備前の古社を訪ねる(備前国内神名帳の研究)

備前の由緒ある神社を巡礼する

コラム198.履掛天神宮(履掛石)

2009-08-03 23:35:33 | Weblog
履掛天神宮(くつかけてんじんぐう)。
場所:備前市伊部1559。JR赤穂線「伊部」駅前から北西へ(国道2号線と駅正面市道の間の道路)約260m。「履掛天神宮」に駐車スペースはある(不老川沿いの道路から境内に入る)が、狭い旧道(近世山陽道)沿いに備前焼の店が並んでいるので、駅前の無料駐車場に自動車を置いて散策するのもよい。
「履掛天神宮」(写真上)の本殿の背後に「履掛石」という石が置かれている。上が平らで枕のような石だが、これこそ、菅原道真公が左遷されて大宰府に西下する際、腰かけて休息した石なのだという。「履を掛ける」というのは、旅の途中、履(沓:くつ、わらじ)を履きかえ、古い履を松の枝に掛けると疲れが取れる、という言い伝えのこと。峠の上り口など難所の前で休憩することを指したようだ。このため、「沓掛」という地名は各地にあるらしい。
誰それが腰かけた石、というのも各地にあり、神社境内に置かれていることも多いが、もちろん、史実に合っているかはわからない。この「履掛石」も菅公が本当に腰をかけた石なのかはわからないが、もともと伊部は菅原家の荘園であったともいうので、天神宮が創建されてもおかしくはないようだ(ちなみに、菅原氏はもともと忌部氏であったが、菅原道真の曽祖父のときに菅原氏に改めたという。伊部という地名は忌部氏から来ているものと思われ、縁がある。)。ただ、この石が本殿の後ろに置かれているということは、明らかに磐座の石であったとしてもよいのではないか。菅公とは無関係に祀られてきた石かもしれない。


写真上:履掛天神宮。流石に備前焼の狛犬が立派。なお、本殿の屋根も明るい色の備前焼の瓦が葺かれている。


写真中:履掛石。正面から。


写真下:履掛石。横から。何の変哲もない、ただの石のようだが・・・。