アイデアスケッチは建築家の視覚で表した言葉です。そして音楽と同じようにそのアーテイスト特有のテイストやフィーリング、雰囲気あるいは味を持っています。そのタッチや線の強弱、あるいは色彩のハーモニーなどですぐにわかります。音楽でいうとピアノそのものは同じでも演奏する音楽家が異なると、全く異なる音色が出るのがわかります。
どの大学の建築科に入学しても建築専門のコンピューターソフトであるCADを学習することになると
思います。しかし、自分の心の中にあるイメージを素早く描くには、やはり手描きのスケッチが素早く、またコンセプトや時分の想いが瞬時に描き表す事ができます。目には見えない微妙なバランスや左右非対称計の傾斜や凹凸バランスなども、時分の手は脳と目の延長でありあなたの感覚器官でもあると思います。
言葉にできない微妙で繊細な“詩的な美”はやはり、最初からCADで描くとソフトの制約範囲に縛られてしまうのではないでしょうか?無論、それを実現化するの“構造的美” 構造的な裏付けとしてのCADや
フランクゲイリーの会社が持つ、建築専用のA1のようなコンピューターソフトももちろん必要ですが、
そういう意味では、美大ではないので工学部受験生の段階でうまい絵を描けというつもりはありませんが、自分の頭で考えたイメージを形にする練習はやはり建築家を目指すならば、若いうちからスタートした方が早くうまくなると感じます。今回はそういう意味でも手本になるベストの建築家フランク・ロイド・ライトの建築デッサンである、とても美しいドローイングを見ていきたいと思いますので参考にしてください。
これらのデッサンは明治時代にすでに建築家としての仕事で発注主(クライアント)の意向や趣味、ライフスタイル、社会的な立ち位置、価値観、工期、予算など様々な要求を咀嚼して、意匠の根底のコアコンセプトやテーマを探して、それを元に建築全体が持つ唯一無二の独自な世界観を建築という表現媒体で建築家個人の様式で自己表現している点が白眉といえます。これは第一に判断の物差しが明確に提示されている点を前提に見ていくべきだと思えます。関東大震災の少し前という時代の我が国の都市や住宅などの
状況やレベルを見て、比較するとやはり20世紀建築の三大天才建築家の一人というのがわかるのではないでしょうか?特に芸術的な志向があることもその意匠や内部の意匠や什器、装飾に至る細部までよくわかります。
第二に現地の特徴や歴史、あるいは都市計画法などの問題点とチャンスを明確につかんでいる点。
第三に建築家自身が今回取り組むべき新しい建築への問題意識と時系列を超えた解決への新しい提示。
第四にそれらを総合的に踏まえた具体的な建築芸術および工学建築的解決策の新たな提案が見られるという点です。
ライトのドローイングは、画面の余白の生かし方が特に美しく、点景や空、あるいは樹木や地面、光と影のバランス、あるいは左右非対称の美しいリズムとバランス、色彩のリズムがとても音楽的に流れている点が上げられます。そして遠近法でいうところの線の強弱がすべて異なるリズムが用いられて、アクセントも美しく色彩がもちいられています。白の地やあるいは不透明水彩の形とリズムも画面上で同じリズム
がなくすべて無駄なく、それも省略されて隠喩あるいは暗喩的な空間の中の形を見る側に求める点は、日本画に通じる空間構成法と構図が、西洋絵画の系譜とは全く異なる次元の絵画芸術空間である点です。
無論西洋画の構図法が根底にありますが、余白における空間と図の形が入り組む構成は独自と云えます。
→ 無類の音楽好きなライトは1日中、設計室全体に大音量で全員に音楽を聴きながら建築を設計していました。時分の設計室の部員の専門オーケストラまで持っていたとのことで、音楽と大自然からのインスピレーションを特に重要視していました。
高橋 順一
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