
写真左は、12月5日 ユーロ圏15カ国の国債格付けを格下げ方向で見直すと発表した格付け機関のスタンダード・アンド・プアーズ (S&P)。 右は女子マラソン 高橋尚子。
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久しぶりに 日本経済について明るい、鼓舞される話しを読んだ。
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「欧米経済の低迷で日本復活か」(12月7日 真壁昭夫コラム/ダイヤモンドオンライン) _ ※追加1へ
「消えゆくトリプルA、"安全資産" て何?」(12月7日 Tracy Alloway / Financial Times / JBpress) _ ※追加2へ
「独仏15カ国格下げ検討 S&P、安定化基金も見直し」(12月7日 産経新聞/ロンドン) _ ※追加3へ
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一方で またまた欧州の金融不安を加速させるような記事も出た__米格付け会社による ユーロ圏 15カ国の長期国債格付けを引き下げる可能性があると発表だ。 米格付け会社は今夏 米日の国債格下げも発表している。
日米欧の国債が格下げになれば、ある意味 これで先進国はバランスが取れる、という見方もできる。 先進国の中央銀行や大銀行は互いに資金を融通し合っているから、一国だけが超健全で、それ以外は超不安定 ということにはならないだろう。
だが、そのドングリの背比べの中でも、差はある__それが、真壁氏のいう「日本の金融機関はバブルの "重荷" をすでに処理し終わり、身軽になっている」ことから、日本は比較的健全な部類に入ると想像する。 だから 世界の投資家は、手持ち資産の一時避難場所として今 円買いを行い、それが "円高" という結果に繋がっている。 市場は正直だ。
ただ、日本経済にも勿論 弱点はある__日本の財政悪化だ。「日本国の借金 (国債や借入金) の2011年度末の残高が 1024兆円 に達する見通しで、国民1人当り 802万円。 地方自治体の借金も合わせた債務は09年度末に既に 1000兆円 を越えている」(日経 11月5日)
1人当り 800万 もの借金を背負いながら、日本経済の見通しは明るい という専門家の記事が出るのだから、日本の潜在成長力はそうそう見捨てたものではないのだろう。
たまには、こういうポジティヴな話しもいいだろう。 ダメだダメだとばかりいい続けていると、ほんとにダメになってしまう可能性もあるからだ。 子育てや、運動選手の育成、部下の育成強化などでは、"褒めることが大事" ということはよくいわれる。 2000年シドニーオリンピック・マラソン女子で金メダリストとなった高橋尚子のコーチ 小出 義雄監督の「ほめて育てる」という選手育成方法が一躍 有名になったものだ。
以上
※追加1_ ● 気づけば "一周遅れのフロントランナー" に! 世界危機で聞こえ始めた「2012年日本再浮上」の福音 ●
1990年のバブル崩壊以降 わが国経済は、長期低迷の時期を過ごしてきた。 その間 物価変動を加味しない名目ベースでの経済成長率は低下し、我々の給与はほとんど上昇していない。
その時期を、我々は "失われた20年" と称した。 多くの日本人が自信を失い "縮み志向" の中で生活してきたともいえる。 足もとでも、ユーロ圏の信用不安の拡大など暗いニュースが多い。 だが私は、そうした経済環境の急激な変化は、日本経済にとって「復活のチャンス」と見るべきと考える。
主な理由は3つある。 1つは、欧米経済の低迷が続きそうなことだ。 欧米の経済は、まだ不動産バブルの後始末=バランスシート調整を完全に終了していない。 特に、欧州諸国はこれから財政支出を絞り込む。 本格的な景気回復までには、時間を要することだろう。
2つ目は、今後 世界経済の中心となることが予想されるアジア諸国との親密な関係だ。 これから大規模なインフラ投資が見込まれる新興国、特にアジア諸国との関係を生かすことができれば、わが国の持つ高い技術力は大きな武器になるはずだ。
そして 3つ目は、わが国経済が身軽なことだ。 1990年初頭 わが国の大規模な資産バブルが崩壊した後、わが国の金融機関は足かけ13年間の歳月をかけて不良債権を処理し、わが国経済はバランスシート調整を終わらせた。
つまり わが国経済は、欧米諸国と比較するとバブルの "重荷" をすでに処理し終わり、身軽になっているのである。 問題は、我々自身が元気になれるか否かだ。 わけのわからない政治など置き去りにして、我々自身が前を向いてリスクに立ち向かうことができれば、わが国経済はチャンスを生かすことができるはずだ。
■ バブル崩壊を経て、気づけば日本は
「一周遅れのフロントランナー」に? ■
1990年代初頭の大規模なバブルの崩壊以降 わが国のプレゼンスは大きく低下した。 80年台 わが国が "世界の工場" だった時期、世界中どこに行っても日本メーカーのブランド名が付いた電器製品を見ることができた。 また 一部のICチップにおいて、世界での市場占有率が8割を超える品目もあった。
ところが現在では、家電製品の有力ブランド名は、韓国のサムスン、LG、あるいは中国のハイアールにとって代わられた。 成長著しいスマートフォン市場でも、わが国企業の存在感は低下している。
そうした状況を見て、多くの投資家が日本株に対する興味を失ったり、国際社会の中で「日本が凋落しつつある」と認識し、バブル崩壊後に経済が低迷する "日本病" という言葉すらできた。
ただし、2000年代後半 欧米社会で大規模な不動産バブルが発生し、今その後始末にかまけている状況を冷静に分析すると、バブル崩壊後に経済活動が低迷期を続けることは、なにも わが国だけに限ったことではないことがわかる。
わが国が景気低迷に苦悩しているとき 現在 FRB の議長を務めるバーナンキ氏は、当時のわが国を見て、「日銀はヘリコプターからおカネをまけば、日本の景気は改善する」と提言した。
そのバーナンキ議長は、今 金融を超緩和気味にし、多額のドル紙幣を印刷して市中にばらまいている。 それでも、「米国の労働市場の回復はイライラするほど遅い」と認識している。
一方 バブル期に高い経済成長に酔ったユーロ圏は、今その大きな "ツケ" を払っている。 ギリシャやポルトガル、イタリアにまで信用不安の波が押し寄せ、下手をするとユーロの崩壊や世界大恐慌につながる、とまでいわれる状況になっている。
わが国は、バブルの後始末を先に終了したぶんだけ、「マラソンの先頭」に立っているといえる。 一周遅れかと思ったら、むしろ "フロントランナー" になっているのだ。
■ バブルの後始末に苦しむ欧米諸国 復興需要の本格化が国内需要を刺激 ■
足もとの世界経済を見ると、欧州圏の経済は、今後バブルの後始末に時間を取られることだろう。 ドイツを除く主要国は、いずれも財政支出を切り詰め、財政再建に軸足を置かざるを得ないからだ。
これから金融政策を緩めて資金を潤沢に供給し、共通通貨であるユーロ安政策を採って、輸出を振興することになるはずだ。
米国は、ユーロ圏よりも先に超金融緩和策を実施し、ドル安誘導によって輸出に依存した景気回復を意図してきた。 最近の経済指標を見る限り、その政策意図は相応の効果を上げている。
今後の課題は、労働市場の回復が遅れていることに加えて、来年の大統領選挙を控え、政治情勢が不安定なことだ。 財政赤字削減の協議が決裂したように、米国の政治が上手く役割期待を果たせないようだと、実体経済に与える悪影響は無視できない。
また 住宅市場の本格的な回復にはまだ時間がかかる状況下、労働市場の回復の遅れが、家計部門の消費活動に悪影響を与えるようだと、景気回復の足取りは一段と重くなるだろう。
中国などの新興国は、ユーロ圏の景気下落などの影響を受けることは避けられないものの、"経済年齢" の若い新興国には旺盛な成長のダイナミズムがある。 それほど心配はないだろう。
一方 わが国では、これから復興需要が本格化することが期待できる。 第三次補正予算の執行によって、おそらく GDP は 1% 程度押し上げられるはずだ。 それは、国内企業にとって大きな福音だ。
また 国内需要に加えて、ベトナムやインドネシア、タイなどのアジアの新興国のインフラ投資が盛り上がってくると、わが国の産業界は、高い技術や生産余力を使って その需要を取り込むチャンスがやってくる。
■ リスクに対して冷静に対峙せよ 日本人は "縮み志向" から脱却できるか ■
1990年代初頭以降のわが国を振り返ると、我々自身があまりに自信をなくしていたことに気が付く。 バブルの学習効果があまりに働きすぎて、「何をやっても上手く行かない」と思いがちだった。
例えば 米国流の金融工学の考え方が入ってくると、「欧米流の考え方にはかなわない」とすぐに尻尾を巻いてしまった。
しかし冷静に考えると、そうした先進の金融工学を駆使した LTCM (ロングターム・キャピタル・マネジメント) は、97年のロシア危機で破綻してしまった。 米国が誇った有力投資銀行のリーマンブラザーズも、08年9月に破綻の憂き目に遭った。
また 高い見識を誇ってきたユーロ圏の多くの国は、現在 バブルの後始末の “ツケ” を払っている最中であり、政策対応を誤ると国の財政が破綻するところまで追い込まれている。
つまり 我々日本人が手本として崇めてきた欧米社会も、わが国と同じことを繰り返し、同じ道を歩んでいるのである。 彼らが、我々が及びもつかない世界に住んでいるのでないことは明らかだ。
だからといって、「欧米諸国にバチが当たった!」といってみたところで、始まらない。 そのチャンスを冷静に使うことを考えるべきだ。 円高が進んで、多くの国内企業が大変なことは確かだが、逆にいえば 海外企業を買ったり、海外への直接投資には好機になるはずだ。
要は、我々自身が今までの "縮み志向" から脱却して、リスクに冷静に対峙することが必要なのである。 闇雲にリスクをとることは、必ずしも勝利への道ではない。
冷静にリスクを検討して、「充分な勝算あり」と判断したら、大胆に事業展開を行なうことも必要になるはずだ。 2012年 今までの発想を転換して、色々なことにチャレンジしたいものだ。
……………………………………………………
真壁昭夫 [信州大学教授]__1953年神奈川県生まれ。 一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行 (現みずほ銀行) 入行。 ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。 みずほ総研主席研究員などを経て現職に。 著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。
……………………………………………………
※追加2_ 大きな声で人にいわないでほしいのだが、公式に「安全」とされる資産の供給が急速に縮小している。
格付け機関のスタンダード・アンド・プアーズ (S&P) は、12月5日 トリプルA格付けを持つ6カ国を含め、ユーロ圏15カ国の格下げを検討すると発表した。 これで安全な資産の供給縮小はさらに加速するだろう。
S&P は、既にトリプルA国債の大きな供給源だった米国から、最高級のトリプルA格付けを取り上げている。
トリプルA格付けの担保証券の新規供給量は2008年にかけて増加し、09年以降は減少に転じた。 エボリューション・セキュリティーズによれば、もし S&P がユーロ圏のトリプルA国債をすべて格下げすれば、「安全」な有価証券の発行残高は少なくとも 3兆ユーロ 減るという。
信用格付け機関からトリプルAのお墨付きを得た「リスクフリー」資産という概念は、以前から現代金融システムの大部分にとって要 (かなめ) となっており、今もその状況は変わっていない。
● 今のところ市場は反応薄 ●
しかし 大量のトリプルAがさらに失われる可能性に関しては、今のところ市場の反応は非常に楽観的だ。 ドイツを含むユーロ圏の「中核国」が発行する国債の利回りは、S&P の発表後ごくわずかに動揺しただけで、数ベーシスポイント (bp、1bp=0.01% 金融分野で債券の利回りや、金利の変動に用いられる単位) の上昇で収まった。
実際 RBS (ロイヤルバンク・オブ・スコットランド) のアナリストらは顧客向けのメモで、「もし S&P がユーロ圏6カ国のトリプルAをすべて格下げすれば、少なくとも S&P の格付けの世界では、ダブルAが新たな標準になる」と解説している。
S&P からトリプルAの印を与えられていようといまいと、相対的にリスクが高い市場の現在の混乱から逃れる避難先を提供してくれる「安全」資産に対する需要はなくならないだろうと、ストラテジストたちは口をそろえる。
市場では、多くの人が格付け以外の面に目を向けている。「金融抑圧」を感じ取る人もいる。 金融抑圧とは、債務を負った政府によって投資が特定の投資先に仕向けられるという概念だ。
世界最大級の債券投資会社ピムコの最高経営責任者 (CEO) モハメド・エラリアン氏は、「金融抑圧と異常なほどの市場の不確実性、不安定さが組み合わさり、人々がリスク資産から離れている」と話す。「今では一部の投資家は資本収益率より資本そのものの回収について心配しているようだ」
S&P が、8月に米国の格付けを引き下げた時 米国債の利回りはむしろ下がった。 格下げを巡る派手な報道や政界の騒動をものともせず、投資家は米国債を買い続けた。
同じように、今回の S&P による発表後の6日 ドイツ国債の利回りが小幅な上昇で済んだだけでなく、ユーロもわずかに動いただけで、対ドル相場は 0.1% 足らずしか下落しなかった。
● ドイツ短期国債のマイナス利回りが意味するもの ●
避難先の需要があまりに根強いため、一部の国債の利回りはここ数週間でマイナスに転じている。 投資家は事実上、ドイツが発行する短期債に投資する特権に対してカネを払っているのだ。
UBS (Union Bank of Switzerland) のエコノミストとして世界市場を担当するポール・ドノバン氏は、安全資産への逃避は「この種の (危機的な) 状況では典型的な動きだ」と話す。 マイナスの国債利回りは「基本的に、自分のカネがこれ以上ないほど安全だという確証を得るためだけに、税金を支払う用意がある」ことを意味しているという。
規制も投資家をより安全とされる有価証券に向かわせている。 例えば 新たなバーゼル規制では、銀行は市場の混乱を乗り切るため、国債を含む流動資産を大量に保有しなければならない。
英モニュメント・セキュリティーズのマーク・オストワルド氏は、「リスクフリーの資産などいうものは存在しない」と話す。「しかし、多くの規制制度が『リスクフリー』という時代遅れの概念を軸にしており、これが状況をさらに悪くしている」
S&P に格下げされる恐れがあるのは、ユーロ圏諸国の政府が発行する 3兆ユーロ 超の国債だけでは済まないだろう。
地方自治体の債券やユーロ圏の銀行が発行する債券、ユーロ圏の救済基金である 4400億ユーロ 規模の欧州金融安定機関 (EFSF) まで波及する可能性が高い。 S&P は、6日 EFSF のトリプルAも格下げの可能性があると警告した。
バークレイズ・キャピタルのアナリストらは、「新たに格下げされた債券に投資し続ける以外、実行可能な選択肢はほとんどない」と述べている。
ドノバン氏によれば、大手の機関投資家は3~4年前から、ポートフォリオに対する格付けの制約を取り払っており、S&P による米国債の格下げ以降、この傾向は加速しているという。
● 目先はトリプルAに近いものに頼るしかないが・・・ ●
それ以外の投資家は根本的な問題に直面する。
「これからの数年間、どのように資金を運用していくのか。(トリプルAの減少は)この問題に本当に重要な意味を持つ」と、ピムコのエラリアン氏は話す。「短期的には、1をゼロに置き換えることはできない。 そのため、今後もトリプルAに最も近いものに頼ることになるだろう」
長期的な影響を読み解くのは、「それよりはるかに難しい」と、エラリアン氏はいい添えた。
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※追加3_ 米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ (S&P) は5日、欧州単一通貨ユーロ圏 17カ国のうち 15カ国の長期国債格付けを引き下げる可能性があると発表した。
最上級格付けのドイツやフランスなども含まれる。 6日には欧州債務危機対策を担う欧州金融安定化基金 (EFSF) の長期債格付けも引き下げる方向で見直すと発表。 重債務国への資金供給に影響が出る恐れも出てきた。
独仏首脳は、5日 財政規律の違反国に制裁を科す新条約締結を目指すことで合意。 イタリアやスペインの10年国債利回りが「危険水域」とされる 7% を大幅に下回る 5% 台に急落するなど 危機回避への期待感が高まっていただけに、冷や水を浴びせられた形だ。
S&P は、ギリシャとキプロスを除く15カ国を「ネガティブ (弱含み)」に指定し、90日以内に2分の1の確率で格下げする。 欧州連合 (EU) 首脳会議で示される対策が十分でないと判断すれば 即座に格下げする。 フランスなど9カ国は一気に2段階格下げされる可能性がある。
現在 ユーロ圏での最上級格付け国は6カ国。 その信用力を背景に債券を発行し、重債務国への融資資金を調達している EFSF の格付けも最上級だが、S&P は EFSF も15カ国と同様の対応が必要と判断。 1~2段階引き下げる可能性があるとしている。 実際に EFSF が格下げされれば 資金調達コストがかさみ、欧州債務危機が再び悪循環に陥る危険性がある。
8、9日の EU 首脳会議では EFSF 強化も協議する予定だが、S&P による格下げという事態も想定する必要が出てきた。 S&P はギリシャの債務危機発覚後に抜本的対策を取れず、危機を拡大させた意思決定の構造的な弱さを問題視している。
以上
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久しぶりに 日本経済について明るい、鼓舞される話しを読んだ。
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「欧米経済の低迷で日本復活か」(12月7日 真壁昭夫コラム/ダイヤモンドオンライン) _ ※追加1へ
「消えゆくトリプルA、"安全資産" て何?」(12月7日 Tracy Alloway / Financial Times / JBpress) _ ※追加2へ
「独仏15カ国格下げ検討 S&P、安定化基金も見直し」(12月7日 産経新聞/ロンドン) _ ※追加3へ
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一方で またまた欧州の金融不安を加速させるような記事も出た__米格付け会社による ユーロ圏 15カ国の長期国債格付けを引き下げる可能性があると発表だ。 米格付け会社は今夏 米日の国債格下げも発表している。
日米欧の国債が格下げになれば、ある意味 これで先進国はバランスが取れる、という見方もできる。 先進国の中央銀行や大銀行は互いに資金を融通し合っているから、一国だけが超健全で、それ以外は超不安定 ということにはならないだろう。
だが、そのドングリの背比べの中でも、差はある__それが、真壁氏のいう「日本の金融機関はバブルの "重荷" をすでに処理し終わり、身軽になっている」ことから、日本は比較的健全な部類に入ると想像する。 だから 世界の投資家は、手持ち資産の一時避難場所として今 円買いを行い、それが "円高" という結果に繋がっている。 市場は正直だ。
ただ、日本経済にも勿論 弱点はある__日本の財政悪化だ。「日本国の借金 (国債や借入金) の2011年度末の残高が 1024兆円 に達する見通しで、国民1人当り 802万円。 地方自治体の借金も合わせた債務は09年度末に既に 1000兆円 を越えている」(日経 11月5日)
1人当り 800万 もの借金を背負いながら、日本経済の見通しは明るい という専門家の記事が出るのだから、日本の潜在成長力はそうそう見捨てたものではないのだろう。
たまには、こういうポジティヴな話しもいいだろう。 ダメだダメだとばかりいい続けていると、ほんとにダメになってしまう可能性もあるからだ。 子育てや、運動選手の育成、部下の育成強化などでは、"褒めることが大事" ということはよくいわれる。 2000年シドニーオリンピック・マラソン女子で金メダリストとなった高橋尚子のコーチ 小出 義雄監督の「ほめて育てる」という選手育成方法が一躍 有名になったものだ。
以上
※追加1_ ● 気づけば "一周遅れのフロントランナー" に! 世界危機で聞こえ始めた「2012年日本再浮上」の福音 ●
1990年のバブル崩壊以降 わが国経済は、長期低迷の時期を過ごしてきた。 その間 物価変動を加味しない名目ベースでの経済成長率は低下し、我々の給与はほとんど上昇していない。
その時期を、我々は "失われた20年" と称した。 多くの日本人が自信を失い "縮み志向" の中で生活してきたともいえる。 足もとでも、ユーロ圏の信用不安の拡大など暗いニュースが多い。 だが私は、そうした経済環境の急激な変化は、日本経済にとって「復活のチャンス」と見るべきと考える。
主な理由は3つある。 1つは、欧米経済の低迷が続きそうなことだ。 欧米の経済は、まだ不動産バブルの後始末=バランスシート調整を完全に終了していない。 特に、欧州諸国はこれから財政支出を絞り込む。 本格的な景気回復までには、時間を要することだろう。
2つ目は、今後 世界経済の中心となることが予想されるアジア諸国との親密な関係だ。 これから大規模なインフラ投資が見込まれる新興国、特にアジア諸国との関係を生かすことができれば、わが国の持つ高い技術力は大きな武器になるはずだ。
そして 3つ目は、わが国経済が身軽なことだ。 1990年初頭 わが国の大規模な資産バブルが崩壊した後、わが国の金融機関は足かけ13年間の歳月をかけて不良債権を処理し、わが国経済はバランスシート調整を終わらせた。
つまり わが国経済は、欧米諸国と比較するとバブルの "重荷" をすでに処理し終わり、身軽になっているのである。 問題は、我々自身が元気になれるか否かだ。 わけのわからない政治など置き去りにして、我々自身が前を向いてリスクに立ち向かうことができれば、わが国経済はチャンスを生かすことができるはずだ。
■ バブル崩壊を経て、気づけば日本は
「一周遅れのフロントランナー」に? ■
1990年代初頭の大規模なバブルの崩壊以降 わが国のプレゼンスは大きく低下した。 80年台 わが国が "世界の工場" だった時期、世界中どこに行っても日本メーカーのブランド名が付いた電器製品を見ることができた。 また 一部のICチップにおいて、世界での市場占有率が8割を超える品目もあった。
ところが現在では、家電製品の有力ブランド名は、韓国のサムスン、LG、あるいは中国のハイアールにとって代わられた。 成長著しいスマートフォン市場でも、わが国企業の存在感は低下している。
そうした状況を見て、多くの投資家が日本株に対する興味を失ったり、国際社会の中で「日本が凋落しつつある」と認識し、バブル崩壊後に経済が低迷する "日本病" という言葉すらできた。
ただし、2000年代後半 欧米社会で大規模な不動産バブルが発生し、今その後始末にかまけている状況を冷静に分析すると、バブル崩壊後に経済活動が低迷期を続けることは、なにも わが国だけに限ったことではないことがわかる。
わが国が景気低迷に苦悩しているとき 現在 FRB の議長を務めるバーナンキ氏は、当時のわが国を見て、「日銀はヘリコプターからおカネをまけば、日本の景気は改善する」と提言した。
そのバーナンキ議長は、今 金融を超緩和気味にし、多額のドル紙幣を印刷して市中にばらまいている。 それでも、「米国の労働市場の回復はイライラするほど遅い」と認識している。
一方 バブル期に高い経済成長に酔ったユーロ圏は、今その大きな "ツケ" を払っている。 ギリシャやポルトガル、イタリアにまで信用不安の波が押し寄せ、下手をするとユーロの崩壊や世界大恐慌につながる、とまでいわれる状況になっている。
わが国は、バブルの後始末を先に終了したぶんだけ、「マラソンの先頭」に立っているといえる。 一周遅れかと思ったら、むしろ "フロントランナー" になっているのだ。
■ バブルの後始末に苦しむ欧米諸国 復興需要の本格化が国内需要を刺激 ■
足もとの世界経済を見ると、欧州圏の経済は、今後バブルの後始末に時間を取られることだろう。 ドイツを除く主要国は、いずれも財政支出を切り詰め、財政再建に軸足を置かざるを得ないからだ。
これから金融政策を緩めて資金を潤沢に供給し、共通通貨であるユーロ安政策を採って、輸出を振興することになるはずだ。
米国は、ユーロ圏よりも先に超金融緩和策を実施し、ドル安誘導によって輸出に依存した景気回復を意図してきた。 最近の経済指標を見る限り、その政策意図は相応の効果を上げている。
今後の課題は、労働市場の回復が遅れていることに加えて、来年の大統領選挙を控え、政治情勢が不安定なことだ。 財政赤字削減の協議が決裂したように、米国の政治が上手く役割期待を果たせないようだと、実体経済に与える悪影響は無視できない。
また 住宅市場の本格的な回復にはまだ時間がかかる状況下、労働市場の回復の遅れが、家計部門の消費活動に悪影響を与えるようだと、景気回復の足取りは一段と重くなるだろう。
中国などの新興国は、ユーロ圏の景気下落などの影響を受けることは避けられないものの、"経済年齢" の若い新興国には旺盛な成長のダイナミズムがある。 それほど心配はないだろう。
一方 わが国では、これから復興需要が本格化することが期待できる。 第三次補正予算の執行によって、おそらく GDP は 1% 程度押し上げられるはずだ。 それは、国内企業にとって大きな福音だ。
また 国内需要に加えて、ベトナムやインドネシア、タイなどのアジアの新興国のインフラ投資が盛り上がってくると、わが国の産業界は、高い技術や生産余力を使って その需要を取り込むチャンスがやってくる。
■ リスクに対して冷静に対峙せよ 日本人は "縮み志向" から脱却できるか ■
1990年代初頭以降のわが国を振り返ると、我々自身があまりに自信をなくしていたことに気が付く。 バブルの学習効果があまりに働きすぎて、「何をやっても上手く行かない」と思いがちだった。
例えば 米国流の金融工学の考え方が入ってくると、「欧米流の考え方にはかなわない」とすぐに尻尾を巻いてしまった。
しかし冷静に考えると、そうした先進の金融工学を駆使した LTCM (ロングターム・キャピタル・マネジメント) は、97年のロシア危機で破綻してしまった。 米国が誇った有力投資銀行のリーマンブラザーズも、08年9月に破綻の憂き目に遭った。
また 高い見識を誇ってきたユーロ圏の多くの国は、現在 バブルの後始末の “ツケ” を払っている最中であり、政策対応を誤ると国の財政が破綻するところまで追い込まれている。
つまり 我々日本人が手本として崇めてきた欧米社会も、わが国と同じことを繰り返し、同じ道を歩んでいるのである。 彼らが、我々が及びもつかない世界に住んでいるのでないことは明らかだ。
だからといって、「欧米諸国にバチが当たった!」といってみたところで、始まらない。 そのチャンスを冷静に使うことを考えるべきだ。 円高が進んで、多くの国内企業が大変なことは確かだが、逆にいえば 海外企業を買ったり、海外への直接投資には好機になるはずだ。
要は、我々自身が今までの "縮み志向" から脱却して、リスクに冷静に対峙することが必要なのである。 闇雲にリスクをとることは、必ずしも勝利への道ではない。
冷静にリスクを検討して、「充分な勝算あり」と判断したら、大胆に事業展開を行なうことも必要になるはずだ。 2012年 今までの発想を転換して、色々なことにチャレンジしたいものだ。
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真壁昭夫 [信州大学教授]__1953年神奈川県生まれ。 一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行 (現みずほ銀行) 入行。 ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。 みずほ総研主席研究員などを経て現職に。 著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。
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※追加2_ 大きな声で人にいわないでほしいのだが、公式に「安全」とされる資産の供給が急速に縮小している。
格付け機関のスタンダード・アンド・プアーズ (S&P) は、12月5日 トリプルA格付けを持つ6カ国を含め、ユーロ圏15カ国の格下げを検討すると発表した。 これで安全な資産の供給縮小はさらに加速するだろう。
S&P は、既にトリプルA国債の大きな供給源だった米国から、最高級のトリプルA格付けを取り上げている。
トリプルA格付けの担保証券の新規供給量は2008年にかけて増加し、09年以降は減少に転じた。 エボリューション・セキュリティーズによれば、もし S&P がユーロ圏のトリプルA国債をすべて格下げすれば、「安全」な有価証券の発行残高は少なくとも 3兆ユーロ 減るという。
信用格付け機関からトリプルAのお墨付きを得た「リスクフリー」資産という概念は、以前から現代金融システムの大部分にとって要 (かなめ) となっており、今もその状況は変わっていない。
● 今のところ市場は反応薄 ●
しかし 大量のトリプルAがさらに失われる可能性に関しては、今のところ市場の反応は非常に楽観的だ。 ドイツを含むユーロ圏の「中核国」が発行する国債の利回りは、S&P の発表後ごくわずかに動揺しただけで、数ベーシスポイント (bp、1bp=0.01% 金融分野で債券の利回りや、金利の変動に用いられる単位) の上昇で収まった。
実際 RBS (ロイヤルバンク・オブ・スコットランド) のアナリストらは顧客向けのメモで、「もし S&P がユーロ圏6カ国のトリプルAをすべて格下げすれば、少なくとも S&P の格付けの世界では、ダブルAが新たな標準になる」と解説している。
S&P からトリプルAの印を与えられていようといまいと、相対的にリスクが高い市場の現在の混乱から逃れる避難先を提供してくれる「安全」資産に対する需要はなくならないだろうと、ストラテジストたちは口をそろえる。
市場では、多くの人が格付け以外の面に目を向けている。「金融抑圧」を感じ取る人もいる。 金融抑圧とは、債務を負った政府によって投資が特定の投資先に仕向けられるという概念だ。
世界最大級の債券投資会社ピムコの最高経営責任者 (CEO) モハメド・エラリアン氏は、「金融抑圧と異常なほどの市場の不確実性、不安定さが組み合わさり、人々がリスク資産から離れている」と話す。「今では一部の投資家は資本収益率より資本そのものの回収について心配しているようだ」
S&P が、8月に米国の格付けを引き下げた時 米国債の利回りはむしろ下がった。 格下げを巡る派手な報道や政界の騒動をものともせず、投資家は米国債を買い続けた。
同じように、今回の S&P による発表後の6日 ドイツ国債の利回りが小幅な上昇で済んだだけでなく、ユーロもわずかに動いただけで、対ドル相場は 0.1% 足らずしか下落しなかった。
● ドイツ短期国債のマイナス利回りが意味するもの ●
避難先の需要があまりに根強いため、一部の国債の利回りはここ数週間でマイナスに転じている。 投資家は事実上、ドイツが発行する短期債に投資する特権に対してカネを払っているのだ。
UBS (Union Bank of Switzerland) のエコノミストとして世界市場を担当するポール・ドノバン氏は、安全資産への逃避は「この種の (危機的な) 状況では典型的な動きだ」と話す。 マイナスの国債利回りは「基本的に、自分のカネがこれ以上ないほど安全だという確証を得るためだけに、税金を支払う用意がある」ことを意味しているという。
規制も投資家をより安全とされる有価証券に向かわせている。 例えば 新たなバーゼル規制では、銀行は市場の混乱を乗り切るため、国債を含む流動資産を大量に保有しなければならない。
英モニュメント・セキュリティーズのマーク・オストワルド氏は、「リスクフリーの資産などいうものは存在しない」と話す。「しかし、多くの規制制度が『リスクフリー』という時代遅れの概念を軸にしており、これが状況をさらに悪くしている」
S&P に格下げされる恐れがあるのは、ユーロ圏諸国の政府が発行する 3兆ユーロ 超の国債だけでは済まないだろう。
地方自治体の債券やユーロ圏の銀行が発行する債券、ユーロ圏の救済基金である 4400億ユーロ 規模の欧州金融安定機関 (EFSF) まで波及する可能性が高い。 S&P は、6日 EFSF のトリプルAも格下げの可能性があると警告した。
バークレイズ・キャピタルのアナリストらは、「新たに格下げされた債券に投資し続ける以外、実行可能な選択肢はほとんどない」と述べている。
ドノバン氏によれば、大手の機関投資家は3~4年前から、ポートフォリオに対する格付けの制約を取り払っており、S&P による米国債の格下げ以降、この傾向は加速しているという。
● 目先はトリプルAに近いものに頼るしかないが・・・ ●
それ以外の投資家は根本的な問題に直面する。
「これからの数年間、どのように資金を運用していくのか。(トリプルAの減少は)この問題に本当に重要な意味を持つ」と、ピムコのエラリアン氏は話す。「短期的には、1をゼロに置き換えることはできない。 そのため、今後もトリプルAに最も近いものに頼ることになるだろう」
長期的な影響を読み解くのは、「それよりはるかに難しい」と、エラリアン氏はいい添えた。
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※追加3_ 米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ (S&P) は5日、欧州単一通貨ユーロ圏 17カ国のうち 15カ国の長期国債格付けを引き下げる可能性があると発表した。
最上級格付けのドイツやフランスなども含まれる。 6日には欧州債務危機対策を担う欧州金融安定化基金 (EFSF) の長期債格付けも引き下げる方向で見直すと発表。 重債務国への資金供給に影響が出る恐れも出てきた。
独仏首脳は、5日 財政規律の違反国に制裁を科す新条約締結を目指すことで合意。 イタリアやスペインの10年国債利回りが「危険水域」とされる 7% を大幅に下回る 5% 台に急落するなど 危機回避への期待感が高まっていただけに、冷や水を浴びせられた形だ。
S&P は、ギリシャとキプロスを除く15カ国を「ネガティブ (弱含み)」に指定し、90日以内に2分の1の確率で格下げする。 欧州連合 (EU) 首脳会議で示される対策が十分でないと判断すれば 即座に格下げする。 フランスなど9カ国は一気に2段階格下げされる可能性がある。
現在 ユーロ圏での最上級格付け国は6カ国。 その信用力を背景に債券を発行し、重債務国への融資資金を調達している EFSF の格付けも最上級だが、S&P は EFSF も15カ国と同様の対応が必要と判断。 1~2段階引き下げる可能性があるとしている。 実際に EFSF が格下げされれば 資金調達コストがかさみ、欧州債務危機が再び悪循環に陥る危険性がある。
8、9日の EU 首脳会議では EFSF 強化も協議する予定だが、S&P による格下げという事態も想定する必要が出てきた。 S&P はギリシャの債務危機発覚後に抜本的対策を取れず、危機を拡大させた意思決定の構造的な弱さを問題視している。
以上