Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

格差の原因は日本型雇用にある

2009-06-20 09:41:54 | 経済一般
実は、日本型雇用の支持者には2つのタイプがいる。

多数派はなんとなく流れ的に支持しているグループで、自己責任論から規制バカまで
含まれる。※
彼らは自分の目で見える範囲のことには敏感だが、問題意識を広げて社会全体の
システムを考えたり(トレードオフ)するのは苦手で、非正規雇用や下請け企業が
自分たちの既得権を支えているという事実も理解していない。
(理解しようとしていないのかもしれない)

こういう連中は芯が無い分、マルクスから教育勅語まで、あらゆる理論を掘り出して
節操無く身にまとうのだが、薄皮をむくように一枚一枚はいでいくと、たいていは
卑小でうすっぺらいエゴが顔を出す。
薄皮をはがすには、具体的なビジョンを聞いてみるといい。
目の届く範囲以上のことは考えていないから、
中身のある答えは返ってこないはずだ。


だが、2番目のタイプは少々手ごわい。
積極的な日本型雇用論者とでも言うべきグループだ。
要するに、長期雇用が日本のメリットなのだから、従来どおりの日本型雇用を軸に
雇用調整は非正規雇用でカバーしようとする理論で、現在の大手のモデルは
まさにこれだ。連合系の御用学者はもちろん、経団連の中にも支持企業は多い。
(国内生産比率の高いトヨタが代表)

彼らの主張は合理的だろうか。

長期雇用のメリットについてはいろいろ議論があるが、個人的にはそれほど残って
いるとは思えない。たとえば、企業が早期退職を募集する際、きまって募集要件は
45歳以上だ。
本当に長期雇用を重視しているなら、逆に45歳以下で募集するべきだろう。
結局、長期雇用のメリットなるものは、あるとしても一部の業種の話だろう。
守りたきゃ勝手に守ればいいだけの話で、少なくとも規制で一律に強制すべきものでは
ないはずだ。

なにより、日本型雇用はあまりにも弊害が大きすぎる。
コストカット圧力はすべて非正規側におしつけられるので、
結果的に非正規側から正社員側への所得移転が行なわれる
ことになり、格差は決定的に拡大する。


社会保障である程度の再分配は可能だろうが、先行した韓国の事例を見ても
わかるとおり、地盤沈下的に非正規比率が拡大し、処遇は低下すると思われる。
この理由は、単純労働に固定化される傾向のある非正規雇用は、新興国の労働者と
バッティングし、賃金水準が連動してしまうこと、そして、正社員長期雇用が以前
ほどメリットを産まなくなっており、パイが増えなくなっているためだと思われる。

これまでの道を行くのか。それとも別の道を模索するか。
現在の問題は、そういった論点を提示する作業を、
政治はもちろん官も一切怠っていることだ。

連合の主張をコピーして労働経済白書なんて作っている役所など論外だろう。

総選挙を気に政治家の薄皮が全部向けて、こういった論点が浮上してくることを
祈るばかりだ。


※自己責任論:「ワーキングプアは努力が足りない」
 規制バカ:「派遣さんが可哀そうだから、規制で派遣を無くしてしまえばいい」
本人たちは気づいていないが、どっちも本質的には変わらない。

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22 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (マツケン)
2009-06-20 11:17:20
日本型雇用を積極的に採用する理由の一つは、
既存の直接雇用正社員が求めているのが、
互いに切磋琢磨して競い合って会社の業績を伸ばすよう努力する仲間ではなく、
単に自分より若くて経験も少ない小間使い(新卒者)であるからだと思います。

そしてその新卒者を自分達の風土に染め、
自分の会社内だけで通用する論理を使って、
自分達が過ごしやすい環境を作りたいだけではないでしょうか。

そういった人達にとっては、他の会社で経験を積んで広い見識を持つ人が同じ立場に増えることは危険です。
自分達のフィールド以外では勝負する力もないのに大きな顔をしていますから。
実際はただの家畜に過ぎないのに困ったことです。

家畜が幅を利かせて競争が疎かな日本の将来が不安です。
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システム (若者)
2009-06-20 18:23:26
 つまり、現在の雇用慣行では企業の中でいやな思いをしても、生産性が低い要求をされても「やめないこと」が得するという「システム」で、このシステムの下では、再就職が難しいから、「規制を強化する」ことが労働者の保護と思う人も多いということですね。

 「均衡」という言葉を使うのか、よくわかりませんが、雇用を流動化させ、再就職できて職場も変えられるようなシステムに移行するには、現在の相互の補完性を持つ日本型システムの「均衡」を打破する必要があるわけですね。

 現在は古いシステムが経済成長という前提を書いたためにぼろを出している状態だとしても、本質的に、「上から」枠組みを変えなくては(政策として実行されなければ)「均衡」を打破することができないということでしょう。既存の政党にこれができるのか、疑問に思っております。
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理論から実践へ (Yas)
2009-06-20 18:25:49
さて、問題は、どうやって日本型雇用を解体していくか?ですよね。
論理的には城さんをはじめとする論者が正しい。
それはもう我々には十分すぎるくらいに分かっている。
次にどうするかです。理論から実践へ。

城さんは、日本型雇用解体への具体的な行動まで興味がおありでしょうか?
それとも、言論で一般国民を啓蒙することに専念したいですか?
具体的にどうやって変えていけるか、良いアイディアとかありますか?

誰にメッセージを伝えるかも重要ですよね。連合や経済界の連中を説得して改革を促すのか、非正規の人たちに知恵を授けることによって改革を促すのか。

非正社員側の人達って、城さんの読者になっているのでしょうか?おそらく、彼らの大半は学歴も高くなく、経済誌など読んだこともないと思います。
非正規で苦しんでいる人たちに城さんの言論を聞かせるにはどうしたら良いのでしょうね?

日本言論界のひとつの特徴は理論を論じて満足してしまうところ。学問の世界もそう。
しかし、現実世界に影響を及ぼすには実践的にプラクティカルになる必要があります。

何とか知恵を出し合いましょう。
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Unknown (epi)
2009-06-20 22:21:31
>彼らは自分の目で見える範囲のことには敏感だが、問題意識を広げて社会全体のシステムを考えたり(トレードオフ)するのは苦手で、非正規雇用や下請け企業が自分たちの既得権を支えているという事実も理解していない。(理解しようとしていないのかもしれない)


自分の既得権を手放してまで社会のために働く、なんて殊勝な人は今どきいませんわな。今の国会議員や財界トップの方々は、まもなくやってくる年金生活が楽しみな人たちがいっぱいですから(笑)。年金を含め、既存の制度を守るのが最重要でしょう。制度に手をつけることは、自分たちの将来の取り分に影響が出かねませんし。
少なくとも今の20代~30代の多くが「将来に希望が持てない」と言って政治に無関心でいる間は、既得権者の方々がさらに既得権をガチガチに固めていくことでしょうね。残念ながら。
せめて、若い人たちも選挙ぐらいは行ってほしいな。

ちなみに、昨今若者の間に「蟹工船」がブームですが、併せて「楢山節考」もおすすめ・・・と言うのは過激すぎですかね(苦笑)
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Unknown (Unknown)
2009-06-20 22:59:17
この前クローズアップ現代でアメリカがこけた今、日本型雇用を見直そうみたいなのがやってました。ゲストの教授はいい所も悪い所もあると言っていましたが、ちょっと危険な感じがしました。アメリカ発の不況の中で、あらゆる規制緩和は間違い的な流れにならないといいんですが。
日本の活力が失われている現状からして、問題点を洗い出し、原因を突き止め、改善するために、松下幸之助の言う「不況なお良し」だと思うのです。
日本型雇用が優れているのは皆知ってます。誰も犠牲にせずに維持できるなら喜んで賛成します。しかしもしそうでないのなら、リスクをどのような基準で分担するのが公平であるのか、良心を持って判断してもらいたい。そう思います。
ところで韓国では雇用問題とか世代格差問題とかってどの程度盛り上がっているのでしょう?
非正規の比率が高いだけに政治にも反映されそうなものですが。そうはならないのかな?
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Unknown (Unknown)
2009-06-21 00:05:48
今度ナイフで刺しに行きます。
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! (pingu)
2009-06-21 00:09:58
かつてはあれほど熱心だった民主党も、「格差是正」を一切言わなくなりましたね。(支持母体である連合の意向でしょうか)党首討論で鳩山兄氏が若者の自殺に触れていましたが、それが日本型雇用による閉塞感に起因するものだとは考えもしていないのではないでしょうか。

竹中平蔵氏も、オランダ型の労働市場を志向していたが、財界、連合の反対で断念したと述べていました。既得権益層が権力を持ち、政治にも影響力を及ぼし続ける限り、改革は容易ではないかもしれません。

労働ビッグバンはいつになることやら。
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Unknown (馬波)
2009-06-21 02:01:17
日本型雇用のお陰で大学がどんどん閉鎖して行く。
雇用が流動化しなければ25歳以上の人達は入って来ないことにいつ気付くのか…
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Unknown (めるめる500☆)
2009-06-21 02:47:42

政権選択をめぐる議論にするには、ちょっと難しすぎるかな、とは思います。
民間企業の雇用体系はその企業と労働組合で決めればいいんであって外から
とやかく言うべきではないとして、どうやって公務員(含・警察や自衛隊の現業組)
の雇用体系を非日本的雇用に持っていくか。これは現時点では政策論争や
ロードマップというよりは、技術的な問題だと思います。(日本的雇用によって
組織のモラルを維持してきた面があることは事実だと思います。じゃあ、いかに
してモラル低下を伴うことなく非日本的雇用に持っていくのか。
諸外国を見ても、警察や軍隊のオフィサーは退役年齢までは雇用は保証されている
ように見えます。(ソルジャーの部分は、もともと年限のある雇用契約なので、
日本の製造業で言えば期間従業員みたいな感じなので問題ないでしょう。))
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シャドーボクシングを続ける貧乏代表 ()
2009-06-21 06:09:46
この問題解決するのに必要なのは、貧乏代表に正しい敵を見極めさせることだと思います。
彼らは結局何もかもが経営者が悪い・規制緩和が悪いの一点張りで、正規・非正規の身分格差 元請け・下請けのコストカットヒエラルキーには目を向けません。
労働分配率なんかはバブルが終わったあとは彼らの言う悪徳資本家の巣窟のアメリカより高くなってるということを、誰も指摘しないのです。
労働者同士で連携しても正規・非正規の身分格差は埋まらないのに、雨宮なんとかは経営者の陰謀にはまるだけとか言ってるわけですし。
http://careerzine.jp/article/detail/619?p=2

森永卓郎は確信犯でビジネスにしてるのでもうどうしようもないですが。
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