原発問題

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『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』<福島の現実 福島の海をけがし続ける大量の汚染水> ※4回目の紹介

2015-10-16 22:00:00 | 【美味しんぼ】

『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。4回目の紹介

美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲

何度でも言おう。

「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」

これは”風評”ではない。”事実”である。

2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。

「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」

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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介


 福島の海をけがし続ける大量の汚染水

 2014年現在、事故から3年以上経っても漁業は動き出せないままです。

 福島第一原発が今の状態で、あのように汚染水を流し続けているのでは、漁業の回復は何年先になることかわかりません。福島第一原発を完全に廃炉にするまで、汚染水が海上に廃棄される状況が終わるとは考えられないのです。

 2008年度「漁業センサス」によると、福島県の漁業就業者は、1743人(内女性は111人)。大雑把にいって、

 45歳~49歳 約10%
 50歳~54歳 約13%
 55歳~59歳 約17・5%
 60歳~64歳 約13%
 65歳~69歳 約8%

 という構成になっています。

 常識的に一つの原子炉を廃炉にするのには30年から40年かかります。その間に汚染水漏れなどの事故が全く発生しないということはあり得ないのではないでしょうか。安倍首相がIOCの総会で、「福島原発の汚染水は0.3平方kmの範囲内で完全にブロックしている」といったあと、何度汚染水が漏れ出したことか。

 今まで使っていた応急の汚染水タンクは鋼版をネジで締めて作ったもので、作った会社の社長が「2、3年しか持たない間に合わせのものだ」といっていましたが、さすがに2014年からは溶接して作ったタンクを、海上から第一原発の港に運び込んで、それに今のタンクから汚染水をうつすそうです。作業員の話を聞くと、とりわけ問題なのは、1号機から3号機までメルトスルーした原子燃料がどこにあるかもわからない現状で、それを冷却し続けるために水をかけ続けなければならないことだそうです。

 さらに、2014年8月25日に大変な事実が明らかになりました。

 東京電力は、現在も毎日80億ベクレルの放射性物質が福島原発から海に流れていることを発表したのです。東京電力によると、福島第一原発から放出されている放射性物質はストロンチウム90が50億ベクレル、セシウム137が20億ベクレル、トリチウムが10億ベクレルというすさまじいもので、これが、2014年8月現在も、そして今も、毎日海中に放出されているのです。

 2014年9月7日には、もっと途方もない事実が明らかになりました。2014年5月での10ヶ月間に、福島第一原発の港湾内に出たストロンチム90とセシウム137が計約2兆ベクレルに上がる可能性が高いことが、東電の資料などでわかったというのです。

 何か東電は人ごとみたいに報告書を出しますが、それでは2014年5月以前は、どうなのですか。そしてそのあと、現在はどうなのですか。

 それについて何も言及しないのは、2014年5月の10ヶ月前に突然漏れはじめたのではなく、計算してみたら、この10ヶ月で2兆ベクレルになったということでしょう。そして、それに対する対策も何も発表されていないのだから、現在も、毎月2000億ベクレルの汚染水が港湾に流されているのでしょう。港湾は、船が出入りできなければならないという構造上、常に外洋に向かって開いています。この毎月2000億ベクレルのストロンチウム90とセシウム137は外洋に流れ出ていくしかありません。

 ともかく毎日80億ベクレル、毎月2000億ベクレルの汚染水が福島の海に流れ出しているのです。福島第一原発の汚染水処理は、もはや手を付けられない段階にまで来てしまっているということでしょう。

 (日本の食物の安全基準は、セシウム137だけで決められています。ここにストロンチムも入れるべきでしょう。ここまで大量にストロンチウムを放出しているのに、魚1キログラム100ベクレルのセシウム137だけでは、意味がありません。ストロンチウムも加えるのが当然でしょう。こんなごまかしを続けて一体何になるというのですか)

 こういう状況では、福島の前浜の海が汚染から解放され、漁業を復活できるのはいつのことになるのか見当もつきません。

 福島の漁業就業者の中で一番多いのは、50歳~54歳、55歳~59歳、60歳~64歳までの方たちです。5年後、10年後、15年後に漁業ができるようになったとして、そのとき何人の方が漁業に戻れるでしょうか。

 早く漁業を再開したい漁業関係者の方たちの気持ちはよくわかるのですが、こういう状況を知ってしまうと、「もうじきだ、もうじきだ、がまん、がまん」とはいえなくなってしまうのです。
 
 漁業再開を待って働き盛りの人たちが、貴重な人生の時間を無にしてしまっているのです。

 それにしても、安倍首相はIOCの総会で、世界を前にしてなんという大嘘をついたのか。


続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、10/19(月)22:00に投稿予定です。

 

美味しんぼ「鼻血問題」に答える


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