
左から 60年代のベートーヴェン交響曲5番 (31’)・6番 (36’)、70年代の5番 (30’)・6番 (38’)、80年代の5番 (30’)・6番 (35’)、どれもカラヤン BPO (ベルリン・フィル)。
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カラヤン最後の『運命・田園』録音 CD (冒頭右 80年代盤) を聴きました。 期待通りの素晴らしい演奏でした。 カラヤンものは全てのステレオ録音を『大全集』から聴く事が出来ます。 どれを聴いても同じような感動を得られると思います。
それほど 年代によって違いがあるとは思えません。 演奏時間も大きく違いません。 これほど 同じような演奏を繰り返し録音した指揮者はいないでしょう。
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70年前後の学生時代 私は60年代録音の上記 LP 盤をアパートや間借りで聴いていました。 あまり大きな音では再生できないので、昼間にちょっと再生して聴くくらいです。 でないと隣の部屋の住民から怒鳴り込まれないとも限りませんからね。 ヘッドフォンは1時間も聴くと 頭痛がしてくるので、あまり使いませんでした。
同好の士が学内にもいたらしく、文化祭・大学祭の期間中だったと記憶しますが、『カラヤン BPO の “運命・田園” 生演奏の録音テープをXX教室で何日何時に再生してお聴かせします。 ご興味のある方は ぜひご参集下さい』とのチラシを見つけ、珍しい催しだなと思い 行ってみました。
すると (オーディオ・クラブの人ではない) 学生が1人で (4トラック・オープン・リールの) テープレコーダー・(メーカー名?の中級) アンプ・(30cm ブックシェルフの) スピーカーをセッティングしていました。 それを50人位入る教室、十数 m 四方 200m2 位の広さの中で再生しました。
聴衆は、私と別の知らないカップルの3人他だけでした。 私が所属していたオーディオ・クラブの誰も来ていません。 お世辞にも あまりいい再生音には聴こえませんでした。 部屋が広すぎて、再生音が大きくても “音像が小さく感じる” のです。 30cm スピーカーはせいぜい十畳ほど (15~20m2) の部屋で聴くものだと思いました。
終わって「ご希望ある方がいらっしゃいましたら、コピーも出来ますので お申し出下さい」と “自慢げに” 付け加えましたが、希望者はいませんでした __ 今だったら著作権法に触れるはずです。 実際にコピーを渡さなかったので問題とはなりませんが。
主催者には悪いと思いましたが、完全な “自己満足の世界” でした。 自分が思うほど 他人は感激しないものだなぁと、オーディオもクラシック鑑賞も個人の趣味で、共感を得るのは難しいと実感しましたね。
カラヤン BPO は、1970年5月に演奏旅行で来日、初日8日に大阪フェスティバル・ホールで『田園・運命』の順で演奏していますから、この FM 生中継放送を自宅のオープンリールのテレコで録ったものらしく、主催者は多くの学生にも聴いて欲しかったのでしょう。
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それで 50代、 60代、 70代に BPO を振って全集録音を遺したオーストリアの大指揮者の60~80年代の3種の中からどれを選ぶとしたら、これは もう 皆さんのお好みで、どれを選んでもハズレはないと思います。 また 普通の家庭用の再生装置でどれかの CD を聴いたら、まず聴き分けられないとも想像します。
そういう贅沢な悩みを残したカラヤンを、どう評価したらいいのか、悩ましいですね。
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オマケのエピソード __ 60年代のカラヤン BPO による第9『合唱』全曲の LP からオープンリールのテープにコピーしたものを保有していたので、学生時代 オーディオ・クラブの友人に一時期デッキごと貸した事があります。 トム・ジョーンズ (英ポップス歌手) や伊東ゆかりのファンだったので、ベートーヴェンにも興味を持ってもらいたいと思ったからです。 半ば押し付けるよう (?) に貸したので、半分 “迷惑” だったかも …
返却時、「このテープ、『合唱』は “最後の方” に入ってるんだね?」と訊くので、「全部『合唱』だよ。 最初のほうは1~3楽章で歌が入らないけど、最後の第4楽章で歌とコーラスが入るんだよ」と説明しましたが、内心ガッカリしました。 クラシック・ファンでないと、認識はこんなものかと実感し、以後 “押し付け貸し” は止めました。
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上のオマケ画像は『運命・未完成』の7インチ・4トラ・オープン・テープの箱表紙画像とテープ実物です。 カラヤン BPO のベートーヴェン LP 盤全集が気に入ったため、70年代に発売されたテープを1本買い求めました。 同時発売の『合唱』までは流石に買いませんでした。 リール形状から TDK 製のテープです。
その前 テープ・デッキ・メーカーの TEAC から10インチ・2トラ・オープンで カラヤン BPO の『ブラ1番』『新世界』(だったか? ※) が発売されました。 1本 15,000円前後だったと記憶していますが、私はそこまでの超マニアじゃないので、広告を見るだけにしました __「うへぇ こんな高いものを買う人もいるのか」と驚いたものです。
プロモーションも兼ねて TEAC が “大胆にも” 2トラ・サンパチ・音楽テープを発売したのだろうと想像します。 テープ速度が 38cm/s (サンパチ) ですから、10インチ・リールで片道の 48分しか収録できず、再度聴くには高速の巻き戻しが必要という えらく手間のかかるメディアです __ この話し 解る人は少ないだろうと思います。
一方 60~70年頃には生録がブームになって、オープン・デッキを背に担いだ超マニアが TEAC 主催のジャズ生演奏録音会場に多数やってきて、デッキにつなぐ出力が足らず、録音できない人も出たという音楽関係誌記事を読んだ事もあります。 可搬型の小型カセット・デッキは音質がちゃっちくて、マニアからはあまり評価されなかった時代です。
その後 ※に続く2トラ・サンパチ音楽ものが続かなかったのは、”売れなかった” からと想像します。 企画した担当者はどうなったのでしょうか? 社内で総スカンを食った?
今日はここまでです。