【革命児・吉田重久が「きもの業界の常識」を超える!―日本和装の挑戦】という本がIN通信社から出版された。いわゆる企業PR本で、日本和装の宣伝本。旧態依然とした問題点の多いきもの業界、跳梁跋扈する悪徳商法の餌食にならないようホワイトナイトとして日本和装を位置づけ、「理由なき繁栄はない!」と122,000人の修了生、昨年秋には全国387会場、1869クラスの無料着付教室を開校し、これらの修了生たちが新しいきもの市場を創造したと、褒めまくっている。
日本和装のビジネスは、民放TVと同じく、メーカー、問屋から宣伝費、販促費をもらい、無料着付教室という場を設け、人を集め、宣伝費、販促費を出したメーカー、問屋のきものを宣伝、販売する機会を提供することで、一切きものの販売には関与していない(適正なビジネスとなるように指導はしている)と、ビジネスを定義している。無料着付教室を主催する「日本和装」に加え、きものの検品から納品までを担う「糸の匠センター」、仕立ては「日本和裁技術院」、メンテナンスは「きものリフレッシュセンター」の4社が「日本和装ホールディングス」を構成している。そしていまや呉服業界の老舗、名門メーカー、問屋がこのビジネスを応援、積極的に参加していること。天下の野村證券が幹事会社になりジャスダックに上場、これらが日本和装のビジネスの正しさを証明しているとし、さらに無料着付教室に加え、「キモノおしゃれ塾」「和裁教室」「ランクアップ教室」「着付ワンモア教室」「1日セミナー」など多岐に渡ってビジネス展開し、日本和装は“きものライフ”の道先案内人で、きものの流通を促すけれど、「新手の販売業」ではないので、販売のクレームはお門違いとしている。
いまさら日本和装を云々はしませんが、この本の中で「消費者がきものを買わない理由は、4つある」と指摘している。この4つの問題解決をきもの業界が怠ってきた、特に消費者と接する「呉服屋さんの怠慢」と指弾し、その解決を図り、多くの消費者の支持を得たのが日本和装だと、話を展開している。その買わない4つの理由とは以下の通りです。
①呉服店は敷居が高く、1人で入るには不安
②消費者の余りにもきものの知識がないので、1人ではきものの良し悪しがわからない。自分だけの目利きで買うのは不安
③あれこれ押し売りされそうで不安
④仕立ての良し悪し、アフターケアはどうすればいいか、わからない不安
この4つの不安が、消費者をきものから遠ざけ、呉服店から遠ざけていると酷評している。フォーマルきものは格式も、知識も必要。フォーマル中心の今までのきもの業界は、いつの間にか自分たちに権威があると錯覚し、消費者を見下して、例えば安いきものをあつかわない、小物客をいい顔しない、下着などの小物を扱わない、…などなど本当に着物を着たい、着る消費者が欲しいものを提供してきていないのではないか、と厳しい。日本和装が伸びてきた大きな要因は「消費者の利便」を優先したこと、一方呉服店が敬遠されたのは、自分たちの事情ーきものをモノとし、売上至上主義を標榜して活動してきたから、と指摘。耳が痛い部分はあるが、大方の真っ当な呉服店なら、「とんでもない!うちはこんな店じゃない!」と怒り出してしまうだろう。しかし、反省すべき点はないだろうか。上記の4つの問題点?に対し、明快にお客様に理解していただき、日々新たな情報、サービス、商品を提供しているだろうか。これから呉服店が今まで以上に「消費者の良ききものライフの案内人、コンシェルジュ」となり、消費者の信頼と安心を得るために、どうしたらいいのかを考える反面教師として日本和装を考えれば、「今、消費者が望むものは何か」を真剣に《聞く、聴く、訊く》努力をすれば、「消費者がきものに心を向け、着たい」と思っているいま、自ずと活路が見え、洋々たる市場の可能性が見えてくる、そう確信しています。