
左は各社微細化の状況 (※1から)。 右は米インテルの業績 (https://us.minkabu.jp/stocks/INTC/financial_statements)。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
19日の日経新聞では 2つの記事でラピダスについて大きく取り上げていました。 回路線幅 2ナノメートル半導体の試作品を報道陣に初公開したそうですから、2027年量産に向けて順調に推移しているとアピールし、出資会社や出資している国にも安心感を与えたかったのでしょう。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
『ラピダス、2ナノ半導体の試作品初公開 27年量産へ顧客開拓託す』(7月19日 日本経済新聞 ※1)
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
それはそれで結構な話しですが、私がいぶかしく思ったのは、記事に添えられた図です。
先進3社 (TSMC・サムスン・インテル) が揃って 3nm 製品を量産していると表現されていますが、実情は違います。 量産はしているが、その中身は全然別物です。
………………………………………………
韓国サムスンは、確かに台湾 TSMC に次いで先端 IC を量産していますが、歩留まりが良くないという噂が流れています。 歩留まり=良品率が低いらしいのです。 各社とも歩留まりは “秘中の秘” で、絶対 社外に情報を出しません。
そんな情報が出たら、その IC メーカーの1個あたりのコストが判ってしまい、競合で不利になる事 請け合いです。 ですから 噂で流れて来るのです。
サムスンよりももっと悪いのは米インテルです。 インテルは 10nm 未満辺りの先端 IC から出荷に苦労し、歩留まりが上がらないという噂が流れていました。 歩留まりが良ければ、1個あたりのコストが下がり 収益も良くなります。
しかし インテルの業績はどうだったでしょうか? 上記右グラフにあるように、売上は21年をピークにダラ下がり、純利益も20年をピークに下がり続け、24年は赤字となってしまいました。
24年のインテルの記事を読むたびに、同時に掲載される CEO の写真を見ていたら、CEO の表情がずっと冴えなく 笑顔がないのが気になっていましたが、とうとう業績不振の責任を取って辞任してしまいました。
………………………………………………
過去 半導体の歴史で、インテルは業界を牽引する不倒の最強会社でしたが、21世紀に入ってからは 売上でサムスンに抜かれ、かつての勢いが見られなくなってきました。
その理由は、米国の労働事情にもあると推理します __ 米国人は額に汗して手を汚し、過酷で長時間の労働を好まなくなってきたのです。 快適な部屋で PC 画面の前に座って、クリックするだけで何千ドル 何万ドルを稼ぐような IT 関連の職がもてはやされる時代になってきているのです。
半導体工場の仕事は、どちらかというと上記のような快適さとは “真逆の環境” だと思います。 しかも給料が高いとはいえず、そうなると いい人材が集まるかというと 違うと思わざるを得ません。
そうした事が重なって、インテルの半導体工場の稼働がうまく行かず、結果的に歩留まりが悪化して、コスト高になり、赤字経営になってしまったのです。 日本もそうならないとはいえませんが、ラピダス社には頑張ってもらい、もう一度 日本の半導体産業の花を咲かせてほしいものです。
………………………………………………
ただ ラピダス社の製造がうまく行ったとしても、まだまだ懸念が残ります。
それは顧客の確保です。 いいモノは出来た。 でも 買い手がいなくては話しになりません。 売上・利益に結びつかないからです。
半導体は、モノにも依りますが 材料を仕込んで製造し出荷するまで3ヶ月~半年掛かります。 好況だった頃に受注したが、3ヶ月~半年後には不況になり キャンセルになってしまうケースもあります。
また ラピダス社が製造するような先端 IC は、用途がある程度決まっており、それは PC やスマホ、サーバーなどの先端機器で、一般電子機器ではありません。 先端機器に採用される先端 IC は TSMC のほぼ独占状態にありますから、ここに食い込むのはもちろん 楽ではありません。
製造と営業、そして高度人材がうまく組み合わさって、製品が流れ、顧客が支払うのですから、それらを効率よく管理するのも並大抵な事ではなく、しかも多くの人が絡んできます。 経営者だけの個人的力量ではとても成し得るものではありません。
... と心配の種は尽きないのですが、うまくやって欲しいものですね。
今日はここまでです