一郷一会・関東周辺100名湯プロジェクト

一郷一会が威信をかけて ^^: 選定。センター系、スパ銭・・・ お湯さえよければどこでもOK! 料金上限1,200円也。

□ 楽天地天然温泉 「法典の湯」 (元100湯)

2005-12-25 21:16:30 | 千葉
近年、関東平野部でつぎつぎと掘削されている温泉のなかで、とくに多い泉質が食塩泉だ。その多くは、地中に封じられた太古の海水を汲み上げる”化石海水型温泉”といわれるもの。海水の成分濃度は35g/kg以上あるから、それを起源とする化石海水型温泉もかなり濃厚な高張性強食塩泉となることが多い。
数万年から数百万年も地中に封じ込まれていたといわれる化石海水型温泉は、長い年月のあいだに成分が変化し、海水とは異なる性状をもつようになる。このあたりのハナシはやませみさんの「温泉の科学」に詳しい。

関東南部の地熱勾配からすると、掘削1,000mで25℃、1,500mで40℃の泉温になるという。このあたりでは1,200~1,500mくらい、泉温40℃弱で湧出するケースが多い。
わりに湯量も豊富なので、非加温ないしは微加温、非加水のかけ流し浴槽の設置はさほど困難ではない。実際、このあたりの温泉施設はたいてい源泉槽をもっていて、人気を集めている。
また、濃い食塩泉は濾過循環や希釈をかけても温泉らしさ(というか塩気)がわりあい良く残るので、人口密集エリアの大規模温泉施設向きの泉質だと思う。

よく、「地中でじっくりと熟成され、こんこんと自然湧出するお湯だけがホンモノの温泉、深層ボーリングと動力でむりやり引き揚げた化石海水など温泉ではない」というドラスティックな意見を耳にする。自然湧出泉のすばらしさはたしかに認めるが、化石海水型温泉も捨てたものではない。塩気が強くよく温まるので、万人にわかりやすい温泉といえる。
深層ボーリング技術のなかった時代には、化石海水型温泉にはまず入れなかったし、濃厚なものは深層地下水の補給も少ないので、賦存量(地中に貯えられている量)を汲み上げてしまえば枯渇する運命にある。その意味で、高濃度の化石海水型温泉はとても貴重なもので、現代人のみが享受できるたいへんな贅沢だと思っている。

市川市あたりから江戸川沿いに遡っていくと、大谷田、保木間、流山、吉川、柏(ゆの華、湯元)、野田、春日部など、強食塩泉が目白押しだ。総計20g/kgを越えてくるような濃厚な成分をもつこれらの温泉は、深層地下水の侵入の少ないピュアな化石海水型温泉とみることができる。
化石海水型というと塩気の強さだけがとりあげられることが多いが、良質なやつは、土類(Ca、Mg)、鉄分、アンモニア、ヨウ素(I)、臭素(Br)、重曹などを豊富に含んでいて、これらのブレンド具合を楽しむのが醍醐味だ。

そんな化石海水型温泉の集大成ともいえるような良泉が、ここ「法典の湯」。さして特徴のないつくりのスパ銭ながら、成分総計=32470mg/kgの化石海水型強食塩泉をかけ流す露天源泉槽が白眉だ。
黄茶色で透明度20cmのにごり湯は、金気臭と粘土系アブラ臭とアンモニア臭と臭素臭とヨウ素臭が渾然一体となって匂い立つ。圧倒的な強鹹味の裏に金気系だし味と重曹味と苦味が潜み、強食塩泉らしい重厚な浴感と温もり感に土類と鉄分によるキシキシと重曹系のツルすべが合わさる浴感は、化石海水型温泉の真骨頂かと思う。
鮮度感も十分で、しっかりとアワつきもある。

お客はこの源泉槽に集結するので、平日か休日の早い時間にじっくりと味わうのがベター。また、温泉ではないが、内湯ゾーンにある高濃度人工炭酸泉は、療養泉規定のCO2=1,000mg/kg以上の炭酸濃度を保ち、皮膚の収斂感と炭酸冷感がはっきりと感じられるスグレもので一浴の価値がある。
料金もリーズナブルだし、温泉好きにはなにかとお楽しみの多いおすすめ湯である。

「法典の湯」のレポはこちら。(関東周辺立ち寄り温泉みしゅらん「掲示板過去ログ」)

Na-塩化物強塩温泉 36.0℃、pH=7.5、208L/min(1,500m掘削揚湯)、成分総計=32470mg/kg、Na^+=11230mg/kg (89.29mval%)、K^+=433.0、NH4^+=9.7、Mg^2+=300.0、Ca^2+=432.6、Fe^2+=7.5、Cl^-=19210 (98.08)、Br^-=133.5、I^-=28.4、HCO_3^-=531.5、陽イオン計=12430 (547.1mval)、陰イオン計=19900 (552.4mval)、メタけい酸=84.7、メタほう酸=10.9 <H17.3.4分析>

文・画像 別働隊@うつぼ

10.伊東温泉 「共同浴場」

2005-12-20 23:05:18 | 静岡
伊東温泉は、東京駅を出発して、電車でがたごとと揺られて2時間弱で着いてしまうお手軽な温泉で、温泉というより海水浴などのマリンスポーツや登山といったものや海の幸などの天然資源が豊富な、温泉に興味のない人でも通ってしまうほどの魅力的な土地柄である。
 冬でも温暖な地域で、日本ならここで暮らしたいと思わせるが、ここ伊東は何度か足を運んで見て解ったが、漁業を生計とする方たちが多いのか、海の匂いを感じる街でありちょっと田舎臭いのも、ここ伊東という街の魅力なのかもしれない。

 伝統的な文化を楽しむのも私の湯巡りの楽しみの一つで、温泉のいきさつなどの歴史的文化を肌で感じるのも楽しみにしている。伊豆半島の入り口ではあるが急峻な岩場や断崖の多いこの地は、最近では交通の便もよくなっているが、本格的な観光の夜明けとなったのが昭和初期の、JR伊東線の開業からではなかったかとと思う。

 新しい温泉地というのは、伊豆全体にいえることではあるが新興温泉地では当然共同浴場といったものは少ないが古くからある温泉場では、共同浴場中心に温泉街が形成され温泉地独自の温泉文化が花開いたのが、私の温泉への回顧的なものである。
 伊東温泉は、関東の共同湯とは、異にしており温泉の配置からして関東の共同湯(銭湯)にみられるような湯船と洗い場が別といったものではなく、関西風な湯船の周りを取り囲むように洗い場があり、その形態が温泉文化の違いなのかもしれない。7つ(実は8つ)の観光客が入浴できる共同湯も、別府の共同湯などと同じく、アパートの1階や公民館に付帯するような場所が面白い、近くの関東圏の熱海や箱根の共同湯のような独立した建物でないのも関西風で楽しい。
 なにも飾らず気取らず、ありのままの温泉に入浴してくださいといった合理的な考え方に、大変感銘うける。

 私は伊東の共同浴場8箇所全て制覇したが今回は評判のよい、伊東温泉の代表的な歴史のある古湯である和田湯(寿老人の湯)と芝の湯(毘沙門天の湯)について紹介したい、ここは2つの共同浴場は、一番の特徴はいついっても混雑している点であろうか、確かに芝の湯は駐車場も完備しており建物も公共施設の併設されたもので新しいがそれだけでないようなきがする。なんと言ってもお湯の良さが人々に愛されている由縁なのである。 温泉は弱アルカリ性の単純泉であり温泉に詳しいひとはああパスかなと言ってしまうほどありきたりな温泉なのである。

 しかも伝統的な共同湯の微塵もなく共同湯というよりも小奇麗なセンター系で、温泉ファンには見向きもしない雰囲気で中途半端な感は否めない。だが、ここはお湯が良いのである。ひっきりなしの入浴客(地元の方だが)がそれを物語っている。お湯はなんといっても貴重な芒硝泉系のお湯、塩化物泉と比べて特徴はなんといってもる塩化物の匂いに近いのだが、音楽で言うと1オクターブ高いような軽さがのこり、ほのかな温泉臭というべき花の匂いなのかもしれないがともかくよい香りがして、温泉らしい匂いなのである。温まり感が心地よく、入浴中も入浴後もしっかりとした味わいのある温まり感が何時までも持続しており、この芒硝泉系のよさがわかる方が、少ないのが残念でならない。

 伊東温泉によさは文章に纏めるのは難しい、ある面日本全国の多くの温泉に入浴して見て、ああこの湯が一番良い湯だと感じる湯の代表的なものかもしれない。静の温泉である、昨今の温泉ブームの火付け役となったスーパー銭湯的な湯でもないし、その前の秘湯ブームにも取り残された感も否めない、しかし伊東温泉は本当の本物の温泉であることは断言出来る。釣りの用語にふなに始まりふなに終わるといった格言がある。これは、子供のころ近くの小川でふな釣りで釣りの楽しさを覚え、最後もへらぶな(?)釣りで終わる、釣りの楽しさを凝縮した名言である。
 海水浴でもよいし、味覚狩りでもよいが、是非とも帰りに伊東温泉に入浴してほしい。只の水を湧かしたのでなく、温泉なので実感してほしい。

 芝の湯(毘沙門天の湯)
源泉名 混合泉 泉質 単純温泉 泉温50.1℃ PH8.3 Na=154.2 K=3.7 Ca=71.7 Cl=78.4 SO4=368.8 HCO3=20.3 CO2=2.9 メタケイ=60.2 メタホウ=2.4

 和田湯は分析表の書き忘れ、芒硝はこちらのが強かった。
文/画像 ガメラちゃん@takayama

71.佐野川温泉

2005-12-10 22:57:29 | 山梨
日帰り温泉ブーム以前、広い露天風呂といえば温泉旅館の独壇場だった。
昭和63年、竹下内閣のもと”ふるさと創生資金”として全国の市町村に一律1億円が交付されたのを契機に日帰り温泉がブームが巻きおこった。(話は逸れるが、この”ふるさと創生資金”はバラマキと評され、ずいぶんと笑える使い方をされた例もあったが、地方ごとのものの考え方が出ていて個人的にはけっこう面白い政策だったと思っている。)

公的資金の入ったいわゆる”センター系施設”の目玉となったのが、広い露天風呂だ。
各地で雨後のタケノコのごとく増殖した温泉施設は、掘削して得た源泉の湯量も湯温も泉質もかえりみずに、ひたすら露天風呂を造りまくった。以来、露天と温泉の関係は切り離せないものとなり、非温泉のスパ銭施設でも露天風呂があれば温泉と思って入っている人は意外と多い。

山梨南部にある佐野川温泉は、日帰り温泉ブームのはるか前から、日帰りのできる広い露天風呂として知られていた。だが、山梨南部というと、さして有名な温泉もなく、32℃の広い露天といわれても、池のようなところに無理やり入る”キワもの的”なイメージしかなかった。当時は温泉といえども、40℃くらいはないとまともに入れないものと思いこんでいた。

各地のぬる湯を巡るにつれ、そのよさが次第にわかるようになり、なぜに佐野川が人気を集めているのか未湯ながらうすうす想像はついていた。ただ、山梨南部という行きにくい立地から、その入湯は遅れに遅れた。

平成15年の晩春、ついに入湯を果たした。
富士川支流佐野川沿いにあるここは、静岡との県境にほど近く、駐車場には静岡ナンバーが目立った。あたりはほとんど人家もなく、自然あふれるところだ。

内湯もあるが、なんといっても人気があるのが混浴の露天だ。ほとんどの女客は湯浴み着を着ていて、世間話をしながら悠々と長湯を楽しんでいる。多くの客が湯口のそばに集結しているのは、鮮度、湯温ともにここがいちばん高いからだ。

冷たいくらいのぬる湯は、甘いイオウ臭にアワつきと、人気温泉の二大要素を備えている。予想していたヌルすべはさほどでもなかったが、負担の少ない浴感なので、いくらでも長湯でき、そのうちにジワジワと内側からあたたまってくる。このへんの微妙な入浴感が根強いファンをつかんでいるのだと思う。

一般に、山梨には硫黄泉は少ないと思われている。たしかにしぶ焦げイオウ臭立ちのぼるこれみよがしの白濁硫化水素泉はないが、ほんのりと甘いイオウ臭香る良泉は各地に点在している。
塩沢温泉「信甲・館」、奈良田温泉「白根館」碇温泉、湯沢温泉「不二ホテル」はやぶさ温泉などが代表格だが、泉質名に”硫黄”が入ってくるものは少ない。
佐野川温泉は総硫黄7.6mg/kgを誇る本格的硫黄泉で、その意味でも山梨を代表する硫黄泉として、不動の地位を確保していると思う。

なお、平成17年春に大がかりな改装がなされ、名物の露天は男女別浴となっているが、改装後は入湯を果たしていない。

単純硫黄温泉(Na・Ca-Cl型)
31.5℃、pH=9.68、98.3L/min自噴、総成分=0.644g/kg、ラドン含有量=0.38×10^-10キューリー (0.10マッヘ/Kg)、Na^+=191.3mg/kg (77.32mval%)、Ca^2+=47.8 (22.21)、Cl^-=271.4 (81.58)、HS^-=7.6、HCO_3^-=54.8 (9.58)、硫化水素=---- <S61.2.5分析>

佐野川温泉(改装前)のレポはこちら。(関東周辺立ち寄り温泉みしゅらん「特集クチコミ情報」)


文・画像 別働隊@うつぼ

23.勝浦温泉

2005-12-05 22:34:44 | 千葉
 勝浦温泉は、外房の中心地、勝浦駅より北に、市川方面に進み更に細い道を谷沿い進む、どちらかというと歴史のある鉱泉宿の雰囲気で、鄙びた風情の宿である。しかし、その歴史は思ったより浅く、開湯は昭和44年で、思ったより新しくなくちょっとがっかりさせられるが、長年多くの方に利用されているのか、その重みのある温泉宿であるが、休憩所も広くどちらかというと、1日のんびりとした日帰り入浴施設主体の温泉なのかもしれない。

 千葉の温泉自体詳しくないが、海岸線に沿ったリゾート的雰囲気と温泉が結びついたものをイメージしているが、ここの温泉みたいに、付近にこれといった景観地があるわけでないので、この温泉千葉でも珍しい、温泉のよさをそのまま売りにしている正統派の温泉なのかもしれず、他の温泉とは異にしているようだ。
 現に管理人の方の話でも、千葉の温泉では相当なお湯であると強調していて、私もその意見に同調する。

 勝浦温泉の最大の特徴は私のイメージでは、良質なモール泉でカランのお湯も湯口から色付のモール系の黄金色したモール色で、湯船は完璧な紅茶より濃いコーヒー色したもので、東京の黒湯くらいの色付があり、色付なら黒湯の感触なのだが、温泉分析表でみるように黒湯よりはっきりとした重曹食塩泉系の濃いお湯となっており、更に強い入浴感が味わえる。
 東京の黒湯が好きで、更に濃い湯がほしければ、ここの湯は特にお勧めしたい。温泉本来持っている力強さなども兼ね備えているので、普通の温泉好きにもよいと思う。鮮度感の指標の泡付もあって、加熱湯ながら相当の実力である。

 味は、強い重曹味でヨード成分なのかかなり磯の香りのするもので、単純な重曹系とも違い、なかなか変わった味がして良いものです。ここのタイトルがそのものずばりつ「るんつるん温泉」とややB級な味わいはあるが、実際にその湯に浸かると泡の作用も手伝って、お題目通りつるすべ感が味わえてよい。
 加熱主体の鉱泉宿というのは、お湯使いコストの面では、大変難しくなかなか沢山の方に来ていただける施設となるとほんの一握りであるが、ここの勝浦温泉は1日ゆったりと過ごされる方も多い、旅館利用方法でもなく、リゾート的ホテルでもなく、お湯そのもので勝負できる温泉はやはり千葉の温泉では貴重なのかもしれない。千葉に温泉に行くといった感覚の無い山育ちの私ですが、今回いってみて、千葉のお湯侮りがたしといったものでした。ほとんどの方が私みたいに食わず嫌いでしょうがいってみて始めて良さがわかります。こんど周辺をじっくり攻めて見たい心境です。
 
源泉名 (有)勝浦温泉 泉質 ナトリウム 塩化物・炭酸水素塩泉(弱アルカリ性低張性冷鉱泉) 泉温19℃ 

Na=1426 K=32 NH4=10.9 Mg=6.0 Ca=7.7 Sr=0.2 F=0.7 Cl=1696 Br=6.5 I=2.5 HPO4=2.4 HCO3=1084 NO4=0.3 メタケイ=69.9 メタホウ=11.7 CO2=43.4 成分総量4.40g/kg(平成13年10月分析) 尚加温あり、循環なしの掲示あり

文/画像 ガメラちゃん@takayama

46.那須湯本温泉 「鹿の湯」

2005-12-03 13:49:38 | 栃木
那須湯本温泉 「鹿の湯」は、栃木の温泉の顔であり、今までに温泉ファンを魅了しており、現在も多くの湯浴み客が訪れている聖地ともいうべきものである。
 共同浴場である鹿の湯は、最大の特徴は那須湯本温泉の源泉にどの温浴施設よりも一番近く、引き湯距離も30mくらいである。ここ那須湯本の源泉は、鹿の湯を跨ぐように流れる湯川の西側に「行者の湯」源泉と東側の道路側に「鹿の湯」源泉の混合泉であります。湯守の方に聞きますと、両源泉とも湯口は無色透明であり酸化に伴って白濁度を増すという。但し、行者の湯のほうが湯ノ花が若干あり、鹿の湯のほうは、湯ノ花はほとんど無い透明な湯というのが興味深いものである。

 ここ那須湯本温泉は、多くの旅館やホテルに供給されているが、雨季(梅雨)のときには湯量が変わるようで、通常は毎分800L、雨季となると1200Lとなり、火山と地下水との関係が影響するものだと改めて考えさせられる。ここの熱源が、直ぐ近くの殺生石あたりで、那須連峰の麓に位置していたのが幸いだったのだろう、これが山の頂上だったら箱根などと同じく地下水の乏しい造成泉になっていたかもしれない。

 私は若いときから湯巡りが好きで、かれこれ20年以上にもなる、しかも無類の火山性の硫黄泉好きであり、北は東北から南は九州の温泉まで、かなりの硫黄泉に入浴してきた。当然ここ鹿の湯にも入浴したわけだが、当時はなんでこの湯で感動したかよく覚えていなかった。多分見てくれのよさだけで感動していたのかもしれなかったじゃなかったのかもしれない。他の有名な温泉も同様に、温泉に入浴した喜びよりも、当時温泉数をこなした喜びみたいな満足感が全てのような気がする。
 その後かなりの数の温泉と出会い、最近では白濁の温泉を入浴することが目的で無くなったようだ。しかし、火山性硫黄泉の麓に硫酸塩泉系や炭酸水素泉系や良質な塩化物泉などの良泉が存在しており、その温泉を探すためにその元になる硫黄泉を基準に考えることをよくしている。

 さて、かなりの前置きが長くなったが「鹿の湯」はというと、日本の全ての温泉でも稀なる湯使いをしている。基準はなにかというと、上に書いてある白濁湯にするといったものである。幾つかの温泉でも着たかもしれないが、このプログにテーマが良い湯であり、その1つの骨格が、鮮度の高い湯やじゃぶじゃぶかけ流しなどといった鮮度感のある温泉で、鮮度の低い湯とくらべ、匂いもクセがなく香りが上品であり、深さをもった浴感であることなどである。このような温泉が100プログで紹介された良い湯の基準となっているだろうが、寝かせた硫黄泉とはどんなものだろうか。

 鹿の湯は、湯船が6つあり、一番熱い湯が48度、その次から2度刻みくらに温度に差をつけており、熱い湯からやや温い湯までそれぞれにお湯の温度に差をつけて温度によって好みの湯を楽しましてくれる。当然ここの良いところは、加水などをしておらずしかも白濁湯にまでしており、ここの「湯元鹿の湯」の全てを語っているようでもある。一番最初に書いたが、ここの湯は、建物の切り目にあるように、非常に源泉に近く、そのままであれば、無色透明なお湯が掛け流されていて、ちょうどかぶり湯がそうであったように、透明なる熱い湯となっている。

 それじゃどうして、白濁湯になるかというと、入浴時間終了後、全ての浴槽をお湯を抜き、そして清掃してお湯を入れ始める。各湯よくよく観察してみると解るが、お湯の投入量が微妙に違うはずである。温い浴槽は相当な絞り込み量で、熱いほうが当然絞り込みは緩いく、営業時間になっても同じように絞りで調整しているのだ。一番温い浴槽は、営業時間前にようやく湯船にお湯が満たされるそうで、その寝かし度というものは、貴重なものである。
 特に湯守方の話では、温い湯のお湯の造りこみが一番大変んことで、湯を各浴槽から、相当入れ替えて調節するそうで、私は見ていないのであるが職人芸ともいえるのかと思う。

 お湯に入った印象であるが、ここはPHの低い酸性泉で、寝かした硫黄泉は、刺激が少ない。特にここの「鹿の湯」が一番よい所は、小さな湯船で、4人でいっぱいな湯船であろう。しかも深く硫黄の寝かしながら鮮度感も保っているのであろう。共同湯の最大の特徴の小さな湯船というものが、お湯のわかる人々によって継承されているのが嬉しい。今回私もこの鹿の湯みたいに肌に馴染みやすい湯をしみじみ堪能できた。1歩間違えると、とんでも悪い湯使いになってしまう恐れのあるのだが殺菌力のある力のある湯や、深く小さな湯船に助けられ、独自の進化がなされている鹿の湯に拍手したい。
 
 湯守さんと温泉のことをかなり話した、湯守のひとが温度管理が大変なので、熱交換したいという、私も熱交換に賛成したが、あまりにも源泉が近いので、熱交換する場所がないという。ここで熱交換したら、鹿の湯はお湯の鮮度感について更によくなるだろうが、独特の湯使いのお湯はどうなってしまうのであろうか。
 寝かした温泉は、硫黄泉ではときに爆発的に良い湯になることがある。最近では配管技術が発達しており昔ほど、鮮度差というものがなくなっている。温度的にも一番下の旅館まで1度くらいしか違わないともいう。
 ここ那須湯本温泉 「鹿の湯」は寝かした硫黄泉ではあるが、すこぶる柔らかく深いお湯である。

 那須湯本温泉「鹿の湯」 酸性 含硫黄-カルシウム-硫酸塩・塩化物泉(硫化水素型) 泉温68.4℃ PH2.5 (平成11年2月分析)
K=3.2 Na=39.2 K=10.6 C=70.1 Mg=16.6 Al=7.6 Mn=1.2 Fe1=1.4 F=0.8 Cl=79.9 HSO4=42.4 SO4=398.2 硫酸=0.3 メタアヒ=0.1 メタケイ=338.5 メタホウ=1 H2S=28.8 成分総量1.04g/kg

文/画像 ガメラちゃん@takayama
 

■ 芦之湯温泉 「松坂屋本店」 (殿堂 神奈川/箱根)

2005-12-01 23:12:25 | 名湯の殿堂
子供のころ、温泉好きの祖父につれられて、毎夏、箱根の旅館に泊まっていた。以降も箱根にはよく行っていたので、たぶんいちばん入湯数の多い温泉はいまだに箱根だと思う。だが、温泉に目覚めてからはとんと行かなくなった。
アル単や弱食塩泉、造成泉など、お湯的にあまり魅力を感じなかったし、”箱根価格”と揶揄される高額料金、そして微動だにしない大渋滞を思うとどうにも足が向かなかった。
だが、ここにきて箱根のお湯もボチボチ攻めるようになり、意外に面白いお湯や穴場の施設があることを再認識した。来年あたり腰を据えて探求してみたいと思っている。

箱根は古くからの湯場で、江戸期には箱根七湯(湯本、塔之沢、堂ヶ島、宮ノ下、底倉、木賀、芦之湯)と称され湯治客で賑わった。なかでも格別の人気を誇ったのが、硫黄泉の芦之湯で、温泉番付でもだいたい箱根筆頭の地位を確保していた。
江戸期には湯本に次ぐ規模があったそうだが、いまは「松坂屋本店」「きのくにや」「山形屋」の3軒の宿があるのみだ。駒ヶ岳の山腹にあるこの温泉場は、夏でも比較的涼しく、霧の多いしっとりと落ちついたところで、古くは名だたる文人たちがこの地に逗留している。

3軒の宿のなかでも温泉好きから高い評価を得ているのが「松坂屋本店」だ。造成ではない硫黄泉の白いにごり湯は箱根では貴重で、以前から人気が高かったが、昨今の温泉ブームで日帰り客が殺到し、最近では休日の日帰り入浴はほとんど絶望的らしい。(原則として宿泊客が到着、あるいは14時の日帰り受付開始時に人数が多いと、その時点で日帰り受付を終了するらしい。)

ここは子供のころ何度か泊まっていて大学時代にも泊まったことがあるが、お湯の記憶はきれいさっぱり消え去っていたので、ほとんど初入湯状態だった。

万全を期して攻めた。
平日、13:30まえには到着し、無理を承知で入浴を乞うと案の定14:00からだという。「東光庵」を散策し、玄関前のバス停のベンチに座り込んで待つ。14時ちょうど、玄関に灯りが点ると同時に一番乗りで受付。すぐうしろにはすでに3.4組の待ち客がいた。

中庭を廊下で渡った奥にある男女別の浴室。みかげ石縁石敷5.6人の高温槽と20人以上はいけそうな適温槽が並び、うすく緑白濁し白い湯の花の舞う鮮度の高そうなお湯が満々と湛えられている。浴槽に静かに注入し浴槽ふちから流し出す、正統派のかけ流しだ。

弱苦味たまご味に、かなり強いしぶ焦げイオウ臭とラムネ臭を配した山の硫黄泉らしい湯の香。メタけい酸系のヌルとろみと硫酸塩泉系の力強い温もり感があって長湯はきびしいが、異様にクセになるお湯で何度も入ってしまう。
浴後は爽快感が出てイオウ臭が肌に残る。イメージ的には日光湯元に近いものを感じたが、より硫酸塩泉の特徴がでているように思う。とても質感の高いお湯で、同じ硫黄泉系にごり湯の造成泉とは明らかに一線を画している。

しばらくすると、浴客が次々と入ってきて、10人近くなった。次第にお湯のにごりが強くなり、湯の花も少なくなってきたので、やはり一番湯が狙い目かと思う。
日帰り難易度は高いが、タイミングをはかりトライするだけの価値は十分にある名湯だと思う。

含硫黄-Ca・Na・Mg-硫酸塩温泉(硫化水素型) 62.5℃、pH=7.3、湧出量不明、成分総計=1182mg/kg、Na^+=89.0mg/kg、Mg^2+=43.8、Ca^2+=108、Cl^-=5.20、HS^-=5.85、SO_4^2-=514、HCO_3^-=157、陽イオン計=255、陰イオン計=683、メタけい酸=227、硫化水素=3.31 <H5.11.12分析> (芦之湯第9号泉(芦刈の湯))

文・画像 別働隊@うつぼ