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EUREKA ユリイカ
2000
青山真治


すみません、本当にただの食わず嫌いでした。
とても良い映画です。
何故今まで観ていなかったのか悔やまれます。

「感動の人間ドラマ」なんて書かれていると大げさなモノかと思われがちですが、全くそうではありません。
じわじわと伝わる人々の話。
もちろん、モチーフはバスジャックとそれによって心を歪まされてしまった人々という非現実なのですが、それはモチーフとしてだけ。
テーマはやはり「人間」です。
尺がおしなべて長い青山監督ですが、その尺は必要な様です。
分かりました。

本作は217分というかなりの長尺ですが、それを本当に感じさせません。嘘じゃありません。
多分、シナリオは100ページあるんか?という台詞の少なさですが、この映像は凄いです。
モノクロ(セピア側)で綴られるストーリー。ストーリーというか、人生。
バタバタと忙しい映画になれてしまうと、考える前に答えを次のシーンで見せられてしまったりして、まったく考えることなく終わってしまうことがあります。
しかし、本作では余白というかのりしろというか、もちろんその一件無駄に見えるカットにも意味があるんですが、多分、そのカットの持つ一番重要な意味は「そんなに物事を白か黒かで考えられんよ」と言うモノではないでしょうか。だから考える時間をわざと残す。
そこを表現したかったからこその表現ですね。
映像も素晴らしい。田村正毅さんという方が回していたそうです。凄いキマったアングルの連続。久々にここまで好きな映像が見られました。上手い、というか染みこむ映像。


ところで、こういった人を描くことで何かを表現しようとする映画についてよく揉めることに「リアリティ」というのがあります。
それについて先日とある監督とお話ししていたときにかなりの部分で合点がいきました。
「リアリティを追求した物語は所謂現実に沿った物語にならない。もちろん、シンプルになんてならない」
人を描くためには、その人の心が動く出来事が起こらなければいけない。
「日常の淡々とした中で描かれる」映画であっても、その「淡々」の中に必ず日常からかけ離れたことが起こり、それに対する心の動きを人間に代弁させて表現します。
やみくもに「リアリティ!リアリティ!」とか言ってるバカは何も起こらないけれども押しつけがましい説明くさいクソつまらない映画を撮ってしまうわけです。
当然、身の回りにいる人たちに何も怒らないわけが無く、何かが起こることによるその人の言動がその人な訳です。
何もおこらなかったら、それこそが人間じゃない幻影ですね。

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コメント
 
 
 
Unknown (N.A.P.)
2007-04-27 09:23:11
これは、”映画アダプテーションでニコラス演じる実在の脚本家、チャーリーカウフマンがハリウッドの映画ワークショップにて、先生とやりとりする場面”と関連する話題ですね。

なにもオキナ系の映画って、ゴーストワールドとか、アビバの気持ち、とか入るのかな?この2つの感じがそうであれば、自分は大ファンです。

もし見てなければ、試してみてください。
 
 
 
Unknown (juraky)
2007-04-27 11:16:43
>>N.A.P.さん
どれも観てないです。
勉強不足すみません。
何も起きない系は私にとってはダメな邦画のことです。「間宮兄弟」とか。

しかし、その出来事は大げさである必要は決してないのです。もの凄い微妙なさじ加減。
洋画については舞台自体が非日常なので、そこまでの読解ができないです。
 
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