一郷一会・関東周辺100名湯プロジェクト

一郷一会が威信をかけて ^^: 選定。センター系、スパ銭・・・ お湯さえよければどこでもOK! 料金上限1,200円也。

05.小湧谷温泉 「箱根みたか荘」

2007-03-28 23:59:13 | 神奈川
東京から近く温泉もある箱根は、保養所や別荘の適地として古くから注目を浴びた。とくに強羅や姥子下の温泉荘は第一級のステイタスを誇り、大企業や公共団体、有力自治体が威信をかけて(?)、好区画の確保に走った。含み資産所有と福利厚生充実のダブルメリットを享受できる保養所は、高度成長期の落とし子だった。しかしバブル崩壊→資産デフレの時代に入るとこれらの所有・運営が負担となりはじめ、売却されるもの、民間に運営委託されるものがでてきた。このような流れを巧くつかんで急成長を遂げたのが、「四季倶楽部」「一の湯グループ」だ。
これまで利用できなかった温泉施設、とくに自家源泉のものが開放されるのは温泉好きにとっては嬉しいことだ。ここ「箱根みたか荘」も三鷹市の保養施設だが、一般にも開放されるようになった。ちなみに強羅にある文京区や新宿区の施設も現在一般開放されている。

立地がいい。小湧谷上部の別荘地「みどりの村」内にあり、強羅とは須沢を介して隔たっているので小湧谷温泉に入ると思われる。小湧谷といえば一大エンタメ温浴施設「●ネッ■ン」が有名だが、かけ流しで入れる日帰り可能施設は貴重だ。
箱根有数の泉源地帯、早雲地獄からの距離は名湯の誉れ高い「最乗寺箱根別院」とほぼ同じで、このお湯がいかに絶妙の立地にあるかがわかる。

某オフ会でやませみ師匠の先導で突入した。
敷地内に温泉櫓が立っている。足元からもうもうと湯気を吹き上げ、そうとうにパワーのある泉源とみた。
館内は公共施設らしくよくメンテされてきもちがいい。内湯ひとつのシンプルな浴室で熱湯源泉が絞り気味にかけ流されている。
うすく緑がかったかなりの熱湯は、箱根らしからぬ濃度感と力感をもった食塩泉。それもそのはず、成分総計=5005mg/kgは箱根ではちょっと記憶にない。かといって強羅の食塩泉をパワーアップしたようなガシガシに硬いお湯かというと、メタけい酸がよくきいてしっかりとしたとろみもでている。含有量は少ないがなんとなく重曹や硫酸塩が裏できいているような複雑なお湯だ。

やませみさんの「温泉の化学」によると、「神山の北西部から強羅、小湧谷、底倉にかけての地下に3本の流れがある」とのことだが、ここもその流れの1本だと思う。これらの流れは他の成因の温泉流や地下水をまじえ次第に温度と濃度を減じていくのだが、ここは上部にあるので、「早雲山噴気地帯直下の地下数100mの深さから(湧出)」* するという高温・高濃度の塩化物泉(第III帯 塩化物泉)がピュアに湧いているのだと思う。

箱根というと、造成硫黄泉や浴感やわらかな単純温泉、弱食塩泉のイメージがあるが、力強い浴感で箱根の底力を実感できるこのお湯はたしかに貴重だ。

なお、HPによると、休憩料は入湯税込み250円、事前予約が必要なようです。

Na-塩化物泉 88.4℃、pH=7.90、成分総計=5005mg/kg、Na^+=1540.0mg/kg 、K^+=127、Ca^2+=129、Cl^-=2700、SO_4^2-=44.2、HCO_3^-=33.7、メタけい酸=282、メタほう酸=120 <H14.7.30分析> (源泉名:宮城野第74号泉)

*)「箱根二十湯」平野富雄氏著(かなしん出版)

文・別働隊@うつぼ / 画像・やませみ師匠

04.宮ノ下(底倉)温泉 「太閤湯」

2007-03-22 21:58:56 | 神奈川
新しい施設が続々と完成する中そんな施設を気にもせず、堂々と宮ノ下温泉にある共同浴場それが「太閤湯」だ。
ここのお湯は箱根七湯ではる底倉温泉からの引き湯です。
私は箱根に行くと朝一の湯としていつも利用させてもらっています。
浴室は女性2箇所、男性2箇所。空いている所好きな方へどうぞということみたいです。
脱衣所は箱ロッカーがあるのみで、3人前後で利用出来る大きさ。
浴室は湯船1、洗い場1、プラ桶数個のみ、床はタイル張り。
湯船には源泉蛇口と真水の蛇口が設置。温泉の蛇口の方はパイプが付いており、湯船の下の方からお湯が投入されるようになっている。下から熱くしようというのでしょうか?それとも源泉温度が熱いので火傷防止としてついているのでしょうか?パイプ1つでもこんな想像しながら入るのも面白いかな。掛け湯をしてお湯につかるといつものようにお湯と戯れる。ここのお湯は、突飛した特長がないがバランスの良いお湯。だから良くも悪くも万人が入れるお湯だと思います。
お湯自体は無色透明で抵抗感が少ない軽いお湯。湯温はその日の気分で源泉と真水で調節。もともと源泉温度が80℃以上あるので源泉そのものに入るのは無理な話。
癖がないので入りやすい。お湯に浸かっているだけで「なんかいい。」
番頭さんに聞いてお湯を少し分けてもらい飲泉してみると、海洋深層水深海の椿(伊豆大島の海洋深層水)と味がよく似ている。もっと分かりやすく言えばミネラルウォーターコントレックスに塩を足した感じの味でした。薄い塩味なんだけど+αなんの味?といったふうな表現かな。

泉  質:ナトリウム-塩化物泉 源泉温度:83.1℃ pH8.4
主要成分 少量の物はその他に含む 単位mg/kg
陽イオン 
リチウムイオン=0.74 ナトリウムイオン=383 マグネシウムイオン=3.70
カルシウムイオン=30.3 マンガンイオン・第一鉄イオン他=0.19

陰イオン 
水素イオン=0.04 フッ素イオン=0.51 塩素イオン=575
硫酸イオン=65.0 炭酸水素イオン=108 炭酸イオン=2.08
硝酸イオン=1.25 メタケイ酸イオン=8.15 メタホウ酸イオン=3.77

遊離成分
メタケイ酸=165 メタホウ酸=24.3 遊離二酸化炭素=0.71

微量成分
総ヒ素=0.776
成分総計 1409mg/kg
底倉温泉 温泉村第28、29号混合

場  所 神奈川県足柄下郡箱根町宮ノ下223(国道1号線沿い)
箱根登山鉄道宮ノ下駅より徒歩5分
電  話 0460-82-4756
営業時間 AM9:00~PM9:00毎週水曜定休
入 湯 料 ¥300

文・画像えんぴつ

86.大沢山温泉 「幽谷荘」

2007-03-04 22:43:52 | 新潟
越後魚沼地方、魚野川の西側を南北に走る山並みを魚沼丘陵という。ここは本邦屈指の豪雪地帯で、湯沢、石打、上越国際など、大規模なスキー場が数多くあるが、温泉にも恵まれていることは意外に知られていない。
栃窪、塩ノ又、二ツ屋など一軒宿の多いなかで、大沢山温泉は比較的規模の大きい温泉地だ。ここは「大沢館」、「高七城」など、個性的でマスコミ受けのいい有名旅館があるが、温泉好きの評価がことに高いのが最奥にある「幽谷荘」だ。

いったいにこのエリアのお湯は冷鉱泉や低温泉が多く、ここも泉温27.2℃の低温泉。贅沢にもこの源泉を加熱かけ流ししている。そんなこともあり、タイミングがあわないと日帰り入浴できないこともある様だが、私がいったときにはラッキーにも独占状態でお湯を堪能できた。

春浅い越後の3月。雪国らしい木造のがっしりとした建物はまだ豪雪に埋もれていた。声をかけると奥から飄々とした感じの女将?がでてきた。

浴室は男女別の変哲もないものだがお湯は逸品だ。
オイリーなツルすべが半端ではなく、泉質こそ含重曹食塩泉だが、お湯のイメージは重曹泉系だ。裏でしっかりと食塩が利き、しっかりと温まり感もある。
Na-HCO3の濃度があるとpHがさほど高くなくてもはっきりとしたツルすべがでてくる。
関東では、妙義長寿の湯や群馬新田が好例だが、新潟ではここが代表格だと思う。とくに魚沼周辺は単純温泉や硫黄泉が多いので、重曹がのびやかに存在を主張しているこのお湯は貴重だ。

明るく静かな浴室に鮮度の高いお湯がしずしずとかけ流されている。身を沈めるとザアザアとあふれ出るお湯が申し訳ないほどだ。湯中には細かな灰色の湯の花が舞い、ミシン油臭+αの特徴ある湯の香が妙に心地よい。
とにかく個性が際だっていて、入るほどにはまっていくようなお湯だ。やや過加温気味で浴室がこもっていたのが残念だが、夏場非加温で入ったら、それこそあまりの気持ちよさに出られなくなるのでは?
魚沼の山中にわざさわざ入りに行くだけの価値のある名湯だと思う。

Na-塩化物・炭酸水素塩泉 27.2℃、pH=8.46、成分総計=1.465g/kg、Na^+=458.7mg/kg (97.70mval%)、Cl^-=448.9 (61.63)、HCO_3^-=452.2 (36.08)、CO_3^2-=12.0、陽イオン計=472.9 (20.42mval)、陰イオン計=915.8 (20.54mval)、メタけい酸=63.2、メタほう酸=9.6 <H15.7.15分析>

文・画像 別働隊@うつぼ

08.伊豆山温泉(走り湯) 「偕楽園」

2007-03-04 14:44:16 | 静岡
伊豆山温泉は、湯河原と熱海のあいだにある地味な温泉地だが、源頼朝も入浴したという古い歴史をもち、実に106ケ所の温泉井(平成15年熱海温泉組合の調査)を擁する実力派だ。泉質はバラエティに富んでいるが、別格として扱われているのが日本三大古泉のひとつとされる”走り湯”だ。ここは全国でも珍しい横穴式源泉で、山腹から湧き出たお湯が海へと走るように流れ落ちるさまから名づけられたといわれ、昭和39年に枯渇したが、昭和45年の増掘により復活している。

その”走り湯”のすぐ上にあるのが「偕楽園」で、伊豆山1号泉(走り湯)、伊豆山78号泉(第2走り湯)の2本の走り湯系のお湯(たぶん混合使用と思われる)に加え、すぐれものの自家源泉「逢初の湯」をつかう贅沢な宿だ。海側からみるとかなり年季の入った建物だが、玄関や浴場まわりは手がいれられていて綺麗。スタッフの対応がとてもよくてきもちがいい。

相模湾を見渡す眺望絶佳の浴室に、扇形黒みかげ石枠伊豆石敷5.6人の浴槽がとなりあってふたつ。手前が「走り湯」(たぶん走り湯、第2走り湯の混合泉)、奥が自家源泉(伊豆山63号泉)使用の「逢初の湯」だ。
浴場奥から「走り湯」のお社が見下ろせる。この位置関係からすると、男湯はほとんど走り湯泉源の直上に当たるのでは?。

「走り湯」の浴槽は、緑茶色透明で白~うす茶の湯の花。走り湯特有の強苦味強鹹味とかすかな磯の香。掲示には”加水・循環”とあったが、味は非加水の共同浴場「浜浴場」の熱湯槽とさほど変わらなかったので、加水はごく少量だろうと思う。迫りくる濃度感と強烈なほてり、塩化土類系のキシキシペトペトととろみが走り湯ならではの個性。からだ中の水分が入れ替わってしまうようなサウナいらずの激しいお湯だ。
冬向きのお湯といえば、まずは”熱の湯”といわれる食塩泉だが、わけても土類食塩泉の温まり感はひとつ抜きんでたものがある。ややペトつきどちらかというと派手派手な浴感なので厭う人もいるが、”走り湯”のお湯は硫酸塩やメタけい酸が効いているためか、激しいながらもどことなく上品で奥行きがある。ちなみに走り湯は明治期には皇室の御料温泉になっていたというほどの由緒正しいお湯だ。

「逢初の湯」は、緑茶色透明(走り湯よりややうすい)で白~うす茶の湯の花。はっきりとした芒硝塩味と弱いながら独特な焦げ臭。はっきりとした硫酸塩泉系のキシキシととろみがある、なかなかにすぐれもののお湯だ。
調子に乗って2槽連チャンしてると、土類食塩&硫酸塩のホテホテ&冷めない攻撃に晒されてヘロヘロカラカラになるので要注意(^^;)

洞窟のなか、もうもうと湯気を上げ湧き出る”走り湯”を見物し、すぐ前にある「中田屋」(元100湯) で”走り湯”で茹でた温泉たまご、”走り湯御玉”を食べ、「偕楽園」でこの名湯に浸かる。入りたりなければ渋~い共同浴場「浜浴場」もある。しかも、入浴すると物事が成就するという”走り湯伝説”までついている。温泉ファンにはたまらない魅力をもった温泉場だと思う。

なお、山側にあって、特異な泉質で定評のあった共同浴場「般若院浴場」が、平成17年春に閉鎖となったのはかえすがえすも残念。

Ca・Na-塩化物温泉 68.8℃、pH=7.6、湧出量不明、総成分=12.31g/kg、Na^+=1389.0mg/kg 、Ca^2+=2946.0、Fe^2+=0.8、Cl^-=6869、SO_4^2-=865.4、メタけい酸=95.5、メタほう酸=11.3 <H16.2.27分析> (源泉名:伊豆山1号泉(走り湯))

Ca・Na-塩化物温泉 71.6℃、pH=7.8、湧出量不明、総成分=10.18g/kg、Na^+=1098mg/kg 、Ca^2+=2525.0、Fe^2+=1.1、Cl^-=5524、SO_4^2-=814.2、メタけい酸=96.6、メタほう酸=11.4 <H16.2.27分析> (源泉名:伊豆山78号泉(第2走り湯))

Na・Ca-硫酸塩・塩化物温泉 70.3℃、pH=8.3、湧出量不明、総成分=1.726g/kg、Na^+=237.5mg/kg 、Ca^2+=242.6、Fe^2+=0.1、Cl^-=238.5、SO_4^2-=820.2、メタけい酸=94.4、メタほう酸=10.8 <H16.2.27分析> (源泉名:伊豆山63号泉)

文・画像 別働隊@うつぼ