城台山日記

 城台山の麓で生まれ、毎日この山に登り、野菜・花づくり、読書、山登りをこよなく愛する年寄りの感動と失敗の生活日記です。

日本人の愛憎は過少? 20.9.3

2020-09-03 13:03:38 | 面白い本はないか
 昨日秋バラに備えて、剪定と追肥を一部のバラに行った。秋バラは10月下旬から11月中旬まで楽しめるはずなのだが、ここのところ早く咲き始めるのが多くてうまくいかない。その原因に夏の暑さがいつまでも続くことにあるのではないかと思っている。バラの本に書いてある8月下旬から9月上旬までの剪定、追肥だと10月までに咲き終わってしまう。もう一つ考えられるのは剪定が浅すぎるのではないかということである。そこで、今年は例年より少し剪定を遅くし、来週くらいに剪定するものを残した。結果はどうなるかお楽しみである。


 夏の花が咲いている 咲き終わってから剪定する イングリッシュローズ

 同 フレンチローズ

 剪定したイングリッシュローズ 葉があまりついていないため、深く剪定できない

 さて、先日大澤真幸「憎悪と愛の哲学」という本を読んだ。その中に大変興味深い箇所があったので、紹介する。明治時代に活躍した森有礼の孫、森有正(哲学者)が1950年代にフランスにいた時の話。フランス人女性との会話の中で、三発目(広島、長崎の次)の原爆が落とされる国はどこかとの問いに、彼女は「それは日本よ」と即座に答え、有正は大変驚いた。彼女が言うには、原爆のような凶悪な爆弾を落とされたのに、それを落とした敵にあれほど怒らない国民はないと。そのことは、アメリカが終戦のすぐ後(1945年9月~12月)に行った戦略爆撃調査団による調査の一項目「原爆投下に対して米国に憎悪を感じるか」という質問に対して、全国では感じる12%、広島・長崎でも19%と答えた。

 加えるに、東京裁判で「平和に対する罪」「人道に対する罪」は戦勝国によって作られた事後法であるから、無罪(通常の戦争犯罪に対して責任がないとは言っていない)としたラダビノート・パールのある重要な指摘がある。それは広島原爆死没者慰霊碑に刻まれた言葉「安らかに眠って下さい 過ちは繰り返しませんから」に対するもので、彼が言うには「ここに祀ってあるのは原爆犠牲者の霊であり、原爆を落としたのは日本人でないのは明白である」、そして世界連邦アジア会議で原爆投下者を厳しく非難する発言をしている。

 ここからは著者の考えである。原爆投下に最も責任があるアメリカ人(オバマが広島を鳥羽サミットの時に訪問したが責任は認めていない)が過ちと認める前から、勝手に広島市民の方がー世界市民を代表してーもう過ちは繰り返しません(アジア太平洋戦争に対するものだったらまだ理解可能だけれど、おじさん注)と言うべきではなかったのではないかと。広島市民も日本人も「敵」をそれほど憎んでいない=敵に対する怒りや恨みが大変小さいということになる。一般的に憎悪を払拭した者の方がそれができない者より立派で倫理的に優れているかのように言えるのか。アウシュヴィッツの場合を考えてみれば、これは世界の常識ではない。

 ここで著者はこのことと日本人がアジアにしてきたことに対する無反応はそのことの裏表ではないかと。日本人は、アジアの人々から、とりわけ中国人や韓国人からかつての侵略戦争や植民地統治に関連した問題で謝罪を求められると、ひどく当惑したり場合によっては逆ギレしたりする。多くの日本人は「こちらで申し訳ないと感じているのだから、そこまで執拗に謝罪を求めなくてもよいではないか」と心中でつぶやいているのではないか。アメリカに対し、原爆投下についての反省や謝罪を強く要求しないし、アメリカをさして恨んでもいない。そうすると、日本人を敵と見なし、日本人を恨む人への想像が働きにくくなるのではないか。投下した側アメリカの憎悪の過剰と投下された側日本の憎悪の過少が見られる。憎悪過剰の側のアメリカ高官に回心、具体的には原爆投下ということの重みへの心の均衡回復として憎悪の対象であったソ連に対する融和策を提唱したが、原爆開発に参加しなかったトルーマン大統領(この人には回心はない)がこれに反対し、冷戦が開始された。真の愛は、憎悪からの転回としてのみ、ありうるのではないか。

 おじさんは著者の見解にためらいながらも一部賛成する。佐伯啓思は日本が大東亜戦争に至る道はある意味日本が明治以降近代化する過程における必然的な結果だと言っている。日本には無常観が強く流れており、大災害や戦争もある意味「仕方ない」といった受け身で受け止める。当然、原因の追及さらには責任の追及は手ぬるいし、水に流したがる(これでは強い憎しみなど湧きようがない)。保守主義まして右翼を表明するものは、日本人のふがいなさに憤慨し、憎しみをもっと燃やしてアメリカの責任をもっと追及せよと国民に迫っても良いのではないか(笑い)。

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