Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

リストラされたけど、子供11人育てた男の物語

2009-03-24 14:30:54 | 
リストラや倒産というのは、転職がまだまだ一般的ではない日本社会にとって
人生の一大転機と言えるだろう。
本書は、ガチガチの終身雇用が崩壊し、人生ゼロリセットされた男の物語である。

時は幕末。主人公は一橋慶喜の近習。
影武者の役目も果たすため、羽織る羽織は主君とお揃い。
先祖伝来の終身雇用職である。
ちょんまげと二本ざしという違いはあるが、下級旗本なんてまるっきりサラリーマンだ。
直参という格は高いが給料は安い、(現体制の中では)安定性だけは抜群という点で
大企業のサラリーマンに似ているかもしれない。

だが、維新の嵐とともに体制自体が崩壊し、終身雇用(というか先祖代々雇用)も
終焉を迎える。
「武士の権利を守れ!」といって既得権を擁護してくれる労働組合や
左派政党はいないので、様々な特権はゼロリセットだ。

藩士たちはいくつかの選択肢を与えられる。
1.藩をやめ、新政府に就職する
2.民間で起業する
3.賃下げされても構わないので、やっぱりこれまでどおり殿のお側に置いてください

普通に考えれば1、血気盛んな若手なら2という感じだろうが、主人公や同僚たちの
多くはしっかり3を選んでしまうのだ。このあたり、なんとも日本的な発想だと
思うが、当然、数年後の廃藩置県で彼らはみな路上に放り出されることになる。

ところが、主人公の凄いところはここからだ。
彼はそこからめげることなく、民間や役所へ就職し、50歳を超えて起業も経験している。
それも、11人の子供を抱えながらだ!
幕府の小役人のどこにこういうバイタリティが残っていたのか不思議な気もするが、
社会全体がゼロリセットされる中で、国の隅々にまで新たな活力が湧き上がった
ということだろう。維新とは、価値観も含めた一つの革命だったのだ。

考えてみれば、幕府260年の身分制度の中から、近代日本は再生したわけだ。
たかだか戦後60年の昭和的価値観から覚醒できないはずは無い。
それにはもうちょっとの刺激が必要だとは思うが。

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4 コメント

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Unknown (Unknown)
2009-03-24 15:45:26
ゼロリセットされることで既得権益も抵抗勢力も無くなり、それはビジネスチャンスが生まれたと取ることもできますね。

現代だと既得権益や抵抗勢力は温存されたままなのが痛い所です。
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維新志士たちは主君に向かって改革した ()
2009-03-24 23:35:59
 志士と呼ばれる人たちは自分たちの既得権、また、少し前まで仕えていた殿様たちに向かって次々と改革の指令を下していったのだと考えていくといかに偉大なことであったかがわかります。
 翻って、現代において民主党は支持団体の連合のために労働制度を見直すことができないという人が多いですが、中選挙区制度下の社会党と違い、連合票だけでの当選は無理で無党派層の支持がなければ小選挙区では勝利できない。旧社会党の人も相対的に減ってきていることから政権をとったのち必要であればメスをいれてくるはず。
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松下村塾 (さちよ)
2009-03-25 17:51:59
>たかだか戦後60年の昭和的価値観から覚醒できないはずは無い。

本当に明日平成維新でも起きて欲しいと思う今日このごろです。

…が維新前は国学思想から進化した尊王攘夷思想がわりと盛んで、吉田松陰が松下村塾を開くなど教養もありました。
(あ、そういえば同じ山口ですね。周防と長州の違いはありますが)
知識のバックボーンとして四書五経とか読んでいました。

今の人がそのような教養があるでしょうか。
先日読んだ本に「戦後のGHQからの客観的教育が文章を読んだり表現したりする論理力を破壊した」と書いてありました。
今、子どもたちが受けている「点数がすべて」の教育は昭和的価値観再生産教育だと落ち込みます。

簡単に平成維新を目指すのは難しいですね。
今、松下村塾に当たるものは何でしょうか?
ただ長州に近いところ出身の城さんですからあきらめずに目指してください。
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Unknown (d)
2009-03-27 02:31:27
週間SPA誌の書評も興味深く読ませてもらいました。「財務3表~」は早速買ってきました。この辺の分野もちびちびと勉強してみようと思います。
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