岩田院長のブログ

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新型コロナウイルスに補中益気湯は効くのか?

2020-12-13 07:57:08 | 医療
先日、あおぞら薬局の薬剤師の先生に岩田のブログで補中益気湯を感染予防で飲んでいると書いているのを見て、効果について質問されました。岩田は第一波の時は内服して第二波では飲んでいませんでした。第三波になり再度飲みはじめました。もともと補中益気湯の効果はインフルエンザウイルスへの効果報告を元に代用したものでしたが、新たに効果があるのかどうか調べてみました。
コロナvirus治療ガイドラインChina2020/3/3で予防として補中益気湯は挙げられている様です。
では新型コロナウイルスの感染と補中益気湯がどの様に作用するのかいろいろな記事などをまとめてみました。まず、ウイルスが入ってきた時に働くのが自然免疫です。その中心的な役割としてインターフェロン(IFN)が関わります。ウイルスが細胞に入るとシグナルを出します。このシグナルを受けて細胞内にIFN調節因子(IRF)7を介してウイルス退治メカニズムをもつ遺伝子(インターフェロン刺激遺伝子ISG)を活性化させます。コロナウイルスは細胞に入ってきた際にORF3bというタンパク質でIFN -I(IFNαやβがそれに該当します)の産生を抑制します。ウイルスの量が少ない時は素早く反応してIFN-IのシグナルがIRF7を介してISGに届き、ウイルス駆除に働き、炎症は治っていきますが、ウイルス量が多いとORF3bのためかIFN-Iの産生が遅れ、ウイルス駆除もできず、IFNが持続的に出ることでIFN自体が組織へのダメージを与へ、重症化につながる可能性があるとの事です。補中益気湯を1週間前くらいから飲んでおくとIRF7を増やす事ができ、IFN-Iを誘導することができるのではないかとの事です。もう一つは補中益気湯は腸管上皮間リンパ球を刺激してIFN-γを産生してヘルパーT細胞(Th)のTh0を刺激して細菌、ウイルスに働くTh1に分化、増殖する事でさらにIFN-γ増産し、鼻粘膜などの上気道でウイルス制御に働く可能性があります。
このように理論上では補中益気湯が新型コロナウイルスに効果がありそうですが、それが臨床的にどれだけ効果があるかの治験はありません。また、補中益気湯には「甘草」が含まれているため長期で使うと偽アルドステロン症(体の中のカリウムが減って血圧上昇や下腿浮腫などが起きます)の可能性もあります。岩田は半量/日しか飲んでいませんが、今のところは感染もしていません。補中益気湯のみに頼ってマスクや手指消毒液を怠っては感染リスクは高くなります。まずは基本的なところは怠らないでください。

もし、上記の内容に間違えがあれば教えてください。
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