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というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

35歳までに読むキャリアの教科書

2011-01-04 14:10:05 | 書評
35歳までに読むキャリア(しごとえらび)の教科書 就・転職の絶対原則を知る (ちくま新書)
渡邉 正裕
筑摩書房



いきなり起業したりベンチャーで頭角をあらわすのはハードルが高い、かといって社畜に
なって飼い殺されるのもまっぴらだという人にとって、やはり普通の日本企業に入って
そこでキャリアを磨いておくのがもっとも現実的なキャリアデザインの方法だろう。
本書はそのための非常に優れたテキストとなっている。

「バカじゃない、でもやる気が出ない人へ」という帯のコピーは秀逸。

基本的に仕事というのは千差万別であり、さらに日本の場合、会社ごとにガラパゴス化
してしまっているため、共通のセオリーのようなものを理論化するのは難しい。
本書の優れた点は、いくつものケースを分析することで、ある程度の一般化に成功して
いる点だろう。すごく大雑把にいえば、
「動機とスキルの洗い出しをした上で、そのコアな部分にキャリアを寄せていく」
ということになる。これがケースごとに解説されているため、仕事内容まではイメージ
できなくても、なんとなく全体のアングルは頭に入ってくると思う。

ただ、こうして“キャリアデザイナー”達のそれぞれのアプローチを示されてみると、
必要な能力もモチベーションも結構ハードルは高いかな、というのが正直な感想だ。
(同じことは、僕自身が「アウトサイダーの時代」を書いた時にも感じた)

自分のキャリアを早い時期で見定め、そのために転職も含めた様々なアクションを
自分から打っていくというのは、日本の教育システムではまったく教えていないことだから。
いや、むしろ現状はまだまだ「いい子ちゃんで座ってなさい」的なカルチャーに近いのでは
ないか。

もっとも、グローバル企業のホワイトカラーというのは本来そういうシビアなものであり、
日本のホワイトカラーも他国並みになっていくというだけの話なのかもしれない。
いずれにせよ、これからはホワイトカラーの2極化は大きく進むと思われる。

ちなみに、2極化した下の方はどうなるか。遅かれ早かれ昇給ピークが40歳を下回るように
なるから、本書も言うように、もっとも生活費のかかる50歳前後に「地位も金も無い団塊世代」
みたいな、なんとも夢のない“カツカツ世代”が生まれることになるだろう。

僕には今から十数年後、「子供の学費が!家のローンが!お上はなんとかしろ!」と泣きわめく
同世代の姿が目に浮かぶが、もはや国になんとかする余力はない。頼りになるのは自分だけだ。

世の中には「そんな厳しい話を20代にするな」という採用側の人間もいるが、今向き合って
おくか20年後に気付くかという違いでしかない。
もっとも、40歳を過ぎて気付いても手遅れだろうから、ポジティブに考えるなら今向き合って
おくべきだろう。




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23 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (QEE)
2011-01-04 17:06:41
これはいい本でした。
自分の学生時代にこんな本があったら、自分の企業選択ももっと違うものになっていただろうと、ちょっと考えてしまいましたね。



>社民党が「労働者改正法改正の早期実現」としており、雇用の流動化に対して積極的である
http://www.isfj.net/ronbun_backup/2010/j14.pdf

竹中研の学生さん、城さんの皮肉(http://www.j-cast.com/kaisha/2010/06/23069426.html)をマジに受け取ってしまったんじゃないか・・・
そうとしか考えられない。
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Unknown (一ファン)
2011-01-04 18:56:56
あけましておめでとうございます。城さんの主張は正論だから敵も多く大変かと思いますが今年も頑張ってもらいたいです。

会社を学校代わりに自分のキャリアを磨いていくというのは日本では超高級思想だと思います。おっしゃるように日本の教育システムは年功序終身雇用を大前提としたものですので大半の人は成就しないでしょう。

それにいくら自分のキャリアアップに成功したとしても、それを発揮する場が今の日本に存在するのか疑問です。

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社民党 ()
2011-01-05 10:43:24
>竹中研の学生さん、城さんの皮肉(http://www.j-cast.com/kaisha/2010/06/23069426.html)をマジに受け取ってしまったんじゃないか・・・

これはそうかも(笑)
まあ、こうして勝手に流動化支持認定してあげるのも一興だろう。
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Unknown (田上)
2011-01-05 14:20:14
丁度読んでみたいと思っていたところでした。
自分は「地位も金も無い団塊世代」になっていそうな、恐怖を感じます。
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日本版ギャップイヤー (スターチスの花言葉)
2011-01-05 17:21:02
2011年1月5日(水)日本経済新聞の 朝刊にJICAという組織が日本版ギャップイヤーを取り入れてはという記事が 掲載されていました。 現実的に雇用流動化とそれに伴う社会保証の見直しが議論され始めているのでしょうか?
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Unknown (Unknown)
2011-01-05 17:35:27
私は高校生のときに部活で(マイナー競技ですが)元オリンピック選手の指導者に出会ったこともあり、城さんのブログが特に厳しいことを言っているとは思いませんね。「厳しい世界」を基準にすると、日本のぬるま湯環境は凄く気持ち悪いです。自分に甘い人たちが私にも甘く接してきて自分がスポイルされていくことに苛立ちを感じます。たぶんこういうときには環境を変えるべきなのでしょうね。質の高い教育は無償で得られるものではありません。
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Unknown (城さんに感謝)
2011-01-05 19:30:07
城さんが勇気をもって大人社会の欺瞞を告発してくれたおかげで、自分の頭で物事を考えられる若者達は平和的に日本を良い方向へ変えようとし始めましたね。

京都大学で非正規雇用の問題に対して真っ向から論戦を挑む人たちが出てきたようです。

http://extasy07.exblog.jp/10004912/
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Unknown (Unknown)
2011-01-05 22:26:28
ここの人たち、そういったユニオンのこと大嫌いだよ。
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この間の会話 (ネルフ本部)
2011-01-06 15:58:22
大学1年生を持つ親と私

私:「息子さんが、新卒の就活で困ったらぜひ就職留年させましょう。」
親:「あたりまえでしょう。既卒だから新卒の求人に応募できないでしょう。」
私:「だから、就職留年すればよかったと後悔しています。」

 この親も、数年たてば就職留年の大切さがわかるでしょうか。または、城さんの著作を数冊読んでもらえば、考え方は変わるのでしょうか。(笑)

 大学卒業後即正社員になっていないと、非常に生きづらいと感じています。

 私が、就職できないのは、自分自身にも原因が当然あると思います。しかし、社会制度(名目の終身雇用で入口が限定的)の方が影響が強すぎるとおもいます。だから、当事者は、職業訓練などでスキルアップに励んでもらう一方で、社会には雇用制度の見直しを図ってもらう。

 なのに、周りからは、あなたが悪い。社会制度の中で生きる努力をとか精神論的なことを言われてうんざりしています。新卒で正社員になれないと、書類選考で不利になる。これからを見据えて就職活動しても、一番のマイナス要因でついていきます。
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トヨタ400人の正社員採用 (yasu)
2011-01-06 16:54:17
トヨタが正社員を400人採用するようです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110105-00000059-jij-bus_all

年功序列、終身雇用を維持したままでのこの採用、城さんはどう思われますか?

今回採用した人は給与体系が別条件で定昇やベアはありません。ていう裏があったりしないんでしょうか。
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