独り合点(ひとりがてん)

きもの業界をステージとした、ビジネスと生活スタイル、および近況。

ゆかた(8)たった1回だから

2010-06-28 | きもの
デパートで「あの浴衣かわいいな~」と小4年の娘がブルーの浴衣の前に立ち止まる。2年前に買った浴衣はピンクだった。多少小さめだが、今年も着られるだろう。「ねえ、はなちゃん(娘)、浴衣は年に1度くらいしか着ないよね。今年はピンクを着て、来年新しいのを買おうよ」といった。すると娘は、「『(うつむき加減に)年に1日だけだもん…だからこれでいいよね』と(握り拳を見せて)年に1度だけだもん!だから、おしゃれいっぱいしょうよ!』ではどっちの方が楽しい?」と。確かに誕生日やクリスマスなどの行事は、年に一度だかえらみんなで樂しむイベントである。娘に1本とられる形となった。夏祭りに娘はブルーの浴衣を着るのだろうか、母と娘の攻防は続く。(6/27・東京新聞・ファミリー面「あけくれ」掲載)

 
小4のおしゃまなお嬢さんを持つ主婦の投稿でしたが、何ともほほえましい、しかし真剣なお嬢さんのコメントにはハッとさせられる。「こどもといっしょにどこゆこう。」というコピーは、一昔前のホンダステップワゴンの広告コピーですが、こどもに浴衣を着せれば、家族で着れば、年に1回の夏休みだけれども、「こんなに楽しい!」「もっともっと楽しい!」を伝えてゆくべきなのでは。ユニクロやスーパー始め、競合各社が中国産の低単価の浴衣を売り出し、本物のいい物は、売れにくい世の中にはなってきましたが、この投稿記事を読んでいると業界内発想ではなく、もっともっと目線を生活者視点に替えてみると、そこに浴衣(に限らないけれど…)新しい切り口が、動機付け価値が大いにあるように思います。この小4のお嬢さんはきっとこの夏、希望通りブルーの浴衣を着られる!と思うのですが、大いに気になるところです。

ゆかた(7)インクジェット

2010-06-22 | きもの
以前から注目していたアーティスト・高橋理子が「ソロモン流」に出演。予想通り刺激、示唆されることが多かった番組ですが、その中で画期的だったのが、インクジェツトを使用したゆかた制作を紹介していたこと。彼女がこだわる円と直線、幾何学模様を正確に表現するには、型染めでは不可能なので、表現したいモノによって注染や手染め、型染めとそれぞれの良さを活かした染織方法を選択すると躊躇がない。すごく素敵な浴衣ですが、値段は126,000円。ちょつと引いてしまう価格ですが、彼女がブログでインクジェツトのことでも浴衣より夏着物という法がふさわしいかもと説明しているように、絵羽付けで柄を合わせているし、仕立てのこだわりもあり、モノ作りしている職人たちのことも諸々考えて…そのジレンマは痛いほどわかる。『技術に見合った適正な費用を支払い、適正価格で販売する。逆に言えば、職人の方に適正な費用を支払うために、適正価格で購入して頂けるようなデザインをする必要がある。』とブログには切実にオリジナルの物作りの困難さ、きもの作りの現場のことなど、ビジネスとの狭間の諸々、切実な問題について素直に書かれている。素敵な浴衣だけに、なんとか継続が見えるいいのですが。
それにしてもとつくづく感じるのが、伊勢丹のバイヤーのこと。高橋理子も伊勢丹の呉服売り場で個展を開催していましたが、アレコレで注目し、リストアップしている小さな工房や作家、職人たちのほとんどに伊勢丹が早くも着目し、発表の場を与えたり、商品をオファーしている。全国のデパートの中でも屈指の情報力とプロデュース力を持っている伊勢丹の呉服売り場、最新のきものが出現する場として目が離せません。新宿に行った折、必見ですよ。

銀座

2010-06-21 | 広告
待ち合わせして、某ブランドを見に銀座に。しばらくぶりの銀座、しかも外国ブランドの担当者との面談ともなると半年のブランクのせいか、少し緊張気味に。面談そのものはうまくいったと思うのですが、しかし銀座を歩いていて気づくのが中国人の団体客。多い、多いとは聞いていましたが、たかだか4丁目から7丁目までの数百メートルを歩く間、ほとんどが中国人。驚いた。GパンにTシャツや半袖のラフな姿で闊歩している。喫茶店のメニューにまで中国語が書かれていて、勢いの違いを感じてしまう。

着るから、素敵!

2010-06-20 | 月刊アレコレ
復刊、というご祝儀も多分にあるからかもしれませんが、お陰様でとても好評です。半年間、ため込んでいたモノや、無意識と意識の間で何回も反芻したきものへの想いが、いい形で誌面に表現された、と思います。新しいスタッフとの出会い、今まで通りに応援して、仕事を受けてくれた方々、そんな人の心が結集したようにも思います。そして、待って下さった読者の方々や呉服店の経営者やスタッフの皆様方からも、パワーをたくさん頂きました。アレコレを復刊できて、本当に嬉しいです。
しかし、改めて思ったこと。きものは、着るから素敵。着るからチカラが出てくる、ということ。同じきものが置き撮りやスターンでは、絶対に表現できないものが、生身の人間が纏うことにより、きものは多くを語り始め、輝き始めます。物語が始まります。きものは、着なければ輝かない!だから、月刊アレコレは人が纏う着姿にこれからもこだわります。アレコレ、今好評発売中!
お申込は月刊アレコレこちらからどうぞ。

料理(5)ピリ辛肉じゃが

2010-06-19 | 料理
7月号のLEEに掲載されていたコウケンテツさんの「母から教わった味」と紹介されていた韓国風肉じゃが。牛スジ肉とじゃがいも、タマネギを煮込み、コチジャンで味付けしただけのシンプルな料理なのですが、作ってみると美味しい。牛スジ肉を水から火にかけ、沸騰したらざるにあげ、さっと水洗いして、きれいなおなべに、ニンニク、酒、塩、牛スジ肉を入れ1時間ほど弱火で煮込み、その後じゃがいもとタマネギ、コチジャン、醤油、砂糖などを入れ、中火で20分ほど煮込むだけ。一度はレシピ通りに作ってみると幾つか自分の好みと違う部分がわかり、こうしたらどうだろう、こんな食材を加えたらどうだろうなどアイデアが出てくる。中には1度作ればいいか、というレシピもあるが、雑誌やTVなど見ていて、気に入ったもの、食べてみたいなと思ったものは、とにかく作ってみて、食べてみる。感想を聞く。実際にアクションを起こす。ここから次の工夫が湧くから、料理は面白い。今日は土曜日.アラレも留守で、原稿を書きながら午後の時間をかけて、ピリ辛肉じゃが、ラタトゥイユに再挑戦です。

使用説明書

2010-06-18 | 広告
「いいな、いいい~な」と見るたびにうらやましそうな欲しい光線に根負けしたのか、アラレが頂いたパスホルダー。バックに取り付けるとシュルシュルと伸ばして使えるので、いつもICカードを探しているアラレには便利で、かわいいパスホルダー。某通販会社で売っている千円もしない小物ですが、写真のように使用上の注意、取扱い上の注意、素材や包装の材質、会社名、住所の表記などの詳細があり、表面にはカラーでブランドの説明からデザイナーのプロフィールまで、詳しく書かれている。言っちゃあ悪いが、たかだか数百円の小物に、この説明。少し大げさじゃないかとも思うのですが、いまどきはここまで対応することが購入者への企業の姿勢であり、責任なのかもしれませんね。

ゆかた(6)ゆかたDNA

2010-06-08 | 月刊アレコレ
浴衣が表紙のLEE7月号は、ゆかた特集。「着物より着付けもしやすいし、しまうのも簡単。ささっと着付けできるようになったら、いろいろそろえて楽しみたいですね」とはモデルの雅姫さんのコメント。それにしてもモデルに登場している女性たち、いずれも子供の頃の浴衣体験やお母さんの浴衣姿の記憶が≪DNA≫になっているように思います。女性の場合は母娘で着る物やアクセサリー、小物を共有するなんて今どきは当たり前で、しかも浴衣はフリーサイズで、コーディネイト次第で、年代もクリアーしてしまう。この数年、実家の箪笥にしまわれていた着物を着よう!という30代、40代のきものビギナーが目立ちます。いまのきものビギナーや顧客を増やし、未来の浴衣&着物フアン、顧客を作り出すための≪浴衣&きものDNA≫を仕込むために、もっと積極的に浴衣をアピール、販売し、素敵な浴衣姿を街に送り出すことは、宣伝PR、そして販促活動であり、壮大な顧客創造だと思います。この夏、浴衣まだまだ間に合いますよ。
それにしても気になるのは、LEEのホームページ。本誌は7日発売で既に店頭に出ているのにホームページは6月号の案内。人ごとながら、タイミングがずれているように思うのですがー

料理(4)買い物

2010-06-07 | 料理
料理をするようになって、俄然変わったのが買い物。いままではメニューも何もなく、欲しい物をただポイポイ買い物かごに入れていただけなので、すべて酒のつまみのような物で献立が出来ないこともしばしで、アラレに「あなたは、ただの買い物が好きなだけ」とばっさり!しかしこの数ヶ月、献立を考えながら買うと、レパートリーの少なさ故に、タマネギ、ジャガイモ、人参、そしてもやしは重宝で、リーズナブル、しかも料理の幅が広い野菜なので、随分使いました。しかも主婦よろしく野菜は八百屋、しかも数軒のお店の得意技を比べながら買うまでに成長。でも素人の悲しさで、鮮度や重さ、旬や産地などの知識がないため、単に値段だけで比較して安い物を買ってしまい、あとで「えっ~!」と思うこともしばし。自分に知識がないのを棚に上げ、「やられた~」と思ってしまうから不思議。本当に「安物買いの銭失い」を実践し、かなり失敗しました。また先日はNHKの《ためしてガッテン」で紹介されていた大根っぱカレーが美味しそうなので早速作ろうと準備。しかし、いざ葉のついた大根を買おうと思ったら、2軒、3軒と八百屋、スーパーを回れどもない。意地になって人形町の八百屋、移動販売のトラックがつけている場所まで探し、ようやくゲット。苦労して料理しただけに家族にも好評。意外に美味ですから、だまされたと思って、一度作ってみて下さい。
それにしても自分で料理するようになって、買い物は《美味しくて、旬で、鮮度があって、安全で価格の安い物》を探すようになりました。献立によっては、旬の食材でなくてもOKという融通もつけられるようになりましたが、その日の店頭を見て、献立を考えるアラレに比べれば未だ未だを実感しています。単に安いではなく、コストパフォーマンスがいい、という買い物感覚を女性なら本能的に身につけ、主婦なら更に研ぎ澄まされたものを持っているように思います。小手先の《安い価格》だけでは、お店の姿勢をすぐに見透かされてしまう様に思います。いかにお得、コストパフォーマンスを感じてもらえるか、十分な説明が必要と改めて考えています。こんなことを考えるようになったのも、料理を始めたおかげです。

ゆかた(5)縁は異なものー

2010-06-06 | 月刊アレコレ
「縁は異なもの、味なもの」という諺は、本来は男女の縁はどこでどう結ばれるかわからず、不思議で、面白いもの、という意味だそうですが、月刊アレコレの復刊が決まってから第一号を発行するまでのこの1ヶ月、男女ではありませんが、「人の縁」の不思議に驚かされています。写真の粋な女性は、某出版社の編集者。出版社として初めての着物の本を企画しているので、少し着物の世界の様子を聞きたい、とご紹介いただいたのがご縁。話が脱線し、というか着物好きな女子が出会ったのですから、当然着物の話に。これも面白い、というか着物を着るきっかけは様々なだなあ、と驚いたのですが、それこそ縁は異なもの、の縁をきっかけに着物、三味線の世界に入られたそうです。どんなご縁か、知りたいのが人情という物。人一倍好奇心旺盛なわが編集長、速攻逆取材となり、次号の「きものびと十人十彩」に登場となりましたので、好奇心旺盛なみなさん、次号を読んで下さいね。
で、昨日は彼女の行きつけの新宿ゴールデン街で撮影。その1カットがアップした写真です。お召しになっているゆかたはお母さんの藍の絞り。お気に入りだそうです。いっときユニクロのゆかたが話題になりました。私は実際に見たことがないので、都市伝説の1つだと思いますが、花火大会の後、駅のゴミ箱にユニクロのゆかたがいっぱい捨ててあった、なんて話がありました。安いがゆえに、花火大会のコスプレとしての必要性がなくなったら、ポイ!ということなのでしょうが、それは余りにも悲しいと思うのです。買う方はそもそも安い物は1シーズン持てばいい、極端言えば1回で着捨ててもコストパフォーマンスが合うからよい、ということのようです。そのような価値観もありかもしれませんが、私は良いものを長く使う、愛おしんで使う方が好きです。そういう物との出会いを楽しみにしています。先日NHKの番組「ワンダー×ワンダー」で京都/東山の別荘群を紹介していました。私も初めて知りましたが、明治・大正の政財界の大物たちが財力に糸目をつけずに美意識を結集し、競い合って作った別荘群があるんですね。それは素晴らしい物でした。その中の1つの別荘を代々受け継いでいる呉服関係の方が「この別荘は、大切な預かり物だと思っています。次の世代に引き継いで行きたいと思いますので、大事に手入れして使っています。」と語っていたのが印象的でした。昔、ある財界人がゴッホの「ひまわり」を死んだときには「一緒に棺桶に入れて焼いてしまいたい」といって非難されたのを思い出しましたが、天地雲泥の差ですね。私たちの先達たちが工夫し、職人たちが引き継いできた素晴らしい技や美意識が結集している染織、きもの。母から娘へと譲られ、娘に、もしかしたらその次の世代にも着られてくかもしれない、と想像したとき、なにやら作り手の、そしてきものの幸せを感じます。良い物を愛おしんで長く使い、次に引き継いでゆけるよう手入れ、始末する。素敵な日本人の美意識、たしなみを感じます。そういえばアレコレのスタイリストとして活躍いただいている彩詠さんのお婆ちゃまも、着なくなった着物をいつの間にか、お母さんの寸法に仕立て直してあった、と聞きました。千円もしないゆかたから十数万円のゆかたまで、多種多様にあります。ゆかたを選ぶとき、1回で着捨ててしまうような消耗品としての選択だけはして欲しくないと思います。いまどきでいえば、地球に優しくない、エコじゃないですから。

もしかしたら、浮いてる?

2010-06-03 | 日々雑感
久しぶりにスーツを着て銀座、青山、新宿と日々行動していますが、着慣れたスーツのはずなのですが、どこか身体にそぐわないように感じる。だから地下鉄などで目線が会うと「えっ!どこかおかしい」と自分の姿を見てしまう。「おかしくないよな」と思いながらも、やはり身についていないという感覚が相手に違和感を与えてしまうのかもしれないと、落ち着かない毎日です。
写真のもの、なんだかわかりますか。
正解は「ドアノブレバー」です。介護用品の1つで、手首を使って回すタイプのドアノブは、握力がなくなった高齢者や病人にはつらいモノなので、このようにドアノブに手にかけ、手の重さで回すドアノブが身体に楽なのです。このようなものをまさか使うようになるとは思いませんでしたが、アラレの病気で探し回る羽目になりましたが、なかなか扱っているお店がない。またあっても、数がない。家中のドアノブを替えるとなると相当数になります。確実にユニバーサルデザインが必要とされる高齢化社会を日本も迎えています。60代以上で、きものが好きで、日常きものを着てる人はとても多い。この高齢化社会で、顧客満足を考えれば、きものにもユニバーサルデザインが必要なのではないか、そんな思いがする日々です。