碓氷峠を境にして、信州側と上州側では景色が一変する。
信州側の開豁な高原風景に対して、上州側は深い渓谷に岩峰がそびえ、南画を想わせる山渓の世界だ。そんな山深い霧積川の上流にこの名湯はある。
”霧積(きりづみ)”とはいい名前だ。実際、このあたりには深い霧がしずかに降り積んでいくような、ある種幽邃な空気が流れている。
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母さん、僕のあの帽子、どうしたんでせうね?
ええ、夏、碓氷から霧積へゆくみちで、
谷底へ落としたあの麦わら帽子ですよ。
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西条八十の”帽子”を冒頭に措き、一世を風靡した『人間の証明』でも、”霧積”という舞台が、ずいぶんとイマジネーションを駆り立てていたように思う。
ここは、明治中期には避暑地としてそうとうに賑わったそうだが、明治26年の信越本線開通により客足は次第に軽井沢に移り、明治43年には未曾有の山津波にみまわれ一帯が壊滅して、湯宿2軒を残すのみとなった今日では、往時の栄華をしのぶよすがもない。
「金湯館」は最奥にある湯宿でハイカーの利用も多い。付近は春の新緑、秋の紅葉がすばらしいところだ。
林道経由で車でのアプローチもできるが、手前の「きりづみ館」前のPに駐車して歩道を歩いていくことをおすすめする。やや登りのきつい道だが、20分もあれば到着する。
沢筋に面して建つ明治16年築の総ケヤキ造りの旧館は、手前に水車を配した堂々たる佇まい。玄関前には一軒宿お約束の温泉犬がうずくまっている。元気な大女将が切り盛りし、若い四代目夫婦とてきぱきとした若い衆がしっかりと支えている、居ごこちのよさそうな宿とみた。
廊下の奥の男女別の浴室は、タイル貼5~6人(男湯)の浴槽がひとつとシンプルなもの。
浴槽の大きさのわりに潤沢な量の源泉がそそぎ込まれているので、お湯の鮮度感がすこぶる高い。当然のように全量オーバーフローのかけ流しだ。
ややぬるめで無色透明の澄んだお湯だが、湯口付近は気泡で白濁し、かなりの量のアワつきがある。ふつうのアワつき湯は毛先につくことが多いが、ここの気泡はとても肌理がこまかく肌に直接つくので、浸かっているうちに肌が白味をおびてくる面白いものだ。
純度の高い石膏泉を裏づけるように、ほこほことした石膏味と石膏臭+甘いイオウ臭+微ミシン油臭の絶妙な温泉臭が香り立つ。アワつきのぬるぬるがきわ立っているのでヌルすべ湯に思えるが、本質は石膏泉系のキシキシの強いお湯だと思う。浸かるほどによさがにじみ出てくるような滋味あふれるお湯だ。
位置的には西毛ながら、重曹食塩泉系のお湯が多い西毛のお湯ではなく、むしろ北毛の流れの硫酸塩泉系といえる。諏訪峡、川古などとともに上州を代表する石膏泉だ。
すばらしい環境にすばらしいお湯、細く長い山道のドライブを決して後悔させない一湯である。
<霧積温泉 入之湯>
Ca-硫酸塩泉 40℃、300L/min、成分総計=1822.14mg/kg、Na^+=54.00mg/kg (8.95mval%)、Ca^2+=476 (90.60)、Cl^-=45.46 (4.83)、SO_4^2-=1181 (92.72) <S58.7.11分析>
「金湯館」のレポはこちら。(関東周辺立ち寄り温泉みしゅらん「特集クチコミ情報」)(ちと古いですが・・・。なお、これを書くにあたって再訪しましたが、お湯のイメージはほとんど変わっていませんでした。)
文・画像 別働隊@うつぼ
信州側の開豁な高原風景に対して、上州側は深い渓谷に岩峰がそびえ、南画を想わせる山渓の世界だ。そんな山深い霧積川の上流にこの名湯はある。
”霧積(きりづみ)”とはいい名前だ。実際、このあたりには深い霧がしずかに降り積んでいくような、ある種幽邃な空気が流れている。
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母さん、僕のあの帽子、どうしたんでせうね?
ええ、夏、碓氷から霧積へゆくみちで、
谷底へ落としたあの麦わら帽子ですよ。
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西条八十の”帽子”を冒頭に措き、一世を風靡した『人間の証明』でも、”霧積”という舞台が、ずいぶんとイマジネーションを駆り立てていたように思う。
ここは、明治中期には避暑地としてそうとうに賑わったそうだが、明治26年の信越本線開通により客足は次第に軽井沢に移り、明治43年には未曾有の山津波にみまわれ一帯が壊滅して、湯宿2軒を残すのみとなった今日では、往時の栄華をしのぶよすがもない。
「金湯館」は最奥にある湯宿でハイカーの利用も多い。付近は春の新緑、秋の紅葉がすばらしいところだ。
林道経由で車でのアプローチもできるが、手前の「きりづみ館」前のPに駐車して歩道を歩いていくことをおすすめする。やや登りのきつい道だが、20分もあれば到着する。
沢筋に面して建つ明治16年築の総ケヤキ造りの旧館は、手前に水車を配した堂々たる佇まい。玄関前には一軒宿お約束の温泉犬がうずくまっている。元気な大女将が切り盛りし、若い四代目夫婦とてきぱきとした若い衆がしっかりと支えている、居ごこちのよさそうな宿とみた。
廊下の奥の男女別の浴室は、タイル貼5~6人(男湯)の浴槽がひとつとシンプルなもの。
浴槽の大きさのわりに潤沢な量の源泉がそそぎ込まれているので、お湯の鮮度感がすこぶる高い。当然のように全量オーバーフローのかけ流しだ。
ややぬるめで無色透明の澄んだお湯だが、湯口付近は気泡で白濁し、かなりの量のアワつきがある。ふつうのアワつき湯は毛先につくことが多いが、ここの気泡はとても肌理がこまかく肌に直接つくので、浸かっているうちに肌が白味をおびてくる面白いものだ。
純度の高い石膏泉を裏づけるように、ほこほことした石膏味と石膏臭+甘いイオウ臭+微ミシン油臭の絶妙な温泉臭が香り立つ。アワつきのぬるぬるがきわ立っているのでヌルすべ湯に思えるが、本質は石膏泉系のキシキシの強いお湯だと思う。浸かるほどによさがにじみ出てくるような滋味あふれるお湯だ。
位置的には西毛ながら、重曹食塩泉系のお湯が多い西毛のお湯ではなく、むしろ北毛の流れの硫酸塩泉系といえる。諏訪峡、川古などとともに上州を代表する石膏泉だ。
すばらしい環境にすばらしいお湯、細く長い山道のドライブを決して後悔させない一湯である。
<霧積温泉 入之湯>
Ca-硫酸塩泉 40℃、300L/min、成分総計=1822.14mg/kg、Na^+=54.00mg/kg (8.95mval%)、Ca^2+=476 (90.60)、Cl^-=45.46 (4.83)、SO_4^2-=1181 (92.72) <S58.7.11分析>
「金湯館」のレポはこちら。(関東周辺立ち寄り温泉みしゅらん「特集クチコミ情報」)(ちと古いですが・・・。なお、これを書くにあたって再訪しましたが、お湯のイメージはほとんど変わっていませんでした。)
文・画像 別働隊@うつぼ
霧積温泉は日帰り入浴で行った時に
日帰り時間を僅か5分過ぎてしまい
入れなかった悲しい思い出が、
あの時何度も宿に連絡したが
連絡が取れなくて勢いで行ったら
入浴受付時間の看板をみてスゴスゴと
あの山道を帰った記憶があります。
私達と入替に次々とやってくる宿泊者が
なんとも羨ましかった。
とは言っても「霧積館」さんの方なのですが
何が何でも入浴しちゃいたくなる湯で、ぬるい湯や周りの景色も素晴らしいです。密かに紅葉の時期に狙っていたのですがねぇー
別働隊さんに先に取られた(爆)
私のみずらい文章なのですが以前書いたものがあります。
http://www2.ttcn.ne.jp/~g-spa/sub52.HTM
>えんぴつさん
一目散に金湯館を目指しましょう~11月上旬が紅葉の見所です。でも今年はどうかな?
草津に行くんだす!!