写真は、iPhone 4S 発売日の上海アップルストア。 転売屋を含め多くの客が詰め掛けた (12年1月)。
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物価は日本の10分の1としたら (現在の比率は数分の1?)、iPad は日本では数万円だが、中国では数十万円かも知れない。 しかし それを手に入れるために、自分の臓器を売るなんて、日本ではまず考えられない。
自分の体は一生ものだが、電子製品なんて一時のものだからだ。 “腎臓を売った少年” は、恐らく そういう価値観や人生観を身に付けるような教育をされなかった少年だろう。 また 手術をした医師らも、倫理観に欠け 金儲けに走る行為に手を染めるような医師だったわけだ。
異国の地に住む私は、様々な報道からの推測しかできないが、20年前から高度成長が続く中国は、利益優先で道徳心が置き去りにされてしまったように感じてならない。 また中国には、見せびらかしの風潮もあるらしい__喫茶店などに来て、テーブルに 10 万円もする豪華な携帯電話をデーンと置いて、さも “オレの持っているのは高価なんだ” と見せびらかす人もいると読んだこともある。
事業を起こして利益を出すのは大いに結構だが、企業や個人としての行動には倫理観も必要だろう。 利益さえ出せば何をしても許される、というものではないはずだ。 外面よりも内面の方が大事だが、内面というのは、簡単には分かり難いものでもある。
“腎臓を売った少年” は、手に入れた iPad を見せびらかしたかったのかも知れないが、その代償は高かったことにようやく気づいただろう。 ヘタをすれば、命に関わることになるからだ。
そんな見せびらかしの風潮を生み出さないためにも、しっかりした倫理教育が必要だ。 世の中には電子機器よりも何よりも、自分の体を大切にしなくてはならないし、そういう考え方を尊敬するような風潮も必要だ。
自分の体を大切にするということは、他人の体も大切にするということでもある。 そういう考え方が広まれば、世の中全体が優しくなっていく (と信じているが、他国のことだから、そうそう簡単に考えは変わらないのかも)。
中国人よ、もっと自国と他国、そして地球全体に優しくなって欲しい、あなた方は一国だけでも世界人口の数分の1を占めるほど、人口は多く、影響力も大きいと自覚して欲しい。 浪費する地球資源も無限ではないのだ。
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「iPad を買うために腎臓を売った少年が腎不全に、医師ら5人を起訴―中国」(4月7日 Record China) _ ※追加1へ
「中国の少年、”腎臓” 売ってスマホやアイパッド購入 5人逮捕」(4月7日 CNN) _ ※追加2へ
「高度成長の終わった中国で顕在化した問題点」(4月7日 川嶋 諭/JBpress) _ ※追加3へ
「中国の少年、”腎臓” 売ってスマホやアイパッド購入 5人逮捕」(4月7日 CNN) _ ※追加2へ
「高度成長の終わった中国で顕在化した問題点」(4月7日 川嶋 諭/JBpress) _ ※追加3へ
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以上
※追加1_ 6日 BBC中国語サイトは、iPad を買うために自分の腎臓を売った17歳少年の事件について、容疑者5人がすでに起訴されたと報じた。
2011年4月 安徽省に住む17歳の少年は人気の電子製品 iPad が欲しくなり、ネットで知り合った腎臓売買仲介業者と契約。 湖南省で摘出手術を受け、2万2000元 (約28万6000円) を受け取った。 しかし腎臓を売った事実はすぐに母親にばれた。 警察に通報され、「iPad のために腎臓を売った事件」はたちまち大ニュースとなった。
すでに湖南省警察は仲介業者3人と移植手術に携わった病院関係者2人を逮捕、起訴している。 業者らが少年の腎臓移植手術で得た金は計 22万元 (約286万円)、少年に渡されたのはそのわずか 10分の1だった。 摘出手術から約1年、少年の容体は悪化する一方で、深刻な腎不全になっているという。
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※追加2_ 中国の新華社通信は7日までに、10代少年の腎臓を不法売買したとして南部の雲南省の外科医ら5人が逮捕、起訴されたと報じた。 少年は約 3500ドル の謝礼をもらい、一部を多機能携帯端末 iPad やスマートフォン iPhone の購入に使っていた。
少年は安徽省に住む17歳の高校生で、昨年4月に腎臓を取り出す手術を受けていた。 現在は腎臓の機能障害を患い、症状は悪化しているという。
高校生は iPad などを買った金の出所を母親に問い詰められ、腎臓を提供したことを明かしていた。
5人は傷害の罪に問われている。 新華社によると、容疑者の1人は賭博の借金に困り、不法な腎臓売買でもうけることを画策。 インターネットのチャット欄などを通じて腎臓の提供者を探し、病院で手術を受けさせていた。
容疑者の1人は雲南省の病院に勤める外科医で、腎臓売買で約 3万5000ドル を稼いでいたという。
中国の衛生省によると 臓器移植を必要としている国民は約 150万人 だが、手術を受けているのは毎年 1万人 となっている。
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※追加3_ ■ 欠如する道徳心、異常な海外留学熱、賃金高騰・・・■
_中略_
■ 高度経済成長が終わった中国 ■
「失われた道徳心」が中国の国家的問題に高度成長という魔法が解け始めた中国
中国の不均衡是正に「万歳二唱」
海外留学に殺到する中国人、価値観の変化の契機
姫田小夏による「失われた道徳心」と英フィナンシャル・タイムズ紙の「海外留学に殺到する中国人」の2編は、急速に経済成長した中国社会のひずみをリポートした記事だ。
姫田さんは、いま中国では8つの問題が国家的関心事になっているという。
「1)住宅価格と固定資産税改革、2)物価、3)収入格差、4)“老三難” といわれる教育、医療、失業問題、5)食品の安全性、6)スクールバスの安全性、7)ミニブログと社会の管理、8)道徳心の喪失、がそれである」
「この中で興味深いのは最後の「道徳心の喪失」だ。「道徳心の喪失」はここに来て浮上してきた新しい社会問題である」
「上海でも社会道徳の欠如を嘆く声が日増しに強まっており、中国政府もまたこれを重視している」
経済成長を最優先してきた中国では、お金こそがすべてという風潮が蔓延するようになってしまった。 かつて お互いに助け合ってきた社会は、目の前に起きた人の不幸を見て見ぬふりをして通り過ぎる社会へと変質した。
経済成長のおかげで確かに中国は豊かになった。 しかし、それで本当に幸せになったのかと中国人が自問自答し始めたというのである。
いま 中国人の経営者の一部で儒教や仏教がブームになっているという。 すなわち「得」から「徳」へのシフトが起き始めたと見ることができる。
徳を失った中国人は海外、とりわけアフリカやアジアで様々な問題も起こしている。 欧州人の間では中国人だと分かると露骨に嫌な顔をする人が増えているとも聞く。
徳ある社会へ中国は変質できるのか。 実質はともかく制度上は社会主義を貫いている中国が変わることはそう容易ではないし、変化にはいまの国家が誕生して以来の日時以上が必要になるのではないか。 それは歴史が教えることでもある。
■ 海外の有名大学を目指す中国人 ■
英フィナンシャル・タイムズ紙の「海外留学に殺到する中国人、価値観の変化の契機」は、中国の家庭における変化をリポートしたものだ。
今まで中国国内の有名大学に入ることを目標に据えてきた人々が、それらを卒業したあとに海外の有名大学への留学を目指すようになっているという。
「過去2年間で、62万人の中国人学生が海外留学に行った。 これは、1978年に中国の改革政策が始まって以来、海外で学んだ学生総数の4分の1以上に上る数だ」
「『20~30年前に米国に来た中国人学生は、全員とはいわないまでも大半が学界のエリートだったが、今ではかなり層が広がった』と、米国大学教務部長・入学審査部長協会 (AACRAO) 幹部のジェフ・ペトゥルッチ氏はいう」
教育熱心なのは良いことだ。 とりわけ海外で教育を受けると、自分の国の問題点がよく見えるようになる。 FT 紙もそれによる中国の変化に期待している。
ただし、留学している中国人は欧米の文化に積極的に触れようとしているわけではないという。
「多くの中国人学生にとって、欧米の生活に適応するのは難しい。 暗記学習に重点を置く学校制度に慣れている彼らは、クラスでの討論に参加するのに苦労することが多く、欧米人のクラスメートとは付き合わない」
それでも、中国に閉じこもっているよりは海外に出ることで少しずつでも中国人の心に変化が生じ始めているのは事実だと見る。
「エジンバラで学び、北京で英語を教えているジェン・ヤン・シューティンさんには、確かにこれが当てはまる。『もっと大勢の人が海外に行き、私がしたように自分の目で見れば、外の世界と中国の関係はもっと正常化するでしょうね』」
■ 貿易黒字を減らした中国の問題点 ■
もう1本の FT 紙はマーティン・ウルフ氏による論文で、中国の対外黒字が減少をどう評価するかという視点だ。 結論からいえば、かなり改善はしているが、まだまだ不十分ということになる。
「中国の国際収支は、ジェットコースターのように激しく上下してきた。 経常黒字は2003年から2007年にかけて、国内総生産 (GDP) 比 2.8% から 10.1% に増加した。 その後 黒字は急減し、2011年には GDP 比 2.9% まで落ち込んだ」
しかし GDP 比で大幅に減ったとはいっても、貿易相手国との関係においては必ずしも黒字が減少したことにはならない。 貿易相手国の GDP 比で見るべきだとウルフ氏はいう。
「中国のドル建て GDP が年間 15% 拡大したとすれば、黒字額は2016年には 4000億ドル を超えることになる。 中国の実質為替レートは上昇する可能性が高いため、年間 15% という GDP 成長率は妥当な数字だ」
「他国に課せられる調整の規模を評価したいと思ったら、中国の GDP ではなく、それらの国々の GDP との関係で黒字を見なければならないのだ」
不十分とはいえ 中国は貿易黒字を減らしてきたことは世界経済にとっては好ましいことであった。 しかし、中国はその過程で大きな問題を抱えてしまった。
本来は黒字で稼いだ資金を家計に回して消費を上げるべきところを、国内投資に回して経済成長を達成してきたことだ。
「中国は筆者が予想していたよりもはるかにうまく、巨額の経常黒字と貿易黒字を削減してきた。 だが この変化をもたらす主たる国内要因は、実質為替レートの上昇に支えられた、目も眩むような水準への投資の急増だった」
「だが その結果、今求められる国内調整は危機以前よりも大きくなっている。 経済成長率が鈍る一方で、対外黒字が GDP 比で一定の水準を保つのであれば、消費と投資の相対的な伸び率に著しい転換が起きることは不可欠だ」
国民に消費を喚起することは極めて難しい。 それはバブル期の日本を見ても、リーマンショック前の米国経済を見ても分かる。
「見込まれている 7% の GDP 成長率を達成するためには、投資が 4.6% 拡大する一方、消費 (公的部門と民間部門の合計) が実質 9% のペースで拡大しなければならない。 これは驚くべき逆転になる」
中国は貿易黒字を減らし問題解決へ一歩前進したかに見えるが、実はさらに大きな問題を抱え込むことになってしまった。 ウルフ氏はそう結論づけている。
■ 賃金が高騰、製造業の競争力は大幅に低下 ■
そうした中国経済の変節を長年中国を見てきた目で体感的に解説してくれているのが、宮家邦彦さんの「高度成長という魔法が解け始めた中国」である。
「この10年間で人々の収入はどれだけ上昇したのだろうか。 手元に信頼できる統計はない。 口コミで仕入れた話をご紹介するので、イメージをつかんでいただきたい」
「例えば、アーイー (お手伝い) さんの月給だが、2000年には1カ月 1000元 から 1500元 も払えばフルタイムのアーイーを雇うことができた」
「ところが 今は1カ月 3000元 必要で、さらにボーナスを年2回出すことも珍しくないと聞く。 3000元 といっても日本円では 4万円 程度だが、それにしても、この10年で2~3倍になったということだ」
「さらに 中国政府は今後5年間、最低賃金を毎年 13% ずつ増額するのだそうだ。 ざっと5年で2倍近くになる最低賃金倍増計画である。 しかも これはあくまで単純労働者の話、最先端の IT エンジニアなどの給料となれば、その上昇率は我々の想像をはるかに超えるだろう」
人件費が高騰している中で、中国では製造業中心の経済発展はもう難しいという声が上がっているそうである。
「『中国の市場自体は終わらないが、製造業はもう終わりつつある、3年以内に引っ越しを考えている』といった企業が少なくないのだそうだ」
特権的地位で様々な恩恵にあずかってきた中国の官僚も、最近ではあまり “おいしい商売” ではなくなっているという。
「振り返ってみれば 2000年代に中国は急速に豊かになったが、同時にそれは『中国的奇跡』の時代の終焉を意味していたのかもしれない」
多額の軍事費を使い続け 世界的な脅威になりつつある中国だが、足元では用意ならざる経済運営を求められている。 今後も中国から目が離せない。
以上