Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

なぜ経営者は「竜馬がゆく」が好きなのか

2009-11-22 16:01:33 | その他
今年はなぜか重厚長大ドラマが流行っている。「官僚達の夏」「不毛地帯」
がそうだが、やはりトリは今月末からNHKで始まる「坂の上の雲」だろう。
そういえば来年の大河は「龍馬伝」だし、プチ司馬ブームが再来するかもしれない。

と思っていたら、今週号の週刊SPA!で、文芸評論家の福田和也と坪内祐三が
司馬作品について面白いことを語っている。詳細は書かないけど、要するに、
「あれは大衆文学なんだから、政治家や企業トップが愛読書にあげるな」
という話だ。

実際、知人の60代曰く、(学生時代に)「坂の上の雲」の新刊が発売されるのが
待ち遠しくて仕方なかったのだそうだ。DVDやゲーム、ネットなんて無いわけ
だから、新刊のインパクトが今とは全然違うわけだ。

ところで、当時は学生運動の真っ盛り。左翼じゃないとバカ扱いされた時代だ。
左翼的にはああいうのはどうなんですかね?と聞いたところ、
「いや、そういう本じゃないから皆楽しんでたよ」とのこと。
なるほど、確かに大衆文学である。
今で言うと、「派遣の品格」見て雇用問題を語るやつがいないのと同じだ。
逆にいえば、当時のエンタメとして受容した世代が経営者層になってるわけだから
「トップがすすめる司馬作品」なんて特集がプレジデントあたりで成立してしまう
わけだ。

ただ、それより下の世代による司馬作品の捉えかたは、団塊以上とはかなり異なって
いるはず。悪いけど今の時代、少なくとも2、30代にとっては、歴史小説なんて
大衆文学にすらなりえないわけで、各自が各自のエンタメをこなしつつ、+αで
そういったものも消化していると思われる。
その+αが何かというのは人によるけど、僕の場合は『生き方』だと考えている。

僕自身、何かの雑誌の特集で「好きな司馬作品は」と聞かれて答えたことがあるけど
「時代の転換期において、生き方として知っておくべき」という観点から回答して
おいた。
一世紀前の日本には、枠組みを壊すことで斜陽国から新興国へ脱皮した時代が
あったという事実は知っておくべきだし、その空気を嗅ぐには、小説というツール
は実に具合がいい。

そう考えれば、「エピソードなり生き方なりに、それぞれの価値を見出す+α世代」
は割と健全な一方、若い頃に読んだエンタメ小説を嬉々として語るノスタルジー世代
というのは、実はむちゃくちゃ視野が狭い生き方をしてきたのではなかろうか。
定年退職後にボケたりアル中になったりする人の話は実際に聞くことがあるが、
引き出しの少ない人生の裏返しなのかもしれない。

ついでに言うと、“大衆文学”という死語で区切っちゃってる福田、坪内の両氏も
「竜馬がゆく」をあげて悦に入る(宮仕え一筋ウン十年の)サラリーマン社長と
どっこいどっこいである。

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15 コメント

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竜馬を持ち上げ過ぎ (sakyo)
2009-11-23 00:31:39
 司馬遼太郎の作品は比較的好きな部類ですが、心酔するほどではありません。なにか登場人物を”良い人”に描きすぎているきらいがあると感じますので。
 歴史全般に対する知識、考え方、など一般の人が及ぶものではないのは明らかですが、あくまでも”小説”、”随筆”として著作を世に送り出しておられるのであって、”司馬史観”を絶対正しいもののように賞賛するのは、あまりにも持ち上げ過ぎでよくない気がします。
 いやみな言い方をすると、「竜馬がゆく」が愛読書という人は、「尊敬する人は坂本龍馬!」と公言することで「自分も「竜馬がゆく」に描かれている龍馬の様な人間なんだ」、と”思い込んでいる”、あるいは”思い込みたい”、”誰か龍馬に似ていると言ってくれ!”とほのめかしているような気がしてちょっと引いてしまいます。
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Unknown (K一郎)
2009-11-23 03:43:57
>そう考えれば、「エピソードなり生き方なりに、
>それぞれの価値を見出す+α世代」
>は割と健全な一方、若い頃に読んだエンタメ小説を>嬉々として語るノスタルジー世代
>というのは、実はむちゃくちゃ視野が狭い生き方を>してきたのではなかろうか。
>定年退職後にボケたりアル中になったりする人の話>は実際に聞くことがあるが、
>引き出しの少ない人生の裏返しなのかもしれない。

私は30代前半ですが、司馬小説の大ファンです。
司馬小説の多くは、エンタメとしては
間違いなく面白いと思います。
主として成長期を描いているんで、
定年退職後にボケたりアル中になったりする
世代にちょうどよかったんですよね。

ぴったりはまりすぎてて、娯楽もすくないから
「おまえあれ読んだ?」っていう扱いだったんだと
推測しています。

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小説を経営に持ち込むな (1970年生まれ)
2009-11-23 11:00:17
私も司馬作品は好きですよ。しかし、あくまでエンターテイメントとして読んでいます。
私は、歴史上の人物の行動は実際のビジネスに役立つという人間はダメだと思っています。
その実例:私の2つ上の先輩、「坂の上の雲」の愛読者で自分は大山巌のようにありたいと思っていたのですが、ただの判断のできないボケーとした人間でした。

その実例2:自分はマネージャーであるという意識が過剰で、組織での人材育成や部下の管理などの実例を旧海軍に求めた人。読んでいる本は旧海軍出身者の「海軍はよかった」という本。負けて消滅した組織に学んでどうするんだと思いましたが・・・。

ちなみに二人とも30代です。勤務しているのは典型的日本の大企業です。そうなると、仮に幸運にして彼らがリーダーになれるのは最低でも20年はかかるんですがね。それにマネージャーと言っても実態は部下なしの「名ばかり管理職」。

小説は個人のエンターテイメントとして読めばいいのです。それよりも現場で読んでおく優先度の高いものとしては、「派遣法」や「個人情報保護法」など雇用形態の違う人と一緒に働くために必要な知識や金融機関でセンシティブな情報を毎日扱う上で最低限必要な知識です。
20年後自分がリーダー(大山巌や山本五十六になれるとでも思っているのか)になるための座学よりも現場で適切な問題解決が可能になる社会規範の方を学ぶ方がよっぽど優先順位が高いと思います。

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関係ないけど (じゅう)
2009-11-23 13:36:53
モリタクが以前サンプロで日本とEUの平均勤続年数ピッタリ一緒だったと言ってて、城さん中堅以上の硬直性と下請けの流動性って反論してたけど、モリタクはILOの2003年のデータを参照にしてますね。これは女性と非正規も含めたデータで、平均勤続年数短くなるのは当然です。
データの使い方が本当に恣意的ですよね。モリタクは。
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グラビア界においても (自立の色)
2009-11-23 15:52:48
http://journal.mycom.co.jp/column/idol/007/?rt=na
格差の固定化はどこも同じみたいですね~。
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髑髏酒? おいしいですか? (しみず)
2009-11-23 17:34:15
>定年退職後にボケたりアル中になったりする人の話は実際に聞くことがあるが、
引き出しの少ない人生の裏返しなのかもしれない。

とのことですが、
退職後に、「第二の人生だ」って、いきなり新しいことを始めようとしても、たぶん無理ですからね。体もつらいだろうし。

ところで、
福田和也さんて、森永卓郎さんと、かたちが似てませんか?
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Unknown (めるめる500☆)
2009-11-23 19:55:03
本当にそう思ってインタビューに答えているのならそれはそれで結構だと思いますし、とりあえずビール!的なノリで答えているのならそれも結構だと思います。
今の経営者は新中間大衆時代を生き抜いてきたということの表われだと思います。


>若い頃に読んだエンタメ小説を嬉々として語るノスタルジー世代
>というのは、実はむちゃくちゃ視野が狭い生き方をしてきたのではなかろうか。

40年後には、40年後の60代=今の20代の(階層的な意味での)下3割はエンタメ小説どころか、学校などで無理やり読まされるものを除いて小説そのものを読んだこと無い、なんてことになってるかもしれませんよ。
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司馬氏 (kenji)
2009-11-23 19:59:25
司馬氏がなくなったとき一連の作品を一気の読んだ。最新作から逆に読んだ。面白いが、一番よかったのは<人々の足音>である。
 
 彼の書き方は<空海の風景>についての彼のエッセイをよむと、感覚的、絵姿的であり、この点にかんしては、彼は一貫している。従がって推理小説のような書き方をしていない。
 それらは小説であるかのようであったが、私は講談を小説風に記したものが正しい判断で、講談より劣るなであった。ただところどころに引用されているエピソードは面白い。

 然しあれらは小説風講談である。

何よりも歴史観が奇妙である。それは一度事件を自分で調べるべク資料を読むと、司馬氏は何を考えているのだろうと思う事があった。

 いずれにしても小説とはいいがたい。小説風講談として読むのが正解であると私は読んで、おもった。

 彼の判断は論理的ではない。さらに付け加えると嘘が多い気がする。勿論それは講談風の嘘だが。
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最後は現場を見るしかない ()
2009-11-23 21:03:11
>モリタクはILOの2003年のデータを参照にしてますね。これは女性と非正規も含めたデータで、平均勤続年数短くなるのは当然です。

「日本は解雇しやすい」というのも下請け及び非正規をカウントしているため。「若者の3年内離職率はそんなに増えていない」という意見も、昔から中小は流動化しているからそう見えるだけで、メガバンクなんて4割辞めたところもある。結局、実務が見えていない学者はマクロの数字しか語れないということだろう。
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いや (Ts)
2009-11-23 21:54:10
彼は学者じゃないし。(笑)
芸人セールスマン説のほうが真実だと思いますよ。

メガバンク4割は衝撃的ですね。比率的に考えて辞めないはずの体育会系もそこそこ辞めてるハズだし、特別人脈枠(いわゆるコネ)とのんびりマイペース派以外は脱出したってことか。人事は相当危機感持ってるハズだ。
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