シャンテ サラのたわ言・戯れ言・ウンチクつれづれ記

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ソリストとオケマンの分かれ目とは?

2021年10月14日 | 音楽関係の本を読んで
ヘルマン・クレッバースの協奏曲集の CD ジャケ。 『指揮者の役割 ― ヨーロッパ三大オーケストラ物語』(中野 雄著 新潮選書 2011年)。 千住 真理子、樫本 大進。
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超優秀なヴァイオリニストやピアニストだったら、ソリストを目指すのが普通だと思いますが、世の中 ソリストの需要は限られてるので、新米のソリストがその市場に食い込むのは並大抵の事ではありません。

素人の私が考えるのは、1) 有名コンクールで優勝する、2) 有名楽団・指揮者と共演する、3) 有力な CD 会社から協奏曲やソナタ、室内楽、小品集などの CD を発売する などの知名度を上げる活動が必要ですね。

でも コンクールで優勝しただけでは不足で、さらに 2) と 3) を重ねていかないと音楽ファンに忘れられてしまうと思います。

有名楽団・指揮者と共演するにしても、誰か目利きの人に注目されない限り 採用されないでしょう。 恐らく 音楽事務所の人とか、楽団やホールのマネージャーに知り合いがいないと実現が難しいと想像します。 いわゆる 業界人との繋がりが必要です。

有力な CD 会社から演奏のスタジオ・ライヴ録音を発売するにしても、その会社のプロデューサーに認められないと 声が掛からないと想像します。
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そうして 見事 ソリストとして認められたとして、引き続き日々のたゆまぬ研鑽はもちろんですが、日常的にどういう活動・生活内容となるのでしょうか?

毎月・毎週 きまった仕事・ルーチンがあるわけでもなく、超忙しい時もあれば、その逆もある、恐らく不定極まりないものとなるはずです。 また一定の居住地にいつもいる事はなく、お呼びが掛かれば世界中のどこへでも赴くのは当然です。

従って 既婚の女流ソロ・ヴァイオリニストは、夫の面倒を完璧に見る事はできず、逆に女房役的な夫が求められると想像します。 これはピアニストの場合も同じでしょう。

「異国の地での共演や録音の後、ホテルで遅い食事を取り、場合によっては遅すぎてレストランも閉まっていて、ホテルの部屋で一人で冷蔵庫の中の食べ物を摘む」(※)、なんて事もあるそうです。

夫が同行しているとしたら、一緒に深夜営業のレストランに出向くか、夫が用意した食事をホテル内の部屋で取ることも出来るでしょう。 共演者 (指揮者) や録音スタッフと食事するだろうかと考えると、前者はたまにあるかも知れませんが、後者はまずないのではないかと思います。 想像するに 住む世界が違うのです。

__ という具合で、楽団に所属しない ソリストの日常生活というものは、一般の人に比べて かなり無味乾燥的なものになるだろうと想像します。
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冒頭の本に こういう話しが載っていました __

「器楽奏者の多くは、まず独奏者として活躍する未来を夢見る。 至難な協奏曲演奏を披露後、盛大な拍手に包まれ、花束を手に満員の聴衆ににこやかに会釈する。 その一瞬の至福は、何物をもってしても替え難い。 一流の独奏者ともなれば パリやニューヨークの中心街で高級アパートに居を構え、郊外の城館にて優雅かつ華麗な生活を満喫している人もある」(201p)

「クレッバースは語る __ ソリストの夢を実現できる音楽家は何年に1人。 何よりも オーラを発散できるような資質が第1条件。 ソリストの音楽人生が必ずしも幸せとは限らない。 名人・巨匠といわれる人たちには旅の宿だけがあって、心休まる家庭がない。 飛行機と、ホテルと、そして荒涼たる精神生活 …」(202p)

39歳から57歳まで20年間 有名楽団のコンサートマスターを務めた人の話しを読んで、やっぱり そうなのかと思いました。 ※) は千住 真理子の本に載っていました (書名は失念)。

樫本 大進の31歳でのベルリン・フィルのコンマス就任時にもブログに書きましたが、有名コンクールで優勝してソリスト活動14年後のコンマス就任は 業界で大きな話題となりました。 本人は旅暮らしから ある意味 安定した楽団生活に入ったと思います。

もっとも 楽団生活も永年保証されたものではなく、技量が落ちれば続けられませんが、ソリストはもっと厳しいでしょうね。 でも 見返りも満足度も高いと想像します。

千住真理子はずっとソリストを続けていますが、それは本人が選んだ道です。
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ヘルマン・クレッバース (Herman Krebbers, 1923~2018) は、オランダのヴァイオリン奏者。 19歳でロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団と競演。 1962年にはコンセルトヘボウ管のコンサートマスターに就任した (ウィキペディアから)。 57歳 海難事故による右腕故障のためコンサートマスターを辞任。

千住 真理子 (1962~) は、日本のヴァイオリニスト。 1977年 15歳の時、第46回日本音楽コンクールを最年少で優勝した。 1979年 17歳の時、第26回パガニーニ国際コンクールに最年少で入賞した (第4位)。

樫本 大進 (1979~) は、日本のヴァイオリニスト。 1996年 フリッツ・クライスラー国際コンクールで第1位、ロン=ティボー国際コンクールでは史上最年少で第1位を獲得した。 2010年 試用期間を経て、ベルリン・フィル第1コンサートマスターに31歳で正式就任。
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最後に この本に間違いが2箇所あるのに気付きました __

1) 「1963年に発売されたベートーヴェンの《交響曲全集》、カラヤンにとってはフィルハーモニア管時代に次ぐ2度目の録音、BPO にとっては常任指揮者とのコンビでは初録音 (それ以前、1958~61年発売のアンドレ・クリュイタンスとのモノラル録音が、このオケにとっては《全集》の第1号) であるが …」(160p) → ステレオ録音です。

2) 「小澤征爾には、月刊誌『新潮45』の指摘で物議を醸したサンフランシスコ響との《新世界》ーー第3楽章冒頭の『シンバル脱落事件』がある。 仕上がり原盤の試聴を怠り、他人任せにしたからだと思う 」(175p) → 第4楽章です。

今日はここまでです。

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