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天然コケッコー
2007
山下敦弘


結論から言えば、この映画はソノ筋の方は観ないわけにはいかないでしょう。
むしろ、私が観るタイミングが遅かったのかもしれません。
率先して布教活動にいそしむべきでした。

私見ですが、この映画を好きだと言ってはばからないいい歳の男は何かを患っていると予想されます。
けれども、間違いなくターゲットがそこに向けられている。
山下監督が同い年だということからも「狙い」が分かります。


やはり原作が名作過ぎる。
あまりにも「くらもちふさこ著の原作に忠実な描写のため「映画としてのスペシャルさ」が少なかった。
決してそれが悪いことじゃない。
本作を映像的にどう落とし込むかなんてことは最初から分かり切ったことで、原作の持ち味をいかにそのまま映像化するかということだけです。
それ以外のことをやってしまったら別の作品になってしまう。

山下監督の引きの目線がハマります。
ほぼ主観ではなく「こうであったら良かった」という瞬間を空想するかのような引いた映像。
監督自身の個人的な思い入れが少なかった(と思う)分、大多数に伝わる作品になっていると思います。
原作の設定からして「現実離れした田舎」であるために感情移入するための余白が広い。
ステージとして相当な田舎を選んでいることで、純朴すぎるキャラクターの中にも潜むリアリティを上手に描いています。あ、これは原作の力か。

どのシーンがいちばん良かったかというのは愚問で、こういう空気を感じに行くという映画です。
おかげで、急に思い立って金曜の深夜にばあちゃんの墓参りのため実家に向かい、所々で写真を撮り、土曜の深夜に帰宅するというスケジュールを強行してしまいました。



こういう風景の田舎を持つというのはとても贅沢なことです。
しかし、その風景はだんだん少なくなっていく。
実際、私の実家である静岡県浜松市の郊外もここまでの田舎ではないのですが、それなりに遊びまくる場所は山ほどありました。
しかし、昔遊んでいた山がまるごと削り取られ工業団地とニュータウンに変貌しつつあります。
今からそこで育つ子供達はコンクリートの川と植林された林、夜間立ち入り禁止のグラウンドで遊ぶことになるんですね。
それを行政では「開発」と呼ぶそうです。

コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
Unknown (juraky)
2008-03-19 02:17:16
多分、それは病気です。
私も同じ治らない病を患っていますが。

「湘南爆走族」の卒業式の突き抜け方は私も大好きです。
津山さんの自己欺瞞なモノローグのリアリティが素晴らしい。
同じテーマが「ハイスクール!奇面組」のエピローグでもありますね。

なぜ、数ある湘爆のエピソードからあのシーンを映画化しないのか。謎です。
 
 
 
Unknown (adam yang)
2008-03-18 02:32:02
言いたくはないが、この主人公の女の子が、すごい好きです。

実際いたら惚れるでしょう。確実に。

全然別の話なんだけど、映画に限らず卒業式を描いた瞬間で僕が一番好きなのは「湘南爆走族」の最終巻です。



 
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