愛と勇気と感動のエンターテイメント・・・【フラガール】(2006年13本目)

うっ!ダメだ!

キ・・キタ━━━━(T∀T)━━━━!!

な・・涙が止まらない
でも・・・オレだけじゃないよ。
場内の暗闇のあちこちから聞こえる。
グスン・グスンと鼻をならす音


どんなに辛く悲しくても
   「おどっぺ」と未来に向う彼女らに


もう館内のあちこちで涙・・・でもいいんじゃない。
こんな涙なら…映画は心の栄養剤だもの




観たい映画が数本あった。
なんとなく心に刺激がほしくて感動大作か仕掛けが大掛かりな映画を
観ようかなと具体的には決めずにシネコンに向う。

でも観ようかなと候補に挙げていた映画は全部上映時間が合わない。

出直そうかなともおもったけど、せっかく来たし、
お隣の県の話だし、昔行ったこともあるし、マァこれでも観るか・・・

そんな感じのノリだった。

有名なベストセラー小説が原作でもない。
製作費が膨大な作品でもない。
有名な俳優や大物俳優がたくさん出てる映画でもない
大掛かりなロケやCGがある映画でもない。

たいして期待もせず売店でコーヒーを買いシートに座り
上映開始を待つ。



舞台は昭和40年の常磐炭鉱、現在の福島県いわき市だ。
この時代は日本が高度経済成長に向う直前。
エネルギー革命と呼ばれ、エネルギーの主役がそれまでの石炭から
石油へと変わっていく時代でもあった。

それまで【黒いダイヤ】とよばれエネルギーの主役の座にいた石炭。
輸送の中心がそれまでの鉄道から自動車へと変わるのも影響し、
石油へとその座を譲っていく、そのため需要も大幅減。

炭鉱は掘れば掘るだけコスト高で赤字になる状態。
日本中の炭鉱が規模縮小や廃坑に追い込まれる。
それはこの映画の舞台の、ここ常磐炭鉱も例外ではなかった。

会社は従業員の雇用の確保と会社の生残りをかけて、
新規事業へと打って出る。
地元の温泉を利用した大型の娯楽施設の建設プロジェクトの開始。
石炭のカスでできたボタ山のシルエットが、
あのハワイのダイヤモンドヘッドに似ていることから
コンセプトは【日本のハワイ】となる。

子供の時から「なんでここでハワイって名前をつけたんだろう?」
とずーっと謎だったが今やっとわかった。


その施設の目玉商品として『フラダンスチーム』を結成することになる。
しかも地元の雇用促進のための施設だから、
東京からプロのダンサーを呼んできたのではダメ。
あくまで地元の女性だけで作るということになる。

そんな【常磐ハワイセンター】建設とそのフラダンスチーム結成の
実話を40年の時を経て映画化した作品がこの『フラガール』だ。



映画はフラチーム結成のために集められた(集まった)素人娘たちが
プロのダンサーになるまでを中心に描く。


当時の田舎はダンサーとストリッパーが混同されるような時代
フラダンスの練習をする彼女らに対する偏見は強い。

さらに今までの炭鉱の仕事から新しい産業への転換に対する
地域の強い拒絶反応。

フラガールたちもそして常磐ハワイアンセンター建設も
その障害を乗り越えて、地域の人の心をつかまなければ成功はない。

ここから観客はドンドンこの映画の展開に引きづり込まれていくことになる。



この映画に登場する女性たちは決してスーパーなヒロインではない。
いろいろな事情を抱えてこのフラガール募集に応募してきた少女たち。
そしてその彼女らにダンスを教えるために東京からやってきた
平山まどか(松雪泰子)もまたいろいろな事情を抱えている。

みんな、ダンスが好きで集まったのではのではない。
家族のため、町のため、借金返済のため。

そんな彼女らが苦しみ、悲しみ、そして挫折をくりかえしても
そのつど「踊っぺ」とダンスから逃げない。
そして自分の人生という舞台から降りない。

やがて最後は友のため、そして自分のために
華麗に力強く踊るプロのダンサーに成長する

もうこの辺の感動は「実際に観て体験してください」というしかない!

素人がプロのダンサーになっていく課程の盛り上がりは
あの『フラッシュダンス』に通じるノリもある。

でも、やはりそこは日本のエンターテイメント。

笑わせて泣かせるというツボを実に見事にバッチリと押さえている

廃れゆく炭鉱の町でそれでもそれぞれの立場で時代の波に溺れないようにと
けなげに生きる町の人々の姿もサブテーマ的にオーバーラップされて
素直に感動できる作品に仕上げられていると思う。

手話のシーン、銭湯でのシーン、駅での別れのシーン等
脚本と演出が実に素晴らしい


そして出演者もみな好演といっていいデキである。
中でも岸辺一徳は、いままでで一番の好演だと思う。
キレキレの演技だった。

しずちゃんも南海キャンディーズとはまた違ったノリで笑わせてくれたし、
それ以上に泣かせてくれた。
この映画でいいスパイスとして利いていたと思う。

先日あるテレビ番組で当時の本物のフラガールの方がインタビューで
「私の役をしずちゃんがやったんだと思う」と語っていた。
ただ単に彩りで加えられた役ではなく、史実に基づいているのは
正直驚いたし感心した。

また、この映画を観た方のブログを読んで知ったのだが
あのヤシの木を石油ストーブで暖める話もベタ演出ではなく実話だそうだ。



松雪泰子の60年代ポップファッションはすごくキュートで
そのままオールディズバンドのボーカルにもなれるほど決まっている。

車の形や石油ストーブの形などに、懐かしい昭和40年代の香りがする
といってもに「三丁目の夕日」とは違いレトロ感がウリの映画ではない。
時代感を出す程度でレトロ感がでしゃばることはない。


それと見所はなんといっても女性陣のダンス。
猛特訓したとはいえ実にお見事!
特にソロを踊った松雪泰子と蒼井優は本当に素晴らしい!


そして最後にとどめを刺してオレの涙腺を全開にさせたのは

ジェイク・シマブクロ氏の音楽だ!

その心に染みるシマブクロサウンドと古いハワイアンソング、
そして強烈なポリネシアンダンスビートが
劇中にとても巧みに組み合わされて配置され、
この映画の展開の緩急を側面から盛り上げ、感動をより深くしている。

そして怒涛のラストのハワイアンセンターのオープニングステージへ



映像・音楽・ダンス・・
そのすべてが見事にコラボレートした大迫力!まさに圧巻!

これが映画でなく生のステージなら観客総立ちでアンコールだろう。



まさかここまで感動できる映画だとは思っていなかった。
この映画は現在、「チケットぴあ」の今年満足した映画のアンケートで
現在9月時点で第1位らしいが、その結果が納得できるデキだと思う。

この『フラガール』はかなり重厚なテーマをNHKの「プロジェクトX」とは違った
エンターテイメント仕立てで見事に仕上げ、感動を伝えてくれる逸品。

最後に、時にはズーズー弁ともいわれる東北訛り、使い方によっては
同じ東北人として馬鹿にされているようで頭にくることもあるのだが、
この映画では逆に地域の人の純朴さと温かさを強調していたように思う。
たとえば関西弁などと同じように、標準語よりセリフに存在感を
与えていたと感じる。


「ぜひ観ていただきたい」と他人におススメしたくなる映画だ。




松雪泰子が演じた平山まどかさんのモデルの人物は70歳を越えた今も健在で
いわき市内でフラダンスを教えているそうである。

そして常磐ハワイアンセンター、現【スパリゾート・ハワイアンズ】は
全国各地のテーマパークが苦戦する中、200年以降も現在まで
毎年入場者数が増え続けているという。

もはや本物にも劣らない独自の価値をもったリゾート施設になったのだろう。



映画『フラガール』公式サイト
『フラガールを応援する会』公式サイト



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