独り合点(ひとりがてん)

きもの業界をステージとした、ビジネスと生活スタイル、および近況。

イベント数に比例するファン数

2010-08-24 | 広告
見るともなしに見ていたNHKの「欽ちゃんのワースト大脱出作戦」。続編かと思ったら、もう10回も続いている名物番組と聞き驚いたが、前回紹介されていた「Jリーグで最も観客が少ないワースト」のJ2の水戸ホーリーホックがまた紹介されていた。前回は1万人プロジェクトを実施し、6000人を動員したが、その後また伸び悩み、なんとかワーストの汚名を返上しようと、今回も脱出請負人の元日本代表・小倉隆史がいった「町に出て、選手を身近に感じてもらう」を実行。さらに子供と接することの大事さを伝授され、ワールドカップで試合休止期間中の短期間に25回のイベントに選手たちが出席。その結果、再開後の初戦に今までの約2倍の7000人の動員に成功したと番組で報告されていました。

この番組を見ながら思い出したのが、M呉服屋。店長さんは、企画力と行動力に優れ、「小さな旅」とタイトルした歌舞伎観劇や名所とグルメの旅、夏休みには子供を対象にした織物体験、ゆかたの仕立て、着付け教室、店内での音楽祭や写真展などなど、年間に30回近くのイベントを実施している。又毎日の接客のお茶菓子も話題性のある物を用意するなど、毎日がイベントで、「きもの」にも「売る」コトにも直接ではなく、和の世界でつながっているスマートさがある。イベントの回数でも、その質、そして子供をきちんと巻き込んでいることでも、ファンを拡大する王道を進んでいる。しかも15年以上も。

水戸ホーリーホックの例でもわかるように、呉服業界でもどこでもファン作りの王道は、「子供」×「イベント」です。最近ツィツターで「きものジャック」が行われていますが、とにかく何か行動を起こすコトが大事。みんなでトライしてみませんか。

いじめ!?

2010-08-22 | 日々雑感
高校野球の中継が終わり、なにか夏が終わったような感じです。子供が高校で野球をやっていることがあり、今年は結構熱心にTV観戦したが、昨日の決勝戦は思いがけない一方的な展開で、見ていて可愛そうな感じだった。負けた東海大相模の選手は何人も「悔しい」とコメントしていたが、それは単に試合に負けたことばかりではなく、ベストコンディシンで試合に臨めなかった異常な位の試合スケジュールに対する悔しさもあったように感じます。夜のニュースでたけしはこの連戦に次ぐ連戦の甲子園を評して「いじめだ!」といっていたが、ベスト8、ベスト4、決勝戦と3日連続はもう体力勝負を超え、尋常さを欠いているのではないか。1日滞在が増えればチームも100万単位でお金もいるだろうし、甲子園の借り上げ代など運営費は1千万単位で経費がかかるだろうことは予想が付くが、NHKも朝日新聞もビジネスとして儲かっているのだから、ベスト8以上は滞在費を負担するとか、決勝戦の前日は休養日にするとか、もっと体力の消耗戦ではなく日頃の練習の成果、実力が発揮できるようなスケジュールの工夫を行くべきなのではないのか。高校野球という美辞麗句の中に興業ビジネスの側面、というか本質を押し隠し、この炎天下、連戦に次ぐ連戦を強いる運営は問題が多すぎると思う。もうそろそろ子供主体の運営を考える時期になっているのではないだろうか。

絶滅危惧種なお仕事

2010-08-21 | 広告
「もう食えないかもしれない」「このままだと絶滅」と言われる産業に着目し、現状をレポートし、必死に活路を見いだし、しぶとく?生きている人や職業をレポートしている何とも刺激的なタイトル、ネーミング「絶滅危惧種なお仕事」。その連載第1回目がナントきもの業界、そして和裁士。20年前には6,000人いた日本和裁士会の会員。いまや1,700人しかいない。理由は仕事が激減している中で、海外縫製が増え、さらに減り、「儲からない」から。もはや絶滅危惧種の1つとして名誉ある?1回目の連載。
そんな危機的な状況の中でデパート、呉服店、問屋などの下受けでは活路がないと、「とにかくお客さんの顔が見えるところに出て行かなきゃ、」と2003年に店舗をオープンした上野さん。「数字だけで縫っていても、実際にはお客様の細やかな体格の違いが有り、その体格や体型を活かした仕立てで、素敵なきものが出来る」とはいえ、最初の2年は閑古鳥が鳴く状態だったが、そのうち「ホームページを見た」とお客さんが来るようになり、今は個人客だけでビジネスが成り立っている、という。最近はより長くきものを着たいという人も増え、「お客さんの顔が見えるので、仕事が前より面白くなった」とは店主の言葉。先月家紋の取材をしたときも、お客様との間に入る呉服屋さんや問屋さんが、どうも勉強不足で、きもののことに精通していないので、「お客様の言うとおり」で、おかしなコトが多々生じているらしい。紋屋さんや仕立屋さんが持っているノウハウや知識、技が発揮できない。「お客様の顔が見える」ことも大事ですが、「下職さんというか、職人さんの仕事を勉強しないと単なる宅急便屋さんになってしまいかねない.互いの顔が見える、見るはビジネスの原点だと改めて感じさせられます。

夏疲れ?

2010-08-18 | 日々雑感

書きたいことはあるのですが、気力が足りず、というか夏疲れ?でブログの更新をサボってきました。先日本屋さんを覗いたら「スティーブ・ジョブス 驚異のプレゼン」(日経BP社刊)という新刊が平台で積まれていて、思わず買ってしまった。最近勘が戻らないというか、プレゼン下手で苦労していますので、早速読み始めたところですが、ジョブスCEOの華麗な「プレゼン」は天性の才能とばかり思っていたのですが、基本をきちんと踏まえたアナログな手法、周到な計画と準備、猛烈な練習の賜物といった展開には、驚かされました。天才と言われる人ですら、努力を重ねているわけですから、まして凡人は数十倍の努力をしなければ、成功は覚束ないはずですよね。

今日久しぶりにお会いしたコンサルタントと成功しているお店の成功要因を分析していたところ、互いに納得したのが「自己都合ではなく、どれだけ真剣に有形無形のユーザーの要望に応えているかどうか」という当たり前のコトでした。この本の中でもジョブスCEOは「ユーザーの体験からスタートして技術へさかのぼらなければならない。逆ではいけない」。と書いていますが、ユーザー体験からスタートし、体験を共有することからビジネスを発想しているかどうか、自己検証しています。


リアルクローズ(6)

2010-08-03 | きもの
「なぜ呉服屋さんは、きものを着ていないの」というきもの生活者の疑問は、かなり根の深いモノがあるように思います。明治維新以降、近世の日本の商業を見ていると、店員さんが洋服を着ることがセンスのよさ、かっこよさ、いけてるお店を伝える制服としての機能を果たしてきたのだと思います。越後屋が三越になり、坐売りから陳列販売に変わったように,社員の衣服も時代の要望に添いきものから洋服に変わりました。
近代マーケティングの教科書には、江戸商法の原点は、三越の前身、越後屋にあると書かれています。「現金安売り掛け値なし」「布の切り売り」「商品ごとに専門の店員を配す」「即座に仕立てこれを渡す」「雨の日には傘を貸す」などなど、それまで上顧客の屋敷に訪問販売していた商法から、庶民大衆を相手にした画期的な商法に切り換え、当時同業者からの妨害も多かったと言いますが、やがて越後屋商法がスタンダードになり、江戸から明治に時代は移り、坐売り、陳列販売へと変革し、百貨店に発展してゆきます。しかし今、時代をリードしてきたデパートが長期低落に歯止めがかからず、苦戦を強いられている状況を考えると、デパートに代表される近代の商業文化やサービス、顧客ビジネスのあり方自体がもはや通用しなくなり、時代に求められる新たな商業文化やサービスのあり方が、いま問い直されているのだと思います。
いま考えなければならないのは、呉服屋さんがきものを着る、着ないの問題以前に、これからもっと多くの方にきものを着て貰うために、着たい人に喜ばれる商業サービスのあり方そのものを考えることが先なのではないでしょうか。きものが当たり前の生活の衣装だったときには、高級品を扱うお店、木綿など扱う太物屋さんなど様々なタイプの呉服屋さんがあり、きものを取り巻く様々なものを扱う小間物屋さん、草履下駄屋さん、扇子屋さん、京染め屋や悉皆屋さんなど、様々なお店があった。それらが時代の流れの中で劇的に淘汰されてきました。しかしこれからの時代、きものを着る人の利便や憧れを実現する店は、どんな商品を揃え、サービスを充実し、お店の佇まいやスタッフに求められるモノは何なのか、きもの生活者の視点から根本的に店のあり方を考え直さないと「なぜ、呉服屋さんはきものを着ないの」という問題は解決しないように思います。
”越後屋に衣裂く音や更衣え”と室井其角の俳句にあるような繁栄ぶりは、当時の庶民の圧倒的な支持を受けた商品やサービスがあってのこと。果たしてこれからの時代、圧倒的な支持を受ける呉服屋さんの新たなスタイルは何なのか、それが問題です。

トホホの里芋

2010-08-02 | 日々雑感
里芋、みるみるうちに大きくなって、テーブルの上に葉を広げています。まっすぐ伸びずに、四方に葉を広げているので仕事のスペースが日に日に狭くなる。しかし、成長しているものが目の前にある、というのは随分とエネルギーを感じるモノだと驚いています。入れ物も小皿では間に合わず、大きなどんぶりに変えましたが、この先どこまで大きくなるのか、少し不安。

リアルクローズ(5)日本酒

2010-08-01 | きもの
暑中お見舞い申し上げます

今日も一日、暑かったですね。
この2週間、鬱々とした日が続きましたが、今日から8月、気分を一新して暑さに負けないように頑張りましょう。トホホの里芋、元気に伸びています。朝起きると机の上がぽつんぽつんとぬれていて不思議に思っていたのですが、水を葉っぱに吸い上げているんですね。露が葉の上にたまるのだとばかり思っていたので、露の正体に初めて気づきました。それにしてもみずみずしい葉の色には癒されます。

先日月刊アレコレのきもの撮影を行った表参道ヒルズ。都心の街並みを考えてセレクト、コーディネイトしたきものは、とても街に映え、思った以上でした。この表参道ヒルズの中に「新しい日本酒文化を創造していく次世代の酒屋」と銘打って店内で話題の日本酒が飲める長谷川酒店がプロデュースする「日本酒ブティツクーはせがわ」があります。きものと同じように日本の伝統的な飲み物でありながら、ワインやウイスキーに押され、マイナーでオヤジの酒といわれ、市場が縮小した時期がありました。この日本酒に着目、絞り込み、日本酒をメジャーに押し上げた長谷川酒店。昼過ぎなのだが、それでも店内は三々五々おしゃれな若者たちで賑わっている。以前テレビ東京TVの「カンブリア宮殿」に長谷川社長が出演した時「酒を生業にするなら、最低限、飲んだり食べたりして、自分のお店においてあるお酒をじっくり味わって、それをどうお客様に表現するかというところから始めないといけない」と言っていたのを思い出した。江東区という東京の下町の酒店が生き残るためにニッチな日本酒に絞り込み、自分が納得する味を求めて回った蔵元は千軒を超えるとか。そして吟醸酒に出会い、オヤジの酒というイメージをかっこいいに変えるため味だけではなく、全く日本酒など飲んだことがない若者を注目させるため1升瓶からスタイリッシュなボトルに変えるなど、日本酒をトータルにプロデュース。「自分のお店においてあるお酒をじっくり味わって、それをどうお客様に表現するかというところから始めないといけない」という言葉は、「隗より始めよ」ということか。これからの時代、いよいよきもの屋さんも、きものの知識やセンスに加え、奨める人の「実感」、プロデュース力が求められ、決め手となる時代になってきたようだ。きもの人が話題にするお店は、どこも共通している。そして「見たい商品」が店頭にある、あるだろうなと期待させるのも共通している。