日本ユーラシア協会広島支部のブログ

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新潟大学 野中昌法教授の投稿

2011-04-14 08:15:33 | 日記
有機農業関連のMLに紹介された新潟大学 野中昌法教授の投稿です。
Subject: [organic:2470] 福島原発による土壌汚染問題 野中
各位
 野中です。土壌学が専門なのでその観点から記載します。また、環境汚染物質化学と言う講義でチェルノブイリや核種による環境汚染問題を話しています。
 飯舘村を始めとする放射線核種による土壌汚染問題ですが、先日新潟日報の取材があり論説に掲載されますが、 その要旨を述べます。
 1950年代から1960年代においてソ連、アメリカ、中国等の原水爆実験で日本には多くの核種が落ちてきました。
 そのころ、新潟大学土壌学研究室も含めて土壌中の挙動と作物への影響について研究が行われました。
 東大の研究も含めてのその当時からの知見の紹介です。
 ①ヨウ素131はガンマー線ですが、半減期は8日ですので、土壌への長期蓄積はありません。
 現在の汚染は降下物としての農作物への付着だけです。
 ②セシウム137はガンマー線ですが、半減期は30年です。土壌中では水には溶けにくく、土壌中に50~70%保持されます。土壌中では動きにくいですが、カリウムがあると置換されやすく、作物への移行を抑制できます。原子の周期表 ではカリウムとセシウムは同じ第1族で挙動が似ています。土壌中では表層土壌に蓄積すると考えられます。
体内から排出されやすいと言っていますがガンマー線ですので細胞や染色体に影響を与えることに変わりはありません。
③ストロンチウム90はベータ線で、半減期は28年です。今回測定値が発表されませんが、必ず出ています。何故発表できないかといううとマスコミ等で話題になっていますが、ベータ線は測定に時間がかかるからです。ストロンチウムは同じ2族のカルシウムと置換されやすいです。したがって、土壌中ではカルシウムがあると作物への吸収は抑制されます。また、土壌の中で20~30%が水に溶けて、下層土壌への移行と作物への吸収がセシウム137と比べて1桁大きいです。
人間の体内に入るとセシウムより危険です。なぜなら、カルシウムと同じ挙動を示すので、カルシウムと交換して骨に蓄積してベータ線を出し続けます。骨細胞を破壊してガンになり易くなります。

 畑作物の場合、土壌中に蓄積したセシウム137の吸収率は0.05%以下と考えられますが、イネの場合は湛水状態で0.1%~1.0%程度まで高くなるようです。ただし、先にも書きましたが土壌中のカリウムイオンと置換されて、カリウムがセシウム137の作物への吸収を阻害すると考えられます。有機物を投入した土壌でもセシウム137の吸収を抑制する作用があると思います。ストロンチウム90はセシウム137と比べて、作物への吸収量は一桁多くなるようです。この吸収も土壌中の有機物で抑制できる可能性は大きいです。

 稲作の場合、土壌中の核種だけでなく、農業用水に含まれる核種も問題となります。活性炭・ゼオライト等である程度、除去可能かと思いますが、また、現在大気中から降下してくる核種は植物に付着させて、土壌中への蓄積を少なくすることが大切です。また、土壌を耕起しないことも大切です。セシウム137は土壌表層だけに蓄積していると思いますので、また、その際、人間が呼吸で内部被ばくします。
 チェルノブイリでは菜の花で植物除去を行っていますが、これも栽培する時と収獲で人間が内部被ばくするかも知れませんので反対です。チェルノブイリでもストロンチウム90が高濃度で蓄積しています。
  
 セシウム137とストロンチウム90が土壌に蓄積した場合、土壌の入れ替えしかないと思いますが、どの程度で入れ替えが必要か今後の課題です。
 また、森林土壌に上記2核種が蓄積した場合、きのこに濃縮蓄積されやすいのできのこ栽培ができなくなります。きのこは食べられないでしょう。
 更に、牧草地では地上部に蓄積させて刈り取り除去をすることしか手がないと思います。

 IAEAの飯舘村のデータはヨウ素131と聞いています。今後、土壌中のセシウム137と共にストロンチウム90にも関心を示してください。

 汚染土壌の分布は風向き、地形により異なります。飯舘村でも場所により汚染の程度が異なるはずです。きめ細かなモニタリングで安全である場所と汚染場所の詳細な情報を公開して飯舘村全域や福島県全域が汚染されているような情報を出すことは良くないと思います。

 これから農作業が始まる時期になり、私たちにできることはなにか?
 中越地震の時、原発が火事なっただけで、柏崎の有機栽培農家は風評被害で2年間苦労したと話していました。
 私たち消費者も含めて皆さんで、真剣に考えましょう?

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Prof.Dr. Masanori Nonaka Soil Science Lab.
Niigata University 
Faculty of Agriculture
Graduate School of Science and Technology
Graduate School of Management and Technology
TEL 81-25-262-6687
FAX 81-25-262-6854
950-2181 新潟市西区五十嵐2の町8050
新潟大学農学部土壌学研究室(居室:農学部B棟411室 実験室B422)
野中昌法(のなかまさのり)下記、関連・情報サイトです。
研究室ブログ 
http://blog.goo.ne.jp/soil_niigata/e/de37999818412f9e4304cc5eff89f1c8 研究者総覧  
http://researchers.adm.niigata-u.ac.jp/R/staff/?userId=1056
研究者紹介  http://www.agr.niigata-u.ac.jp/profile/nonaka/index.html
MOT紹介   http://www.mot.niigata-u.ac.jp/mot/teacher/nonaka.html
新潟大学環境安全推進室(室長)紹介 http://www.esc.niigata-u.ac.jp/
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