「織物講座」の発行元は東京織物協会なので、当然取引先である呉服屋さん向けかと思うのですが、「はしがき」に「織物関係営業者」とある一方、「需要者側に於いても」とある。さらに「小学校女学校生徒及び家庭婦人等が」とあるので、普通の人も意識していたのだと思うのですが、ちょっと不思議があります。というのは「販売価格」が表記されていて、例えば価格 明石縮17圓(昭和5・4・東京問屋調)とある。中には能登上布 価格8圓(一反)6、7圓より27,28圓迄あり、とある。越後縮 価格26円・縞23圓位より30圓内外、さらに経緯糸の種類や番手、幅、長さ、密度や重量、産地も載っている。それにしてもこの本がすごいのは、問屋値段とか問屋歩合、2,3分。さらに染加工代とか、板上銘仙や色モスの原価採算まで記載されていて、ガラス張りでとても品質や技法、加工や価格などが透明なのです。こんな時代があったんだ、というのは面白い発見でした。現役引退した問屋マンの話によると当時はきものが日常着、と言うか女性が99%きもので生活していたので問屋で扱う量は半端じゃなかったので、「薄利多売」で十分に儲かったのではないか、と解説してくれました。昭和30年代でも問屋の口銭は8~9%位で、10%越えたら表彰状ものだつたそうで、この50年の掘留問屋街の各社の盛衰を見ていると「高利な問屋は、結果みんな消えていった」とも。
それにしても能登上布 8圓。当時の一流会社の大卒初任給65円で、平成20年の大卒初任給が21万円。換算すると、今の価格で3~4万円前後か。能登上布は今や無形文化財になってしまっているので、比較にはならないなが、いずれにしても当時、今よりはものすご~く買いやすい値段であったことは間違いないようです。
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