シャンテ サラのたわ言・戯れ言・ウンチクつれづれ記

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カラヤンのプロデューサーが自ら録音

2020年03月15日 | 音楽界よもやま話
上左から『タンホイザー』全曲 (ベルリン DO 管 68~69年)、ワーグナー/交響曲ハ長調 他 (バンベルク響)、ブラームス4番 (BPO 61年)、カラヤンと (68年)。 下左から『新世界』(BPO 64年)、『エウゲニー・オネーギン (ドイツ語抜粋)』(ミュンヘン国立歌劇場管 68年)、『オテロ (ドイツ語抜粋)』(同 67年) … など全てゲルデス指揮。
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カラヤンが DG で BPO を振って録音し始めた頃の、60年代の DG 社のプロデューサーはオットー・ゲルデスでしたが、70年頃からはギュンター・ブレーストに代わります。

そのゲルデスはというと、60年代に 何と自ら指揮して DG で録音も始めました __ 元々 指揮者だったんですね。 ベルリン・フィルを振ってブラ4や『新世界』も録音しましたが、話題性はイマイチだったように記憶しています。
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『「レコード芸術」のチャッカリした企画』(2013年10月22日 気楽おっさんの蓼科偶感 https://kirakuossa.exblog.jp/19860580/) __ レコ芸も色々とやってくれる。 最新号は ”ベルリン・フィル” 特集だ。 付録としていつもの試聴盤のほかにもう一枚、特別企画盤が付いている。 初 CD 化と銘打って2曲収められてある。 ライトナーのシューマン「ライン」と「新世界」、 こちらはケルテス? 例の VPO とのは超名盤であるが、えッ! BPO ともやっていたのか? … と思ったら、いや違う違う。 オットー・ゲルデス。 知らんなー 歌崎和彦氏の解説書にこう書いてあった (※追加1へ)。 
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60年代の DG は、オペラのドイツ語抜粋盤を盛んに制作していました。 私も LP『オランダ人』(レーヴライン指揮) や、後に CD で再発売された『椿姫』(バルトレッティ指揮)『ラ・ボエーム』(エレーデ指揮) などを購入しました。 同時期 EMI もこうしたドイツ語抜粋盤を制作していたらしく、『ラ・ボエーム』(クロブチャール指揮)『蝶々夫人』(パターネ指揮) を買いました。
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『ヴェルディ「オテロ」 ヴィントガッセン&F. ディースカウ』(2007年6月15日 さまよえるクラヲタ人 http://wanderer.way-nifty.com/poet/2007/06/post_ed8b.html) __ ※追加2へ 
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ゲルデスは指揮者とプロデューサーを兼ねていたから、こうしたドイツ語抜粋盤シリーズ企画を立てて指揮しやすかったのでしょう。

オペラ・ファンの底辺拡大には それなりの効果はあったのでしょうが、カラヤンが60年代にすすめた原語主義が徐々に浸透して、今はドイツ国内でのドイツ物以外のオペラ演目は原語が殆どではないかと想像します。 ただ それは大都市の劇場での話しで、地方の田舎劇場では いまだにドイツ語による上演が多いのではないでしょうか。

日本の国立歌劇場は、イタリア物はイタリア語、ドイツ物はドイツ語で上演していますが、舞台のスーパーインポーズ表示器で日本語を表示していると思います (私は見たことがありませんので)。 もっとも オペラは原語でないと雰囲気が出ませんからね。
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ゲルデスの『タンホイザー』全曲は、CD で購入しました。 冒頭ジャケにもあるように、ニルソンがエリーザベトとヴェーヌスの2人の役を歌っているのが聴き物です。 女性の二面性を表現しようとしたとか批評に書かれていましたね。 残念なことに 主役の2人が黄昏かけていました。 本来 録音に予定されていた指揮者が降りたのかも …

私が満足した『タンホイザー』は3つ目に購入したシノポリ指揮の DG 盤 (88) です。 1つ目のショルティ LP ではヴォルフラム役に難がありました。 シノポリ盤は、ドミンゴ、スチューダー、バルツァ、A. シュミット、ボニー (若い牧童) と最強の布陣です。

ゲルデスは知名度が薄いですから、『新世界』を BPO で録音しても、売れなかったはずです。 私も購入してまで聴こうという気がおきません。 カラヤンかケルテスを聴いた方がずっと満足すると思いますね。 ゲルデスはカラヤンと同年に亡くなりました。

ちなみに ワーグナー/交響曲ハ長はサヴァリッシュ指揮フィラデルフィア管の CD を聴きましたが、一聴の価値は? … なかったです。 ワーグナーは楽劇向きの作曲家ですね。

今日はここまでです。


※追加1_ 暑いですな。 じゃあ、熱 (厚) い暑苦しい、変り種「オテロ」を一発。 ワーグナー専門といっていいくらいの、ヘルデンテナー W. ヴィントガッセンの歌う「オテロ」をば。 DG が60年代にいくつか録音した、ドイツ語によるイタリアオペラの抜粋シリーズ。

オットー・ゲルデスは、古いレコード・ファンにとっては、指揮者というよりも DG のプルデューサーといった方が通りがよいのではないだろうか。

1920年にケルンで生れたゲルデスは、ケルン音楽大学ではじめヴァイオリンを修めたが、その後名指揮者アーベントロートに指揮を学んで、北西ドイツ放送交響楽団や南西ドイツ放送局の指揮者を歴任し、ベルリンやバイエルン国立歌劇場にも客演するなど幅広く活動した。 1956年に指揮活動から離れて DG に入社して、61年からはカラヤンのプロデューサーをつとめ、63~70年にはA&Rのチーフ・プロデューサーとなって DG の発展に大きな功績を残した。

全体的には、”粗さ” が気にはなるが、良くいえば力強い「新世界」ということになる。 第1、2楽章は少々もてあまし気味のところもあるが、最終楽章はまとまりがあって一番出来が良い。

気になって他でもちょっと調べると小さな記事でこうある。 オーケストラのコントロールこそ第一級とはいえないものの、素朴な味わいのある音楽づくりには好感がもてた。 73年には来日して都響に客演、園田高広とベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」、江藤俊哉とブラームスのヴァイオリン協奏曲を演奏しているとあった。

もう一曲のライトナーは可もなく不可もなくといったところか。 まあ たまにはこんな企画もいいではないかと思いながらよく見てみると、例月号より 500円も高くなっていた。 チャッカリしているわ。
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※追加2_ 約1時間の内容ながら、ズシリと文字通り重い。 オテロ:W. ヴィントガッセン デスデモーナ:T. ストラータス イャーゴ:D. フッシャー・ディースカウ カッシオ:F. レンツ ゲルデス指揮 バイエルン国立歌劇場管弦楽団 (1966年頃録音)

ヴィントガッセン (1914~74) といえば、ワーグナー。 それもトリスタンとジークフリートという重量級を生涯歌い続けただけに、それらのイメージがあまりに強いし、実際ワーグナー以外の音源は、第9か「こうもり」、R・シュトラウスの一部ぐらいしか思いつかない。 そのヴィントガッセンのオテロが聴ける貴重な1枚。

ベームのトリスタンやリングと同時期の記録であることも嬉しいぞ。 爆発的な冒頭の場面から始まる。 意外や録音優秀。 オケもものすごい迫力。 この指揮者「ケルテス」じゃなくて「ゲルデス」はカラヤンのプロデューサーとして高名だが、DG にベルリン・フィルを振った新世界や、「タンホイザー」、ヴォルフなどいくつかあって不思議指揮者の一人。 ここではまずまずですよ。

合唱が「帆だ、帆だ …」と歌いはじめるが、ここはドイツ語。 おっとっと …。 喧騒を静めるかのように、ヒーローの登場! 「喜べー!」  原語では「エッスルターテ!」とピーンとスピントを効かせてオテロ登場となるが、… ここでは「フロイント ヤーレ!」(たぶん こんな風に歌っているみたい) と歌って登場となる。 そして その声があのヴィントガッセンである。 熊を追って登場のジークフリートのようにくるかと思ったが、以外や颯爽たる登場で、これはこれでインパクト充分!

デスデモーナとの美しい二重唱でも違和感は強い。 なんとなくモッサリとしていて、「口づけを …」という場面は「ウン バーチョ」となるところが「アイン キッシン」となるわけ。 でも 3幕の苦悩のモノローグのド迫力は実際問題すさまじい。 機関車に乗ってズンズンと迫ってくるみたいで、この怒りと嘆きは誰も止められないと思われる。

「オテロの死」は、さながら傷に倒れた「トリスタン」だ。 死の淵にある歌だ。 私にとって唯一無二の、デルモナコの直情的・ヒロイックなオテロをある意味忘れさせてくれる、ヴィントガッセンのオテロだ。 器用とはいえないヴィントガッセンが運命に翻弄されるままに演じたものだから。

もう一人の主役、F. ディースカウのイャーゴはさすがと思わせる、実に堂々たるもの。

言葉の魔術師 FD さま。 一語一語が意味慎重で緊張感が高い。 完全にオテロを操縦している様が、ヴィントガッセンとの二重唱でもわかる。 そして FD が歌うと、ドイツ語が原語の作品であるかのように聴こえる。 バルビローリ盤が聴いてみたい。 若きストラータスもよい。

もう30年以上前、二期会「オテロ」を観劇した。 若杉弘の指揮、宮原卓也、栗林義信、鮫島有美子 (デビュー!) の面々の上演は、日本語訳詞によるものだった。 オテロの数々のカッコイイ場面は、日本語で「よろこ~べ …」「剣を捨て~ろ~」なんて歌われていて、ちょっと恥ずかしかったり、おかしかったり。

ドイツ語でも違和感を感じるのだから、やはり作曲者が音符を付けた原語のほうがいいに決まってる。 このシリーズには、FD、コツーブ、シュタイン BPO の「リゴレット」や、ボルク、FD、トーマスの「仮面舞踏会」、「運命の力」、ステュワート、リアー、シュタインの「ナブッコ」… こんな魅力的なものも出ている。

以上

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