半年振りにお会いしたF社長。相変わらず意気軒昂でしたが、少し空気が違っていたように感じた。いま十数店の子供向けのトータルスタジオを経営している会社から、身売りの話が持ち込まれ、資料を精査している最中という。その内容を見せて頂き驚いた。ありえない、という数字。F社長曰く。「中途半端な規模の会社のサラリーマンが担当するとこんなもの。仕事しないもの。仕事が分かっていないもの」。家業店ではこんなこと絶対ない。大体その前につぶれてしまう。夢もなく、「儲かるからと進出した会社だし…」とにべもない。トータルフォトスタジオというのは、この数年急激に伸びてきた新業態の写真館で《衣裳、ヘアーメイク、着付け、写真》が1ヶ所ですべて済んでしまう便利なもの。その先鞭をつけたのは、子供写真館で有名なスタジオアリス。全国に360店舗、年間売上250億円と、業界ダントツ。いまトータルフォトスタジオは、全国約1,200軒。そのうち家業店型のものが約700軒、チェーン店が500軒。650~700億円の市場規模だそうです。このうち呉服店が経営しているトータルフォトスタジオが約200軒、売上は120~150億円だそうです。呉服店が経営するトータルフォトスタジオが好調なのは、衣裳がよく、接客が上手なのと経営者自らが目配りし、叱咤激励しながら経営しているから。儲かるからと参入し、マニュアルで経営しようとしても、そうは上手くゆかないものらしい。
スタジオアリスの本村社長は「やはりお店は、同じやり方、同じ商品を同じように売っていると、飽きられると思う。そういう意味でスタジオアリスは、お客様の目で見て、毎年変化してゆかねばならないと考えている。これから3年後のスタジオアリスは、おそらくいまスタジオアリスのお店とは違っている。変わると思う。その準備を始めている。皆さんもいままでの既成概念は捨てるべきではないか。革新という言葉がある。改革、革新、これは現状否定と、もっとつらい自己否定が伴う。でも、この二つをしない限り、革新はない。スタジオアリスは絶えず現状を捨てて、現状改革をして、自己否定をして、もっと良い方法があるのではにかと改革を続けていきたいと思っている」と発言している。子供写真館のノウハウを生かし、成人式やブライダルなど本格的に大人写真館にも進出すると噂されているスタジオアリス、なかなかの強敵。劇薬になるか、刺激剤、活性剤になるかは、受け取り方次第か。