本の優秀な人材は何処へ消えた?」というものがあります。

あれだけの経済成長を産んだ日本を下支えしてきた人たちが、一体どこへ消えてしまったのだ、という疑問です。

私の周りでも、優秀で、抜群に頭のきれる学生ほど、企業に就職せずに、劇団に行ったりしているんです。もしくは海外に旅立っていく(就職というよりは放浪?)人も多いです。

これらの前提には、現行の制度では、自分の能力は発揮しきれない、という考えがあるからなのでしょう。結局のところ、どんなに優秀な人材が欲しいと言っても、会社に対してクリティカルになれるほどの人材は扱いきれない、という心理が問題なのでしょう。

新卒カードもそうですが、同時に、自分よりきれると思えた人材を、果たして人事が採用できるのか、それを見抜けるのか、そんなところにも問題があるように思えます。
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Unknown (マツケン)
2009-05-05 22:41:28
人事が人材を見抜くことは難しく限界があるため、
新卒・既卒の区別なく応募者を半年~1年の試験的雇用の後に企業と応募者、双方の合意があれば採用に至るという制度を普及させることがが望ましいと思います。

そのことでお互いのミスマッチを防止でき、
また、応募段階でのハードルが下がるため、
雇用形態や学歴・新卒・既卒に偏って応募で切られる現状が緩和され、
より本質的な実力勝負の世界になるのではないでしょうか。

このことと同時に正社員の解雇規制緩和を実施し、
全体の流動化を高めることが必要だと思います。
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起業はホントに少ない (松本孝行)
2009-05-06 09:34:10
 私は経営学部出身なので、周りには「起業したい!」という友人が多くいました。が、そういう人たちもフタを空けてみれば他の学生となんら変わりなく、3年秋から就職活動をして、現在サラリーマンをしています。

 あれだけ大学1年時には「俺はこういうことで起業したい」なんて語り合ってた友人がサラリーマンやってるかと思うと、なんだか切なくなります。ホリエさんが逮捕されてからでしょうか、急に起業を志す若者が減ったように思います。

 起業して成功するというモデルが日本にはほぼいないことも、新卒カードを捨てる有機をもてない理由なのかもしれません。
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Unknown (ヘネト)
2009-05-06 11:16:00
はじめまして.

私が雇用の流動化や新卒カードについてよく思うのは,「大学生の就職活動の時期を大学卒業後にすべきではないか」という点です.

通常,大学生は入学後,二年生まで教養課程で学びます.しかし,三年生の夏休みから就職活動(インターンシップ含む)を開始し,下手をすると四年生の後期の半ばまで就職活動に時間を費やさなくてはなりません.
実質的に勉強するのは2年半という期間になっています.

当然,学部のゼミナールでは,ゼミ生が全員揃うというのは2月から7月までは,ほとんどありません.
困ったものです.

青田買いも結構ですが,もう少し人間の知識について中長期的に考えた採用活動を企業が提供してこそ,企業の中長期的成長を望める気がします.
※この点で,上述のマツケンさんの意見には賛成です.


さらに,リクルーター制度によって,あるいはリクルーターの所属していた研究室の先生へ直接連絡することによって,一部の優秀?な学生を確保し,内々定を出すという悪しき慣行は廃絶すべきであるように思います.


機会の平等を重視することはもちろんですが,学生時代に何をどのように学んだのか,そして柔軟な思考を身につけているのか,などを採用の指標にすることも案外大切なのではないかと思います.
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